フロア形状にはメーカーの思想が隠されている!

実用スクーター選びというと、つい燃費や収納力、価格に注目しがち。しかし毎日乗ることを考えると、実はそれ以上に重要なのがライダーと車体をつなぐ「フロア形状」だ。
同じフラットフロア採用車でも、足元の広さやスロープ部分の角度、フロアの高さによって乗車姿勢は大きく変わる。足を自然に置けるか、長時間乗っても疲れないか──。そうした快適性の多くはフロア設計によって決まるのだ。
今回比較した5台を見ても性格の違いは明確だった。リード125はコンパクトな車体ながらホールド性を重視した設計。ディオ110は街乗り特化型らしくタイトで軽快。ジョグ125は低シート高を優先した結果、ややコンパクトな足元となる。一方のアクシスZは足元にゆとりがあり、体格を選ばない自然なライディングポジションが魅力。そしてバーグマンストリート125EXは長距離移動まで見据えた余裕ある設計が光る。
数字だけを見ると数センチの違いに思えるが、実際にまたがり走ってみると印象は驚くほど変わる。フロア形状には開発者がどんな使い方を想定したのか、そのモデルのキャラクターが色濃く表れているのである。
■ホンダ・リード125 コンパクトな車体に詰め込まれたホンダ流の合理性

フロアサイズ(編集部計測値)
- 前後長:500mm
- 左右幅:440mm
- スロープ部:-

前方に足を投げ出せるようなフロア形状ではないものの、リード125は数字以上に余裕を感じるライディングポジションが特徴だ。実測値では前後長500mm、左右幅440mmと今回比較車中でも最大級のフロアスペースを確保。特にフロア後半部分が前後方向に広く、足の置き場に自由度がある。
さらにセンター部分はヒールで車体をホールドしやすい形状となっており、信号待ちやストップ&ゴーが続く街中でも安心感が高い。派手さはないが、毎日の通勤や買い物で効いてくる細かな配慮はさすがリードといったところか。実用スクーターとしての完成度の高さがフロア形状からも伝わってくる。
MCシモ’S CHECK 「フロア後半が広いから窮屈さを感じない!」




「数字以上に快適なのがリード125。フロア後半に余裕があるので足の置き場に自由度があり、車体をホールドしやすいのも特徴。足つきもフロア両サイドがえぐられていて、全く問題なし。毎日乗る実用スクーターらしい工夫が詰まっている」。※広さの目安としてスニーカー(27cm)を使用
■ヤマハ・ジョグ125 低シート高と軽快さを両立したヤマハ流パッケージ

フロアサイズ(編集部計測値)
- 前後長:340mm
- 左右幅:380mm
- スロープ部:270mm

735mmという5台中もっとも低いシート高を誇るジョグ125。その安心感と引き換えに、フロアスペースは比較的コンパクトにまとめられている。実測値では前後長340mm、左右幅380mmと最小クラスだが、これは軽快な車体構成や足つき性を優先した結果とも言える。
またフロア自体が比較的高い位置にあるため膝の曲がりはやや大きめになるが、そのぶんコンパクトなライディングポジションが生まれる。市街地を軽快に走るジョグ125らしいキャラクターが足元にも表れており、街乗り中心なら不満を感じにくい仕上がりだ。
MCシモ’S CHECK 「コンパクトさと扱いやすさを優先した設計」




フロアサイズは控えめながら、ジョグらしい軽快な車体とのバランスは良好。シート形状が段付きのためオシリが安定する反面、前後移動の自由度は低め。実用スクーターらしいパッケージングだ。※広さの目安としてスニーカー(27cm)を使用
■ヤマハ・アクシスZ ゆとりと実用性を両立した万能レイアウト

フロアサイズ(編集部計測値)
前後長:430mm
左右幅:410mm
スロープ部:230mm

ジョグ125と同じヤマハ車ながら、ライディングポジションの印象は大きく異なる。フロアそのものに狭さは感じず、前後長430mm、左右幅410mmという数値以上に足元にはゆとりがある。ハンドルと身体のクリアランスも十分確保されているため、大柄なライダーでも窮屈さを感じにくいのが魅力だ。
また、前方のスロープ部分にはしっかりとスリットが刻まれており、足の置き場が分かりやすいのも好印象。フロア全体の形状も自然で、どこに足を置いても違和感が少ない。さらにヒールで車体をホールドしやすい形状や細かなエンボス加工など、毎日使うユーザー目線の配慮も充実している。
派手な装備ではないが、こうした細かな積み重ねが自然なライディングポジションにつながっている。実用スクーターとして求められる快適性と使いやすさを高いレベルで両立した一台と言えるだろう。
MCシモ’S CHECK 「サービス精神の高さを感じる足元まわり!」




足元の広さだけでなく、スリット加工やホールド性など細かな工夫も満載。派手さはないけれど、毎日使うユーザーが本当に欲しい部分を丁寧に作り込んでいる印象だ。※広さの目安としてスニーカー(27cm)を使用
■スズキ・バーグマンストリート25EX フロア形状が生む“ワンランク上”の快適ポジション

フロアサイズ(編集部計測値)
前後長:420mm
左右幅:360mm
スロープ部:350mm

実用スクーターの中でもっともツアラー的な発想で作られているのがバーグマンストリート125EXだ。数値だけを見ると左右幅360mmと今回比較車中ではもっともスリム。しかし実際にまたがると狭さはまったく感じない。
その理由は350mmにも達する長いスロープ部分にある。前方へ向かって緩やかに立ち上がるフロア形状によって足の置き場の自由度が高く、体格や好みに応じてポジションを変えやすいのだ。さらに大柄なシートとの組み合わせによって、長時間でもリラックスして乗れるライディングポジションを実現している。
実際に乗ると、まるでひとクラス上のスクーターに跨っているような余裕を感じる。実用スクーターとしての使いやすさはもちろん、通勤や買い物だけでなく少し距離を走るシーンまで見据えた設計思想が足元から伝わってくる一台だ。
MCシモ’S CHECK 「足元の自由度は5台の中でもトップクラス!」




スロープ部の長さを活かして足の置き位置を変えやすく、ライディングポジションの自由度は非常に高い。体格を選ばない懐の深さもバーグマンならではの魅力だ。※広さの目安としてスニーカー(27cm)を使用
■ホンダ・ディオ110 街乗り重視の思想が見えるコンパクト設計

フロアサイズ(編集部計測値)
前後長:370mm
左右幅:390mm
スロープ部:-

5台の中でもっともコンパクトなパッケージを感じさせるのがディオ110だ。着座位置が自然と前寄りになるためハンドルとの距離も近く、ライダーと車体の一体感が高いのが特徴。数値上も前後長370mm、左右幅390mmとコンパクトなフロアだが、それは街中での扱いやすさを優先した結果とも言える。
一見すると足元はタイトに感じるものの、シート上で前後移動しやすいため窮屈さは少ない。お尻を少し後ろへずらすだけでポジションの自由度も広がり、見た目以上に快適。短距離移動や市街地での使いやすさを重視したディオ110らしい設計思想がよく表れている。
MCシモ’S CHECK 「街乗りに特化した潔いパッケージ!」




自然と前寄りのポジションになるため車体との一体感は抜群。コンパクトな車体を活かした軽快な街乗り性能が、足元の設計にも色濃く反映されている。※広さの目安としてスニーカー(27cm)を使用
※この記事は月刊モトチャンプ2024年9月号を基に加筆修正を行っています
【モトチャンプ編集部】