

まるで、猫?
丸っこくて小さくて。犬のようであり、猫のようでもあり。そんなかわいいルックスの新しい乗りものが電動トライク(三輪車)の「ビベル」だ。そのほかの、似ている動物をいろいろ想像してみたけれど……やっぱりしっくりくるのは、猫。スーッっと忍び寄ってきて、気づいたらそこに静かに佇んでいる。俊敏で、賢くて、愛嬌がある。やっぱり猫だなーと思った次第。まあ、脚は3つだけどね。いや犬猫の話はどうでもいい。電動トライクって、どんなキャラなんだろう?
今回試乗するトライクは3車種あって、基本的なコンポーネンツは3つで共通している。つまり架装されている“上屋”が違うということだ。3車をざっくり分けると人を運ぶための2車(3人乗り)と、荷物を運ぶための1車(1人乗り)。見た目の印象もそれぞれかなり異なっている。「EV三輪モビリティ」としてメーカーが与えているコンセプトはこんな感じだ。
TRIKE(トライク)──街乗りに適した3人乗りモデル(69〜84万円)
COCO(ココ)──小回りの効くコンパクトEV(88万円)
TRUCK(トラック)──配送や業務利用にも対応するミニカー(88万円)

公道上ではどんな乗りものになるの?
それぞれ3台の紹介の前にまず知っておきたいのが、ビベルの電動トライクがここ日本においてどんな乗りものか? ということだろう。お勉強チックにはしたくないものの、その立ち位置だけは軽く予習しておこう!
★クルマの普通自動車免許(AT限定でもOK)で乗ることができる。あくまでバイクではな
く、道路交通法では普通自動車に区分される
★法律的にはヘルメット、シートベルトが不要(ビベルにシートベルトが装着済み)
★車検はなく、負担する税金は年間3600円の軽自動車税のみ。車庫証明も不要
★法令上は高速道路を走れる乗りものだけど、スピードが出せないので推奨されていない(高速道路では最高速度が80 km/h、最低速度は50 km/hに設定されている。ゆえにビベルは高速走行に適していない)

バイク以上、クルマ未満。だからこそ魅力的
乗りもの好きのアナタのために、さらにちょっとだけ知識を足すと、
★道路運送車両法では、TRIKEとCOCOは「側車付軽二輪」登録、TRUCKは「ミニカー」
登録という扱いになる
★側車付軽二輪と言っても本来的に三輪構造なので、道交法的には二輪にあらず原付でも
ない。クルマの免許でしか乗れないし、公道上ではあくまでクルマとして振る舞う必要ア
リ。法定速度もクルマといっしょ
★「電動トライク」や「電動トゥクトゥク」などと表現されるが、どちらも側車付軽二輪
の登録なので実質的に同じ乗りもの
……ということになる。
ちなみに駐車場所についてはそのスペースを管理する団体なり業者の判断が優先されるので、事前の確認がマストになるだろう。

TRIKEとCOCOのラインナップには
優しい「SMOOTH」と力強い「POWER」の2種を用意
2種のバッテリー、2種のモーター。たったそれだけの装備差異ながら、その味付け(パワーやトルクカーブのセッティング)によって走りに大幅な違いと個性を持たせることができる。それがEVの醍醐味だろう。そのメリットを最大活かし、TRIKEとCOCOの2車には仕様違いの2モデル4種がそれぞれラインナップされている。
特に「SMOOTHスムース」「POWERパワー」と呼称する2種の販売価格はまったく同じながら、走り味に分かりやすい“さじ加減”が加えられている。
SMOOTH/スムース
・穏やかで扱いやすい走り
・運転に不安がある方でも安心して扱える
・最大航続距離は約120km
POWER/パワー
・力強く余裕のある走り
・坂道や積載時でも余裕のある走行を実現する
・最大航続距離は約100km

実際に運転してみてもその違いはハッキリと感じ取ることができるので、ぜひ試乗してから“自分の一台”をチョイスしてほしい。
つまりどちらが偉い/偉くないということではなく、どちらがオーナーの使い方や好みに合っているか、という判断で選んでほしいというメッセージが「同一プライス」という設定にも込められている。とかくパワフルな方が偉くて高い、という一面的なヒエラルキーで構成されている大半のクルマのラインナップを見渡すと、こちらのEVトライクの方が「ちょっとだけオトナだな〜」と思ったのは筆者のひとり言。

スタンダードモデル「TRIKE」は
“ボクシー”スタイルでMENSもニッコリ
ビベルシリーズのこちらがスタンダードモデル、TRIKE。スクエアデザインのボディには甘すぎず辛すぎずの理知的なパーツが組み合わされており、3車の中ではひときわモダンな出立ちがいかにも令和のEVらしい雰囲気を醸している。
写真で見たときの印象よりも実車はずっとコンパクトだった。
片脚を持ち上げて車体をまたぐバイクとは比較にならないほど乗車はカンタンで、背もたれと両肘かけのあるシングルシートにスッと着座するのみ。ハンドルこそバイクと似たような造りだけれど、取り付け位置が低いので前方視界が広く、ドライバーのアップライトな姿勢と相まって見た目の印象がすこぶる良い。なんというか、“正しい乗りもの”に“正しい姿勢”で乗っている……そんな凛々しさにあふれている。

スイッチをONにすれば即座に発進できる。暖気運転は要らないし、そもそもエンジンの暖まり具合を気にする必要もない。のっけから滑らかなスタートで、サイレントなEV感はあふれんばかりだ。ハンドルは少しだけ重いが、筆者にとってはむしろこのくらいの重さの方が安心感あってシックリくる。この三輪ビークルのハンドリングがもし軽快でクイックだったら逆に怖いかも……と想像しつつ、さっそく公道に飛び出した。
「まるで瞬足のゴルフカート!」と、大きなひとり言を上げてしまった。これはめちゃ楽しいぞ〜。しかもゴルフカートの最高時速はその多くが20km/m未満だから、それらよりもはるかにスピードが出せるし俊敏さも優っている。車体もビベルの方がコンパクトなので、比べること自体がナンセンスなのかもしれない。でもオープンで爽快な乗車フィール、これだけは2車で思いっきり共通している。
スロットルの初期レスポンスは仕様にかかわらずちょいダルめで、こちらもあえてのセッティングと思われる。スポーツバイクの目線で考えると「もっとビビッドに反応を!」となってしまうだろうが、そうじゃない。ビベルはあくまで穏やかなシティコミューターなので、そこは言っても栓無きこと。むしろあらゆる年齢層の方が乗車することをかんがみると、このくらいのスピード感が程よいはずだ。エンジン音がない分、相対的にロードノイズが耳に入ってくるのはご愛嬌ということで。

運転のコツがあるとすれば、トレッド(車幅)が狭いことと、それに比して車高が高めなことを常に意識すること。つまり左右方向に不安定なことを自覚して、コーナーには手前できちんと減速して進入する。それが大切。タイヤサイズがタイト(4.00-10)なことも忘れてはいけないし、なによりもビベルは三輪ということアタマの片隅に留めておこう。そのことを念頭に置いてコーナーへ入ると、「あ、意外と踏ん張るじゃん」となってドライビングがきっと楽しくなる。
あとは、避けることができるのであれば、あまり大きな幹線道路は使わない方がいい。法定速度はさておき、実際のアベレージスピードが速い道だとどうしても後方に気を遣ってしまってビベルの楽しさを半減させてしまう。片側一車線以下の道路を使うことで路上のストレスからは解放されるだろうし、「50km/h出れば十分」とドライバーは満足できる。
Li MODELは動力源にリチウムイオンバッテリーを使用し、満充電(約4〜8時間でフルチャージ)での走行距離はなんと約100km以上。それでいて家庭用の100V電源でもチャージOKというのだから、実質的な航続距離不足を理由にEVを敬遠してきたユーザーたちにも「これならイケる!」という確信を持ってもらえるのがビベルだ。

豊富なカラーのNEWモデル「COCO」
ファニーで愛らしいルックスが注目度抜群!
左右で少し離れた楕円の“両目”。その両目が真正面をジーッと見つめている……そんなノンビリした表情が見るものを和ませるのが新型モデルの「COCO」だ。組み合わされるバックミラーやテールランプなどのパーツ類にも円形モチーフが反復されており、今回紹介する3車の中では“かわいいパート”を担っている。
ファニーなルックスだけに派生モデルなのかな? と思うかもしれないが、実際はTRIKEよりも上の位置付けのアッパーモデルとなる。種々の装備も充実しており、足元の右レバーで操作する後輪ブレーキに加えて右足で踏み込むフットブレーキが採用されているのはこのCOCOだけ。握力に不安のある女性や高齢者にはきっとありがたい装備になるだろう。


車体左右の側面開口部(ドアがない)が大きく広く取られているのもこのCOCOの特徴で、実走では後部座席のパッセンジャーがTRIKEに増してさらに爽快な開放感を感じることができる。「ということは、もしかして少し怖い?」といぶかる方もいるかもしれないが、丁寧なドライビングをしてさえいれば絶対的な走行スピードが低いので怖さを感じることはほとんどない。
ハンドルの付け根の左右には大きなポケットが備え付けられていて、とても便利だ。スマホでもペットボトルでも気軽に放り込めるし、ハンドルとポケットの間に距離があるのでアクセスも問題なし。カラーバリエーションが7種あるのもオーナーにとっては選びがいがあるだろう。

荷物運搬モデル「TRUCK」は
働くアナタを安価な維持費でフルサポート!
荷物を運ぶことに特化したのがこのTRUCKだ。よって乗員は一名のみ。そのことで割り切ることができたリアパートのスペースはなんと約234ℓも確保されており、20ℓのポリタンク6つをきれいに収めることができる。3サイズはたて64×よこ85×高さ43cm。バイク用トップケースの平均的な容量が大きめのもので35〜45ℓということをかんがみても、実にその5〜6倍以上のキャパシティを誇っている。積載重量も90kg(運転者含まず)と、見た目のかわいさ以上に頼もしいヤツなのである。

車体のハイトは1610mmあるものの、荷物の積載位置が低めに設定されているので運転していての不安感は予期するほどにはなかった。リアボックスのハッチがフタのように上方に設けられているのみなので、重いものを取り出すときは「ヨイショ」となるかもしれないが、そこまで重たいものを載せないユーザーはさして気にならないだろう。開閉そのもののアクションがシンプルでハッチ自体が軽量なのもいい。

トランスポーターとして忘れてはいけないのが、圧倒的に小さな車体サイズだ。全長2160×全幅1120×全高1610mmは、特に全長はバイクのそれとほとんど変わらず、全幅は20〜30cmほど幅広なだけ(ちなみにホンダGB350Cの寸法は全長2205×全幅790×全高1105mm)。このコンパクトさは配達時や駐車時に必ずや大きなメリットとなるに違いない。
ちなみにこのTRUCKのスタイルを見て「まるでダイハツのミゼットのよう」と懐かしむアナタはきっと50〜60代以上かも。かつての趣き深いミゼットのスタイリングに似ているというだけで、なんだか和んでしまうのもTRUCKの秀でた個性なのだ。

代表の鈴木俊介さんに聞いた
「三輪トライクの可能性について教えてください」
「もともと営んでいたバイクショップですが、その頃より『タイで走っているトゥクトゥクの電気版があればいまの時代にマッチしていて面白いのでは?』と思っていました。
開発はまったくのゼロスタート。ここ日本でナンバーを取得するために法規を一から調べて学んで、一方で手探りでメーカー探しを行いました。苦労はいまでも多いですが、お客さんが喜んでくれることを力にやりがいもすごく感じます。
自分に小さい子どもがいることもあって、当初はファミリー層からのニーズを中心に乗員のイメージをしていましたね。送迎や買い物などに使える、クルマと自転車の間を埋めてくれるような中間的な便利ビークルとして、です。でも実際にはそれ以上にシルバー層からの支持と引き合いが強いことに驚きました。
三輪EVトライクはバイクよりも積載力も高く、さらにヘルメットも要らないので気軽に乗ることができます。乗車定員も3人ですし、天候に左右されにくいのも大切なアピールポイント。そして維持費も安い。
もちろん独自のファンな運転感覚とともに、乗りものとして楽しいことが第一に魅力的です。移動をこんなにも楽しくしてくれることが、自分の中で三輪EVトライクに未来の可能性を感じる一番の理由になっています」
発売からはや3年。いくつもの開発の困難を乗り越えていままさに洗練されつつあるビベル。街中で見かけることはこれからますます増えそうだ。
ディテール解説
ディテール解説/TRIKE(トライク)
ディテール解説/COCO(ココ)
ディテール解説:TRUCK(トラック)
主要諸元
トライク
車名:TRIKE/トライク
全長×全幅×全高:2260mm×1070mm×1620mm
車体重量:240kg
モーター出力:ST MODEL/SMOOTH 1.5kW、ST MODEL/POWER 2.0kW、Li MODEL
SMOOTH 1.5kW、Li MODEL POWER 2.0kW
バッテリー:ST MODEL鉛バッテリー、Li MODELリチウムイオンバッテリー
最高速度:50km/h(ST MODEL/SMOOTHのみ45km/h)
航続距離:ST MODEL/SMOOTH 65km、ST MODEL/POWER 50km、Li MODEL
SMOOTH 120km、Li MODEL POWER 100km
乗車人数:3人
積載重量:250kg
バックモニター:標準
雨よけサイドカバー:標準
シートベルト:標準
リヤボックス容量:48ℓ
保証期間:1年または5000km
車両区分:側車付軽二輪(要普通自動車免許)
車両価格:69万円(ST MODEL)、84万円(Li MODEL)
coco(ココ)
車名:COCO/ココ
全長×全幅×全高:2360mm×1080mm×1680mm
車体重量:253kg
モーター出力:CLi SMOOTH 1.5kW、CLi POWER 2.0kW
バッテリー:リチウムイオンバッテリー
最高速度:50km/h
航続距離:CLi SMOOTH 120km、CLi POWER 100km
乗車人数:3人
積載重量:255kg
バックモニター:標準
雨よけサイドカバー:標準
シートベルト:標準
リヤボックス容量:48ℓ
保証期間:1年または5000km
車両区分:側車付軽二輪(要普通自動車免許)
車両価格:88万円
TRUCK(トラック)
車名:TRUCK/トラック
全長×全幅×全高:2160mm×1120mm×1610mm
車体重量:240kg
モーター出力:2.0kW
バッテリー:リチウムイオンバッテリー
最高速度:50km/h
航続距離:100km
乗車人数:1人
積載重量:90kg(乗員含めず)
バックモニター:標準
シートベルト:標準
リヤボックス容量:約234ℓ(たて64×よこ85×高さ43cm)
保証期間:1年または5000km
車両区分:ミニカー(要普通自動車免許)
車両価格:69万円(ST MODEL)、84万円(Li MODEL)























































