ヤマハ・ファツィオ:36万8500円

空冷エンジン+充実装備
若者が主なターゲットのレトロ&ポップな125ccファッションスクーターとして、近年のヤマハはアセアン市場でFシリーズを展開している。
2026年4月から国内販売が始まったファツィオは、そんなFシリーズの一員で、日本では2025年に生産が終了した原付一種スクーター、ビーノの後継的な使命も課せられているようだ。

ちなみに、現在のヤマハが日本で販売中の125ccスクーターには、空冷2バルブ単気筒のジョグ125とアクシスZ、水冷4バルブ単気筒のNMAXとシグナス Xが存在し、エンジンで分類するならファツィオは前者である。
とはいえ、36万8500円という価格は後者寄りで、その事実に疑問を持つ人がいるかもしれないが…。

ファツィオのパワーユニットはマイルドハイブリッドシステム、SMG:スマートモータージェネレーターが生み出す電力を加速に転用する、パワーアシスト機能を採用しているのだ。
しかもこのモデルは、イグニッションがスマート式で、液晶メーターはスマホと連携するY-Connectを装備し、専用設計のアルミキャストホイールは前後12インチなのだから、シンプル・イズ・ベスト路線のジョグ125やアクシスZ(いずれもホイールは前後10インチ)より価格が高いのは当然のことだろう。

もっとも、多少なりともライバル的な資質を備えるスズキ・アドレス125と比較するなら、ファツィオの価格は高いのだけれど、ラインアップの全車がレトロ&ポップテイストを取り入れているベスパの125ccモデルよりは格段に安い。
だから価格については何とも言い難いのだが、今回の試乗でファツィオをじっくり堪能した僕の頭に、高いという言葉はまったく浮かばなかった。
ヤマハならではの愛嬌と独創性

この愛嬌と独創性は、やっぱりヤマハならではだなあ……。試乗現場で対面したファツィオに対して、僕はそんな印象を抱いた。実は僕は以前から同社のレトロ&ポップなスクーター、ビーノやボックスなどに好感を抱いていて、このモデルにも同じ匂いを感じたのである。

と言ってもファツィオのデザインには、ビーノやボックスとは異なる資質が備わっていて、車体を左真横から見た際に漢字の“しんにょう”を思わせるラインを描く外装部品は、このモデルを含めたFシリーズならでは。
また、ヘッドライトやテールランプ、前後ウインカー、液晶メーターなど、至るところにオーバル形状を取り入れたことも、ファツィオの個性を際立たせる要素だろう。

そしてエンジンをかけて走り始めても、僕の好印象は継続。その理由は、乗り手の経験や体格を問わないライディングポジションである。
具体的な話をするなら、ハンドルグリップ位置が高くてフロアがフラットなので、エントリーユーザーでも気軽に接することができそうだし、着座位置が自由自在でフットスペースが広々しているので(最も狭いセンター部でも前後長は235mm)、僕のような大柄なライダーでも窮屈さを感じない。

逆にファッツィオを体験すると、近年のスクーターは許容範囲が狭いのかも?……という気がしてくるのだ。
ビックリするほどよく走る‼

そんなわけで、かなりの好感触から始まった今回の試乗だが、最近の僕はモトチャンプの仕事を通して、新型シグナスXやNMAX、アエロックスなど、ファツィオよりパワフルでスポーティなモデルを体験している。だから正直言って、乗り味には特に期待していなかった。

ところが実際のファツィオは、ちょっとビックリするほどよく走るのだ。僕が最初に感心したのは、ゼロ発進からの加速時に最大3秒間の補助を行うパワーアシスト。
もっともこの機能は、過去にホンダが販売したPCXハイブリッドほど強力なアシストをするわけではないし、バッテリー電圧が低いときは作動しないのだが、アリとナシの違いの差は歴然としていた。最高出力はジョグ125やアクシスZと同じ8.3psなのに、ファツィオはそれらとは次元が異なる加速が堪能できるのである。

加速に続いて感心したのは、車体の軽さと小ささ。
誠に恥ずかしながら、試乗するまでの僕はすっかり忘れていたものの、前述したパワフルでスポーティな3車と比較するなら、ファツィオは車重が29~35kgも軽く、軸間距離が60~70mmも短い。だから単純にとっつきがいいだけではなく、キビキビした走りが楽しめるのだ。

と言っても軽さと小ささなら、ジョグ125とアクシスZも侮りがたい資質を備えている。ただしその2台と比較するなら、前後タイヤが12インチで軸間距離がちょっと長いファツィオは、コーナリングの安定感が1クラス上。
もちろん、前後10インチタイヤと短い軸間距離ならではのメリットも存在するのだが、エントリーユーザーの心情やツーリングへの適応力という視点で見るなら、多くの人がファツィオに軍配を上げるだろう。
あえて言うなら……

さて、褒めてばかりではチョーチン記事と思われそうなので、少しくらいは異論を述べたいところだけれど、今回の試乗で僕が気になったのは、シート下のトランクスペース容量の小ささ、端子がTYPE-A(昨今では少数派)のUSB電源、水冷エンジン勢よりやや大きいメカノイズくらいで、それだってあえて言えばの話である。

いずれにしても今現在の僕は、既存のヤマハ製125ccスクーターとは異なる魅力を備えたモデルとして、ファツィオの国内販売を開始してくれた同社に感謝の意を述べたい気分なのだ。
そして改めて考えてみると、今回の文章に登場した6台のルックスとキャラクターは思いっ切り各車各様で、その事実は驚くべきことだと思う。
ディティール解説











主要諸元
型式:8BJ-SEL6J/E35FE
全長×全幅×全高:18620mm×685mm×1125mm
軸間距離:1280mm
最低地上高:135mm
シート高:765mm
装備重量:97kg
キャスター/トレール:27°/85mm
エンジン形式:空冷4ストローク単気筒
弁形式:OHC2バルブ
総排気量:124cc
ボア×ストローク:52.4×57.9mm
圧縮比:10.2
最高出力:6.1kW〈8.3PS〉/6750rpm
最大トルク:9.8N・m〈1.00 kg-f・m〉/5000rpm
燃料供給装置: フューエルインジェクション
始動方式:セルフスターター
点火方式:フルトランジスタ
クラッチ形式:乾式自動遠心シュータイプ
変速機形式:Vベルト無段変速
1次・2次減速比:1.000・8.258
変速比:2.201~0.742
フレーム形式:アンダーボーン
ブレーキ形式前:油圧式ディスク
ブレーキ形式後:機械式ドラム
タイヤサイズ前:110/70-12
タイヤサイズ後:110/70-12
燃料タンク容量:5.1ℓ
乗車定員 2名
燃料消費率WMTCモード値:56.4km/L
【モトチャンプ】
![by Motor-Fan BIKES [モーターファンバイクス]](https://motor-fan.jp/wp-content/uploads/2025/04/mf-bikes-logo.png)