スーパーモタードであり、ツアラーでもある。KTM890SMT 海外試乗記

人気のミドルアドベンチャーモデル、890アドベンチャーをベースとした兄弟モデルがKTMから登場。前後ホイールを17インチ化し、サスペンションもオンロード専用にセットアップを施されたSMTは、スーパーモタード的シチュエーションを選ばない自由度の高さと、アドベンチャー譲りのツーリング性能を合わせ持ったスーパーなツーリングマシンとなっていた。

REPORT●鈴木大五郎(SUZUKI Daigoro)

KTM 890 SMT……1,799,000円(消費税込み)

2023年8月発売予定

ここ最近ではオンロードレースの最高峰、MotoGPでの活躍が目覚ましいKTMであるが、そのバックボーンにあるのはオフロードシーンでの長年の活動である。
ダカールラリーやスーパークロスでの数多くの栄冠等、それはマシン開発においてのノウハウの蓄積となり、とくに自由度やコントロール性を高めることにフィードバックされているように感じられる。
イタリア・サルデニア島にて行われた890SMTの国際試乗会では、その真髄を確かめる事ができたのである。

890エンデューロをベースに前後ホイールを17インチに換装し、サスペンションも適正化。いわゆるモタード化するといった手法であるが、そこは過去にモタード界でも一世を風靡したKTMだけに、そのまとめ具合は流石と言えるものであった。
SMTとはスーパーモタードとツーリングを意味するというが、あらゆるシチュエーション。とくにツーリングシーンでのポテンシャルを追求したアドベンチャーマシンベースのモタードという意味では、これはある意味非常に理にかなっているといえる。
走り出したSMTは乗り心地の良さが印象的である。サスペンションはストローク感たっぷりでベースとなるアドベンチャーよりも乗り心地が良いのが意外でもある。グリップ力の高いソフト目の装着タイヤによるクッション性もそれを後押ししてくれている印象だ。
これが安心感の高いハンドリングに結びついており、こねくり回すようなちょっと強引な操作に対しても拒否反応を示すことがない。ちょっとオーバースピードかな?といった場面であってもパニックに陥ることなく、落ち着いて対処出来たのはこの「何でも出来てしまいそうだ!」と感じさせるパッケージに委ねられる安心感からであろう。
よく曲がるし、イージーにライン修正を行うことにも寛容。19インチや21インチという大経のフロントホイールのほうが穏やかで自由度も高いような印象であったが、やはりしっかりとセットアップされたマシンと17インチホイール。そしてグリップ力の高いタイヤというマッチングはオンロードで最強なのであろうと思い知らされるほど自由度と限界性能が高い。

パワフルなエンジンは極低回転域から・・・それこそ過去のKTMでは拒否されたような回転数であっても、嫌がることなくきれいに回っている。そこからのパワーデリバリーも非常にスムーズでどこからでも加速するほどのトルクフルさを持っている。
楽しくて夢中になってワインディングを水を得た魚の如く走り回る。やっぱりKTMのバイクは飛ばしてこそ本領を発揮するな〜 と気持ち良く走らせているのかで頭によぎったのが「T(ツーリング)は何処へいった?」であったが、心配は無用であった。
乗り心地の良い車体設定と同時に、フラットトルクの恩恵もあり、レディトゥレースではない走り方もしっかり許容しているのが素晴らしい。
ゆったりしたサスペンションのストローク具合も、ライダーの研ぎ澄まされた神経戦を求めてこないリズム感。高速道路ではクルーズコントロールを用いての快適な巡航も可能だ。
スクリーンが短く、ウィンドプロテクション効果といった意味ではTらしくないといえるが、そこは豊富なオプション(パワーパーツ)を用いてツーリング仕様のパーセンテージを高めることも可能である。

お手軽な890アドベンチャーの派生モデルとの第一印象であったが、走りのステージに合うように時間をかけてしっかりとセットアップしてきたのがわかる完成度。
過去の990SMTもそうであったし、現行の1290スーパーデュークGTも、ただのツアラーかと舐めてかかったら痛い目に合うポテンシャルを秘めていたのと同様、走りの本質を追求したKTMらしいマシンに仕上がっていた。

ディテール解説

890アドベンチャーをベースに前後ホイールを17インチ化。タンク位置など低重心化がはかられた設計とされる。エンジンはLC8cと呼ばれる75度位相クランクを持つ並列ツインエンジンが搭載され105馬力の出力を誇る。変速タイミングの適正化がはかられたクイックシフター+はオプションにて選択可能。
Wフェンダーが特徴的なフロント周り。新設計の17インチキャストホイールにミシュラン製パワーGPを装着。KTMのロゴが入るラジアルマウントキャリパーはJ.Juan製。コーナリングABSを装備するとともに、リアのみ解除となるスーパーモト設定も可能。
KTMと同じグループ企業に属するWP製サスペンションを採用するのはKTM全車共通。フロントには43mmAPEX倒立フォークを採用。圧側および伸び側の減衰力調整機構を備え、ストローク量は180mmに設定される。
クロモリ製トレリスフレームおよびシートレールは890アドベンチャーから譲り受ける。エンジンをストレスメンバーとすることで軽量化とともに剛性も確保。オフロード走行を睨んだ剛性バランスがオンロードでの自由度の高いハンドリングを生み出している。
 
5インチフルカラーTFT液晶モニターには様々な情報を表示すると同時に、左グリップ部のスイッチを併用して簡単にマシンのセットアップが変更可能。ライディングモードは3パターンおよびオプションのトラックモードを選択すれば、より細かいセットアップが可能。ハンドル位置は6ポジションに調整可能となる。
メーターサイドにはUSBポート。ヘッドライトステーサイドにはシガーソケットを装備。
 

主要諸元

エンジン型式 :水冷4ストロークDOHC 並列2気筒
総排気量   :889 CC
最高出力   :77 KW(105 PS)/ 8,000 RPM
最大トルク  :100 NM / 6,500 RPM
変速機    :6速
タイヤ(F/R) :120/70 ZR-17" / 180/55 ZR-17"
ホイールベース:1,502 MM ±15 MM
シート高   :860 MM
燃料タンク容量:約15.8 ℓ
車輌重量   :約194 KG(燃料除く)
カラー    :ブラック×ホワイト
保証期間   :2年間
生産国    :オーストリア

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