実用スクーター選びというと、燃費や収納力、価格に注目しがち。しかし日常の使い方を考えると、家族やパートナーを乗せる機会も少なくない。ところがタンデム性能はスペック表だけではなかなか見えてこない部分でもある。

例えばシートが長くても後席スペースが狭かったり、グラブバーの形状によって安心感が大きく変わったり、足を置くタンデムステップの位置次第で乗車姿勢も大きく変化する。今回は二輪ジャーナリストのケニー佐川が実際にタンデムして比較。後席から見た快適性や安心感、長時間乗った時の印象までチェックしてみた。

比較したのはホンダ・リード125(前列中央)、ディオ110(後列左)、ヤマハ・ジョグ125(前列右)、アクシスZ(前列左)、スズキ・バーグマンストリート125EX(後列右)の5台。いずれも通勤・通学の定番として人気を集める実用スクーターだが、タンデム性能には意外なほど個性の違いがあった。

■ホンダ・リード125 毎日使うならコレ! 万能選手は後席も優等生

リード125はタンデム性能でも高い完成度を見せた一台だ。後席へ座ると上半身はやや後傾姿勢になるものの、不自然な窮屈さは感じない。特に好印象だったのが足元まわりで、タンデムステップは踏み面が広く、足をしっかり預けられる安心感がある。さらに表面も滑りにくく、乗降時も不安が少ない。

また、左右に配置されたグラブバーは肉抜きされたデザインながら握りやすく、タンデマー(後ろのライダー)が身体を支えやすいのも魅力。派手な特徴こそないが、後ろに乗る人への配慮が行き届いており、通勤や送り迎え、買い物など日常の二人乗りでは頼もしい存在だ。実用スクーターとしての総合力の高さは、タンデムシーンでもしっかり感じ取ることができた。

リード125

水冷124cc単気筒「eSP+」エンジンを搭載するホンダの定番実用スクーター。37Lの大型トランクやHonda SMART Key、USB Type-Cソケットなど装備も充実する。価格は35万2000円。

■ヤマハ・ジョグ125 ソロライド重視! タンデムは必要十分

ジョグ125は今回比較した5台の中でもっとも一人乗りを重視したキャラクターが色濃い。タンデム時はステップ位置がやや前寄りで、後席スペースも決して広いとは言えないため、タンデマーの居住性は正直なところ一歩譲る印象だ。

ただし、すべてがネガティブというわけではない。樹脂製グリップは感触が柔らかく握りやすい上、夏場でも熱くなりにくいというメリットがある。日常的な使い勝手への配慮はヤマハらしいポイントだろう。ジョグ125はタンデム性能を追求するモデルではなく、軽快な走りと扱いやすさを優先したコミューター。その性格を理解して選ぶなら納得の仕上がりと言える。

ジョグ125

124cc空冷BLUE COREエンジンを搭載。95kgの軽量ボディと735mmの低シート高が魅力で、街中での取り回しは抜群。価格は27万600円。

■ヤマハ・アクシスZ 幅方向の余裕が生む安心感

アクシスZは見た目以上にタンデムしやすい一台だ。シート幅には十分な余裕があり、後席へ座った時の窮屈さは少ない。一方で前後方向はそれほど長くないため、タンデマーは少しだけ後傾姿勢になる傾向がある。

とはいえ、グラブバーは握りやすく、ステップ上の居住性もごく標準的。極端に優れている部分こそないものの、タンデム時に大きな不満も感じさせないバランス型だ。燃費性能や収納力の高さが注目されがちなモデルだが、二人乗りという観点でも十分実用的。毎日の足として使う中で、ときどきタンデムするような使い方にはぴったりのキャラクターだ。

アクシスZ

124cc空冷BLUE COREエンジンを搭載するヤマハの実用派モデル。ロングシートや37.5Lトランクを備え、燃費性能にも優れる。価格は29万2600円。

■スズキ・バーグマンストリート125EX 後席重視なら最有力候補!

今回の比較で最も高評価だったのがバーグマンストリート125EX。シートは前後左右とも十分なサイズが確保されており、タンデマーがゆったり座れるのが最大の魅力だ。ライダーとの距離にも余裕があり、身体同士の接触が少ないため長時間でも快適に過ごせる。

また、着座位置にも余裕があるため姿勢の自由度が高く、後席へ座った瞬間に他車との違いを実感できるレベル。リアキャリアは荷物を積みやすい形状を採用しているが、グラブバーとして使う場合は裏側の肉抜き形状がやや気になる程度。とはいえ総合的な快適性は非常に高く、タンデム性能を重視するなら有力候補になることは間違いない。

バーグマンストリート125EX

SEP-αエンジンとアイドリングストップ機構EASSを搭載。前後12インチホイールや大型シートも魅力で、価格は31万7900円。

■ホンダ・ディオ110 軽快さ優先! タンデムは近距離移動向き

軽量コンパクトな車体が魅力のディオ110だが、タンデム性能は必要十分といった印象。後席は決して使えないわけではないが、シートは比較的薄めで座面も硬く、長時間の二人乗りでは快適性より実用性を優先した設計であることが伝わってくる。

また前後方向のスペースにも大きな余裕はなく、タンデマーの居住性はややタイト。駅までの送迎や近所への買い物など、短距離移動で真価を発揮するタイプと言えるだろう。その一方で車体が軽く扱いやすいため、ライダー側の負担は少ない。日常の足としての軽快さを優先した結果が、タンデム性能にも表れている一台だ。

ディオ110

109cc空冷単気筒エンジンを搭載する軽量コミューター。アイドリングストップ機構も採用しながら価格は25万800円(ディオ110・ベーシック)。扱いやすさが魅力の一台だ。
※画像はディオ110

天国だったのはバーグマン、万能さならリード!

今回比較した5台は、同じ125cc実用スクーターでもタンデム性能に明確な個性があった。もっとも快適だったのはバーグマンストリート125EX。前後左右に余裕のあるシートによって後席の居住性は頭ひとつ抜けている。一方でリード125はステップやグラブバーを含めた総合力が高く、毎日の送り迎えや買い物まで幅広く対応できる万能選手だ。

アクシスZは標準以上の快適性を持つ優等生タイプ、ディオ110とジョグ125は軽快な一人乗り性能を重視した設計が色濃く表れていた。普段は燃費や収納力に目が行きがちだが、タンデムする機会があるなら後席の快適性も立派な選択基準。実用スクーター選びの新しい視点として、ぜひ参考にしてほしい。

※この記事は月刊モトチャンプ2024年9月号を基に加筆修正を行っています

【モトチャンプ編集部】