日本で大人気のバリオス!
日本が誇るマルチクォーターの筆頭、カワサキ・バリオス(BALIUS)。ゼファーと並び90年代のネイキッドブームを牽引した立役者だ。同年代のライバルはホンダ・ジェイドやホーネット、スズキ・バンディット250/VやGSX250Sカタナ、ヤマハ・ジールなどが該当する。これら4スト250㏄の4気筒モデルはレーサーレプリカのエンジンを転用しており、スポーティな走行性も自慢!

バリオスならZXR250用をリファインして搭載し、レッドゾーンは1万7000回転、初期型では1万9000回転に設定された超高回転型エンジンとなっている。中速域から高速域にかけての吹け上がりと官能的なエキゾーストノートはしばしば“F1サウンド”と称されて今なお高い人気を獲得している(写真は’97年式のバリオスⅡ)。
ここまで話しておきながらなんだけど、今回紹介するのはバリオスそっくりの「ER-5/ツイスター」という車両。バリオスの車体を使ったカスタム車などではなく、れっきとしたカワサキ謹製の市販モデルだ。
ER-5は90年代後半にデビュー!

ER-5の発売はバリオスの誕生から5年後の1997年。バリオスⅡにモデルチェンジされるのと同時期のタイミングだった。「当時、売られていたのを見たことないよ~」という声もあるだろう。それもそのはず、ER-5は日本国内製造の“輸出モデル”で国内での正規発売はされなかった。ヨーロッパを中心に販売され、一部アメリカなどでも流通していた『欧米向け』の車両なので日本では見る機会は中々に少ない。仮に見かけたとしても、よほどのマニアでもない限りバリオスとしてしか認識できないと思う。
それでは、バリオスとの違いも含めてER-5のディテールをチェックしていこう。
トルクフルで出足も良好!

ER-5のエンジンは水冷4ストDOHC4バルブ仕様で、排気量は車名が示す通り500cc(498cc)とバリオスの2倍だ。そして四気筒ではなく二気筒のパラツインなのが大きな違いだろう。日本と免許制度が異なる欧州では500ccや600ccあたりは手頃なミドルクラスに位置し、昔から積極的に採用されている。また、気筒数に関してもトルク豊かでコスパにも優れる二気筒エンジンが日本以上に人気・・・・・・というよりも身近な存在の様子。ER-5のほかにも欧州では90年代後半から2000年代にかけて、日本メーカーのCB500やGS500/Eなどがマーケットシェアを大きく占めていた。

実際に試乗してみると500㏄クラスの良さや選ばれる理由がよくわかる。ドルッ、ドルルルッと重厚な音を奏でながら地面をしっかりと蹴り出す感触。スロットルを大きく開いてクラッチワークを駆使する必要があるバリオスとは大きく違い、最初は戸惑ってしまった。
回せばしっかりと速度が乗って5000回転を超えたあたりからは500㏄ならではの加速感が味わえる。パワーというよりはトルクを重視しており、6速のミッションを万遍なく使って操るのが気持ちいい!
『ハーフニンジャ』の系譜!

ER-5のエンジンはGPZ500S、いわゆる“ハーフニンジャ”と同型をストリートユースにリファインして搭載している。日本なら排気量縮小版のGPZ400SやEX-4が当てはまる。GPZ400Sは規制前ということもあって最高出力が50PSあり、ER-5とほぼ同じだ。ただ100ccの排気量差と1 kgf・m高い(太い)トルクでもって車体を押し出す感覚は明朗なのだ。また、このエンジンは逆回転クランクなので過度なトルクリアクションを抑えたり、「ジャイロ効果」を薄くして軽快なハンドリングをもたらすなどの効果も!

撮影車はハリケーン製アップハンドルやシートのアンコ盛り&表皮張り替えでポジションが少し変わっていたけれど、ボディ自体はバリオスのそれ! ER-5の方が車重は約30kg重いので押し歩きなどはちょっと大変だけど、コンパクトな車体にトルクフルなエンジンの組み合わせはヒラヒラ走れて軽快。
足周りを中心にバリオスとの違いが!?

ER-5とバリオスの違いはエンジンだけかと思いきや、他部分も細々と異なる。まずは足周り。フロントフォークは同じ正立式だが、バリオスなインナー径がφ39mm、対してER-5はφ36mm(後期はφ37mm)と細くなっている。ホイールはENKEI製で形状は似ているものの、左右反転したフロントブレーキはER-5の方はディスク径が小さく(φ280㎜)、リヤブレーキにいたってはドラム式だ! 年代や排気量を鑑みればあまり例がなく、街乗り程度でも制動力は乏しくて引きずるようにして止まる。急ブレーキを強いられる場面ではヒヤリとすることも・・・・・・。

オーナーによると、バリオスとはシートやアンダーカウルの互換性がないことから骨格(フレーム)も若干異なる可能性も。少し速度を上げたり、車体を倒しこむとフロントフォークはフワフワとした感触がつきまといフレームも頼りない印象だ。速度レンジが高い峠やサーキットをビュンビュンに飛ばすのには向いていないのかもしれない。
コスパ良好!欧州ライダーの下駄代わり!

実際にスポーツ走行を楽しむなら上位モデルがいくらでも存在するわけで、コストを抑えながらビギナーにもとっつきやすく、日常の足としても人気を博したER-5はGPZ500Sよりも2割ほど安く販売されていたようだ。ちなみにメンテナンスでも役立つセンタースタンドを標準装備しているのは注目ポイント!

ER-5は2001年頃を境にビッグマイナーチェンジが施され、フロント足周りやブレーキキャリパーが強化された。少しずつ改良されながらトータルで10年ほど発売されたER-5の後継はER-6f/nが務め、そのポジションは現在のニンジャ650/Z650へと続いている。

もしER-5が日本で正規販売されても、大型二輪免許が必要になるため積極的に乗ろうとした人は少なかったはず。いくらバリオスの皮を被ってみても、四気筒至上主義が強かった時代ゆえ二気筒は見向きもされなかったかもしれない……。しかしグローバル化が進み、日本でも500クラスの認知度が高まってきて、体力が落ちてきた妙齢の今なら声を大にして言える。「500クラスってスゲーいいよ!」。
ディテール解説

撮影車はヘプコ&ベッカー製リヤキャリアに入れ替えられていたが、純正はグラブバーが備わる。その代わり、タンデムベルトは付属していない。

燃料タンク容量は海外のスペックでは約4~4.4ガロン表記(15.1~16.6ℓ)。前期型はエアプレーンではなく四角のフューエルリッドとなっている。

テールレンズはバリオス同様のオーバル型。ウインカーは本来スクエア形状だが、撮影車はゼファー用の砲弾タイプに変更されていた。
