1044馬力&119.6キロをワイドに使い切る!
エンドレス流VR38ターボチューン
R35GT-Rのデビュー直後から積極的なチューニングを展開してきたエンドレス。発売から20年近くが経過した現在も、メニューやパーツを進化させ続け、ブーストアップから1000psオーバーまで、幅広い仕様を手掛けている。

そんなエンドレス代表の杉野さんに、これまで構築してきたタービン交換メニューの中でオススメを聞くと、真っ先に挙がったのがGReddy TD06SH-20RXのツイン仕様だった。
「いろいろありますけど、コスパやフィーリング、出力のバランスまで考えると、TD06SH-20RXツインはすごくいい。街乗りから乗りやすいワイドレンジな特性です」。
VR38チューンにおいて、ひとつの到達点となる1000psの大台を狙えることも、その理由だ。エンジン内部の強化は必要になるものの、3.8Lのままでも相性は良好。4.0Lや4.3Lへ排気量を拡大すれば、さらに特性をワイドにすることができる。
TD06SH-20RXは、従来の20Gに対して低回転域の特性を保ちながら、高回転側の伸びを高めた新世代モデル。TD06シリーズらしく、回転上昇とブーストの立ち上がりに合わせてパワーが伸びていくフィーリングも杉野さん好みで、VR38とのマッチングは良好だという。

ただし、ハイフロー設計ゆえに、エキゾースト側とコンプレッサー側の圧力差による負担は大きめ。バックタービンの負担まで加わればタービンのライフを縮めるため、ブローオフバルブやリリーフバルブによる過給圧の管理も重要になる。
燃料系もブーストアップ領域を超えると容量が不足するため、タービン交換では燃料ポンプやインジェクターなどの大型化が前提。吸気温度の上昇もエンジンダメージにつながることから、インタークーラーも早い段階で大型化しておきたい。

一方、1000psまでは必要ないというユーザーには、HKS GTIII 800フルタービンキットも有力だ。GTIII-RSをシンメトリーツインで組み合わせ、エンジン仕様にもよるが900ps近くまで狙える。
エンドレスでは、ブーストアップに慣れて「もうワンランク上が欲しい」というユーザーに対して、ハイフロー系よりもGTIII 800を勧めるケースが多い。タービン自体に容量の余裕があるため、中高回転域でも飽和感が少なく、その先のステップアップにも対応しやすいからだ。
さらに上を目指せば、TD06SH-25GツインやHKS GT5565BBシンメトリーツインという選択肢もある。どちらも1200psオーバーを狙えるキャパシティを持つが、25Gは排気量アップが前提となり、トルクバンドも比較的高回転寄り。GT5565BBも4.3L化などが推奨され、キット自体も高額になる。
コストまで考えれば、GTIII 800は100万円弱、TD06系は130万円前後、GT5565BBは約230万円というのがおおよその目安。狙う出力と予算、求めるフィーリングによって多彩な選択肢を持てること自体が、VR38チューンの大きな魅力と言える。

そして、その中間で1000ps級をワイドレンジに楽しむというTD06SH-20RXの魅力を体現しているのが、西川さんのR35だ。
以前はRB25を搭載したステージアでストリートとサーキットを楽しんでいた西川さん。セントラルサーキットで1分31秒台までタイムを詰めたものの、そこで頭打ちとなった。家族用のミニバンを手に入れたこともあり、次期マシンとして考えたのはER33。同じRB25搭載車ならステージアから流用できる部品もあり、車体別300万円+αで、まずは1分30秒切りを狙うというプランだった。
ところが、その構想をエンドレスで話したところ、杉野さんから思わぬ提案を受ける。
「予算はもう少し必要になるけど、キッチリチューンしたR35の下取りがあるよ。素性や履歴も確かで、内容もすごくいい」。
それが現在の愛車との出会いだった。

購入した約10年前の時点で、エンジン内部を強化した3.8LにTD06SH-20Gツインを組み合わせ、約850psを発揮。足まわりや駆動系までひと通り手が入り、ナラシが終わった程度という好条件の車両だった。
そして購入翌日、早速セントラルサーキットへ持ち込んだところ、それまでのベストタイムをいきなり約5秒短縮する1分26秒台を記録。R35が持つ速さと扱いやすさに驚かされたという。
その後も走り込みながら各部のメンテナンスとリフレッシュを重ね、タービンをTD06SH-20RXへ変更。3.8L強化エンジンとの組み合わせで、タイムはあっさり1分22秒台まで縮まった。さらに現在は、エンジンを4.0Lへ排気量アップしている。

VR38では長らく、アルミブロックへスリーブを打ち込んだボアアップは、トラブルのリスクから避けられる傾向にあった。しかしエンドレスでは、内燃機加工を手掛けるARMの協力によって、純正同等のシリンダー金属溶射を用いたボア拡大を確立。長期テストを経て実戦投入している。
西川さんのエンジンもノーマルクランクを使い、ボアを98φまで拡大して4.0L化。ストロークを伸ばしていないため高回転まで使いやすく、エンジンのバランス取りやラインボーリングまで施すことで、8500rpm程度まで許容できるという。この車両ではマージンを確保し、上限を8000rpmとしている。

TD06SH-20RXツインとの組み合わせで、最高出力は1044.1ps、最大トルクは119.6kgmを記録。パワーカーブはピーク付近まで右肩上がりで伸び、1000psを超えてなおタービンに余裕を感じさせる特性だ。

最大ブースト圧は2.0キロだが、サーキットでは常にフルブーストを使うわけではない。HKS EVC6 iR2.4を使い、セントラルサーキットのインフィールドなど低速区間では1.4キロ程度まで落とすマッピングを行うことで、強大なトルクを路面状況に合わせて使い分けている。
実際、4.0L化によってさらに太くなったトルクは、オーナー自身が「持て余している」というほど。3.8L時代の1分22秒台から本人はまだタイムアップできていないものの、プロドライバーがステアリングを握れば1分19秒台を記録している。現在の目標は、自らのドライブで1分20秒を切ることだ。
1000psを超える出力をサーキットで使うには、エンジンだけでなく、駆動系やシャシーも相応の作り込みが必要になる。

R35では800~900ps付近からミッションまわりの強化も視野に入る。ストリート主体ならクラッチの枚数アップでも対応できるが、サーキットで高負荷を掛け続けるならギヤまで強化したい。この車両ではクラッチを9枚仕様とし、ミッションもHKS製へ変更している。

サスペンションには、エンドレスの別タンク式オリジナル車高調を採用。ストリート推奨値のフロント14kg/mm、リヤ8kg/mmに対し、この車両は前後30kg/mmというサーキット重視のセットアップ。リンクやアーム類もピロ化および調整式への変更を進めている。

タイヤはプロクセスR888Rの315/30R20を前後に装着し、12JのエンケイWPS NVR5をセット。前後フェンダーを片側約10mmワイド化して収める。ブレーキもニスモ用キャリパーを使い、フロント410φ、リヤ390φローターへ容量アップした。


一方で、インテリアはレカロRMSとSR-7を装着する程度で、快適性を犠牲にするような軽量化は行っていない。


エクステリアもエンドレス、カンサイサービス、バリス、トップシークレットなど複数ブランドのパーツを組み合わせながら、ひとつのスタイルとしてまとめ上げている。

3.8Lのままでも1000psを狙え、4.0L化すればその出力をさらにワイドレンジで引き出せるTD06SH-20RX。さらに上を目指すタービンも存在するが、街乗りからサーキットまでを考えれば、絶対的なピークパワーだけが正解ではない。
1044psという数字以上に重要なのは、下からトルクが立ち上がり、高回転まで素直に伸びていく扱いやすさ。R35という高いシャシー性能と組み合わせることで、1000psをただ発揮するだけでなく、「使って速く走る」。それこそが、エンドレスの考えるTD06SH-20RX仕様の魅力なのだ。
●取材協力:エンドレス 兵庫県神戸市西区岩岡町古郷字南場960-8 TEL:078-969-2555
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