スクーターにもレーサーレプリカの波が来た!
1987年頃は、スクーターレースも活況の時代だった。スポーツモデルのスクーターに、各メーカーがレーシーなグラフィックや限定カラーを次々に投入。レース人気の影響で、スクーター界にもレーサーレプリカの波が押し寄せていたのだ。
その空気を分かりやすくまとっていた1台が、ヤマハ・チャンプRS。普通のスクーターとはまったく違う外観に、当時のレーシングスピリットがギュッと詰まっていた。
なかでも印象的なのが、TECH21カラーを思わせる爽やかなブルー系のグラフィックだ。ヤマハのレーシングイメージと重なるカラーリングは、ただの色違いではなく“走りのスクーター”であることを視覚的に伝えるものだった。50ccスクーターなのに、気分だけはレーサー。これがチャンプRSのたまらないところだ。

チャンプRSといえば、このレーシーなカラーリング。そしてスクーターでありながら、WGPマシンYZR500のようなエアダクトがいくつもあった。アンダーカウルがあるのもスクーターとしては異例のこと。
TECH21カラーだけじゃない、走りも本気の6.3ps
チャンプRSは、見た目だけの“なんちゃってレーサー”ではない。ヤマハ公式資料でも、6.3ps/7000rpmの空冷2スト単気筒エンジンを搭載し、膨張室を持つチャンバータイプマフラー、油圧式フロントディスクブレーキ、セリアーニタイプ・フロントフォークなどを採用していたことが確認できる。つまり、カラーだけでなく中身もかなり本気だったのだ。
なかでも注目なのが、兄弟車のジョグと一線を画すチャンバータイプのマフラー。ジョグに流用するチューンも流行ったというから、当時のスクーター好きにとってチャンプRSのパーツはかなり魅力的だったはずだ。見た目がレーシーで、走りも良くて、しかもパーツまで使える。そりゃ人気が出ないわけがない。
さらに、スクーターとしては珍しいバーエンドの採用もポイント。こういう細かな部分にまで、レーシングマインドをくすぐる仕上げがされていた。速さだけではなく、乗る前から気分を上げてくれる。チャンプRSは、そんな“雰囲気作り”までうまいスクーターだった。

膨張室を持つチャンバータイプのマフラーは、チャンプRSらしい装備のひとつ。兄弟車ジョグへの流用チューンも流行した。

スクーターとしては珍しいバーエンドも採用。細かな部分までレーシーに仕立てているあたりが、チャンプRSのニクいところ。

足周りはフロントにディスクブレーキを採用。ブレーキキャリパーをゴールドにするあたりが当時のGPマシンを思わせる。
1987年式と1988年式、カラーの違いまで楽しみたい
チャンプRSといえばTECH21カラーのイメージが強いが、1987年式と1988年式でグラフィックの入り方やカラーの見え方が微妙に違うのもおもしろいところ。ひと目で同じ系統と分かるレーシーな雰囲気をまといながら、年式ごとに少しずつ表情が違う。
こういう細かな変化を見比べると、当時のスクーターが単なる移動手段ではなく、“レーサーレプリカ気分を楽しむマシン”でもあったことが伝わってくる。レーシングカラーをまとったスクーターを選ぶ。それだけで、ちょっと特別な気分になれたのだ。




1987年式は4色をラインナップ。ゴロワーズカラー、テック21カラー、マールボロカラー、ヤマハワークスカラー。


1988年式は2カラーで勝負。1987年式と1988年式でグラフィックの入り方やカラーの見え方が微妙に違うのもおもしろい。
カーナF3、ハイR……みんなレーシーになりたかった
もちろん、レーシーなスクーターはチャンプRSだけではなかった。同時期にはスズキ・カーナ50もバリエーションが豊富で、ロシニョールモデルやヨシムラカラー系のカーナF3も存在。カウルの形状が三角定規のように尖っていて、こちらもなかなか強烈だった。
ハイRも人気があり、通常のハイとは違ってバンク角を稼ぐために車高が上げられ、リンク式サスも備えるなど、走りのイメージがしっかり作られていた。さらにウォルターウルフカラーもラインナップされ、辻本聡選手をモデルにしたF3クラス参戦カラーも登場。まさに、スクーターにもレースシーンの熱が流れ込んでいた。

アグレッシブな走りと甘いマスクで人気の辻本聡選手をモデルに、F3クラス参戦カラーがカーナに登場!
YAMAHA CHAMP RS(1987)はどんなマシンだったのか
あらためてチャンプRSをマシンとして見ると、かなり走りに振った50ccスクーターだったことが分かる。全長1590mm、乾燥重量59kgというコンパクトな車体に、空冷2スト単気筒49ccエンジンを搭載。最高出力は6.3ps/7000rpm、最大トルクは0.65kgm/6500rpm。数値だけ見ても、当時のスポーツスクーターらしい元気の良さがある。
ブレーキはフロントにディスク、リヤにドラム。タイヤは前後とも3.00-10で、燃料タンク容量は3.5L。価格は14万4000円。通勤・通学の足としてだけでなく、走りも見た目も楽しみたい若者に向けた1台だった。
当時のスクーターレース人気、レーサーレプリカブーム、ヤマハのワークスイメージを背負ったその姿は、かなり本気だった。TECH21カラーをまとって街へ出るだけで、気分はGPレーサー。そんな時代の熱を、チャンプRSは確かに宿していたのだ。
SPEC|YAMAHA CHAMP RS(1987)
全長×全幅×全高:1590×660×1015mm
ホイールベース:1125mm
シート高:750mm
車両重量:59kg(乾燥)
エンジン種類:空冷2スト単気筒
総排気量:49cc
最高出力:6.3ps/7000rpm
最大トルク:0.65kgm/6500rpm
燃料タンク容量:3.5L
燃費:80km/L(30km/h定地走行)
ブレーキ(前・後):ディスク・ドラム
タイヤ(前・後):3.00-10・3.00-10
価格:14万4000円
※スペックは1987年モデル
※この記事は月刊モトチャンプ2025年3月号を基に加筆修正を行っています
【モトチャンプ編集部】