過激さナシの、落ち着いたクルーザー。いかにもアメリカンなオーラが漂う|インディアン・Scout Rogue試乗記

アメリカンブランドのパイオニアとして古くからの歴史を誇るインディアン。現在5種のカテゴリーに分けられた23機種に加えてプレミアムな装備を施すEliteの2機種をラインアップ。同ブランドを象徴し、かつ比較的ポピュラーな存在と言えるのが今回試乗したScoutだ。その中で上級に位置する同Rogueにはクォーターフェアリングが標準装備されている。

REPORT●近田 茂(CHIKATA Shigeru)
PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)
取材協力●ポラリス ジャパン株式会社 / 日本自動車輸入組合(JAIA)

インディアン・Scout Rogue…….2,368,000円~

Black Metallic

Black Smoke Midnight
Sagebrush Smoke
Storm Blue
Stealth Gray
Black Azure Crystal
Copper Metallic

ハーレーダビッドソンと共にアメリカを代表するブランドとして知られているインディアンは、何度か復活の狼煙が上がっては消えるを繰り返したものの、2011年にポラリスインダストリーズが同ブランドを買収。現在は豊富なバリエーション展開を誇っている。
試乗車は、インディアンの中で最もポピュラーな存在と言えるスカウト。アメリカンバイクとして恐らくは誰もが頭の中にイメージするであろう堂々と落ち着きのある重量感たっぷりなフォルムがそこにある。
基本的に低く長く大きい。鉄馬としての貫祿は十分。横置きのVツインエンジンを搭載し、クラシカルなスタイリングにモダンなセンスを加味して投入された如何にもなアメリカンバイクである。スカウトには同じエンジンを搭載する4種のバリエーションが揃えられているが、同ローグは唯一フロントに19インチ(他の3種は16インチ)ホイールを採用。さらにコンパクトなクォーターフェアリングを標準装備し、個性的なデザインに仕上げられている。

ダイヤモンドフレームに搭載されたエンジンは、ボア・ストロークが99×73.6mmと言うショートストロークタイプ。60度の角度で構成される横置きVツインは水冷1133ccで、95psの最高出力と97Nmの最大トルクを発揮する。クランクケースからシリンダーまでブラックアウトされ、なによりも迫力のあるスタイリングに貢献すべく、エンジン本体の左右をフルに露出して目立たせたデザインワークも新鮮。
オーソドックスな丸形ヘッドランプや同じくシングルメーターの存在。前後に採用された極端に短いフェンダーを始め、ストレートの右出し2本マフラー等、どこかカスタムバイクを思わせる仕上がりを披露している。

ロー&ロングの落ち着いた乗り味

試乗車を目前にすると、ロー&ロングフォルムが印象的。エンジンから車体、そしてキャストホイールからマフラーまでブラックに統一されたカラーリングや極端なショートフェンダーの採用からは、カスタム車両を思わせる個性的雰囲気が漂っている。
ちなみにカラーリングはこのブラックを含めて7種ある。自分好みの色を選ぶ選択肢が豊富に揃えられていることは嬉しい。
それにしても車体の低さが際立っている。バーエンドミラーが下方に出されている点もそれが強調されている感じ。 中心となるパワーユニットは大きく立派。ガレージで愛でるにも際立つ存在として良く目立っている。
早速跨がるとシートは低く、明らかに地面が近い印象。足付き性チェックの写真からわかる通り、両足はべったりと地面をとらえることができ、250kgある重い車両を支えるのもまるで苦にならない。
シートには腰掛けるようにどっかりと全体重を預ける感じ。シングルシートは鞍型に近い形状と、しっかりとした張りを感じる良質な表皮とクションも腰のある適度な硬さで座り心地が良い。
ステップは前方にあり、アップハンドルも含めて両手足を前方に投げ出すようなライディングポジションになる。その瞬間からリラックスできるから不思議だ。寸法的には、筆者の体格でも大き過ぎることはなく、肘や膝にも適度なゆとりが感じら親しみやすいのも好印象である。

 
エンジンを始動しスタートすると、低速域から十分に太いトルクが発揮され、クラッチミートも難なく発進。特にワイルドな印象はなくエンジン回転の上昇も至ってスムーズ。
その瞬間から実に気持ちの良い時間が自分だけにプレゼントされる感じ。なんとも爽快な気分に包まれるのである。       
バイクの操縦に対して特段の気遣いを必要としない扱いやすさは、前方に広がるパノラマの様な景色を存分に楽しめる感覚になれる。
例えばシフトワークを不精してローから3速、5速へとアップしても、ワイドで柔軟な頼れる出力特性が、全てを寛容にカバーしてくれるのだ。
排気量の大きなVツインとショートストロークエンジンとのコンビネーションがそんな心地よい走りを巧みに実現してくれる感じである。
フロントの19インチホイールも、直進安定性に優れ、落ち着きのあるクルージング性能を発揮。素晴らしい景色を素直に堪能できる感覚は、自由気ままに散策する時間を楽しく感動的なものにかえてくれることだろう。
ミニカウルの装備は、高速クルージングでの快適性にも貢献。キャラクターとしてロングツアラーではないが、それを苦もなくこなせるポテンシャルは十分にある。
同じく峠道を攻めるスポーツバイクではないが、癖のない操縦性も親しみやすく、それなりのスピードで快走できる。バンク角も不足はなく、車体部分の接地を気にする必要は意外なほど少なかった。
前後フェンダーがあまりにも小さいので、雨中走行では、さぞかし泥はねが気になってしまうと思えたのも正直なところだが、晴れの日専用で、自分のスタイルを主張できる個性的アイテムとして、なかなか贅沢な選択のひとつになることは間違いないと思えた。

足つき性チェック(ライダー身長168cm / 体重52kg)

安心の足つき性。シート高は649mmしかない。ご覧の通り両足は地面にべったり。膝にもゆとりがある。装備重量250kgの車体を支える上でも不安は皆無だ。

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著者プロフィール

近田 茂 近影

近田 茂

1953年東京生まれ。1976年日本大学法学部卒業、株式会社三栄書房(現・三栄)に入社しモト・ライダー誌の…