ヤマハ・アエロックス:48万1800円

ヤマハNMAX155……459.800円

NMAX以上にアエロックスはスポーティ?
2026年から日本に導入されたアエロックスと、2017年から国内販売が始まり、2025年に大幅刷新を受けたNMAX155(以下、NMAX)を比較するにあたって、僕は一抹の不安を感じていた。
と言うのも、僕にとってのNMAXはスポーティなスクーターなのだ。その背景には、ライバルのホンダPCXがコンフォート指向で、2台の差異を語る際に最適な言葉だったという事情があるのだが、ライバルの存在を抜きにしても、NMAXはヤマハならではのスポーツティさが味わえるモデルだと思う。

ところが、アエロックスはNMAX以上にスポーティさを強調したモデルで、コンセプトは“スーパースポーツバイクに最も近いスクーター”なのである。となると、NMAXの立場は?という疑問が湧いてくるし、市場では2台の食い合いが起こりそうな気がするものの……。

意外なことにNMAXとアエロックスは、きっちり住み分けを行っていた。今現在の日本では、この2台を天秤にかけて迷っている人がいるはずだが、今回の試乗のように2台を同じ条件で比較できる場面があったら、どちらを購入するかで悩むことはほとんどないだろう。
サーキットはアエロックスの圧勝

ルックスは別物でも、構成は意外に近いのかも。試乗前日に広報資料やパーツリストをじっくり調べた僕は、2台にそんな印象を抱いた。
フレームはよく似たアンダーボーンタイプで、水冷単気筒のブルーコアエンジンの数値はまったく同じだし、2種のライディングモードが存在し(穏やかなTとシャープなS)、3段階の疑似的なシフトダウンが可能なYECVTの基本構成も同様。
そして車体寸法に注目すると、車格はアエロックスのほうがやや大柄で高めのようだが、劇的な差を感じるほどではない。

だから当初の僕は、2台の差異のキモになるのはタイヤサイズだろうと考えていた(アエロックスは前後14インチで、NMAXは前後13インチ)。でも実際のアエロックスとNMAXは、何もかもが異なっていたのだ。

まずは撮影を兼ねて走った秋ヶ瀬サーキットでの印象を記すと、それはもうアエロックスの圧勝だった。
前述したように、2台のエンジンに関する数値はまったく同じなのだが、YECVTを含めた駆動系の設定は異なっていて、スロットルレスポンスと加速感はアエロックスのほうが明らかに良好にして俊敏。
その特性を把握してからNMAXに乗り換えると、Sモードでシフトダウンを駆使しても、何となく物足りなさを感じてしまう。

そしてそういった印象は車体、と言うか、ハンドリングも同様だった。前後14インチタイヤだけではなく、運動性重視の設定が行われた前後ショックやディメンションなどの効果で、アエロックスのコーナリング性能とバンク角の深さは、NMAXを完全に上回っていたのだ。

もっとも単体で乗っているぶんには、NMAXも十分にスポーティなのである。とはいえ、大小のカーブが続く見通しがいい道での勝敗は火を見るより明らかで、その差異が僕にはMT-09とYZF-R9的と思えた(MT-125とYZF-R125、MT-07とYZF-R7より差が大きい)。

市街地で感じたNMAXの美点
そんなわけで、アエロックスの運動性に驚きを感じた僕ではあるものの、続いて走った市街地ではNMAXの株が急上昇。
着座位置が低く、ハンドルが高くて近く、ライディングポジションの自由度が高いNMAXは、思わずホッとしてしまうような安心感が味わえるし、前後13インチタイヤや短めの軸間距離のおかげで、チマチマした住宅街や渋滞路ではアエロックスより小回りが利く。
そして日常域での扱いやすさを考えると、アエロックスほどシャープではなく、それでいてルーズな気配がないスロットルレスポンスも、NMAXならではの美点と思えるのだ。

と言っても、アエロックスが市街地を苦手としているわけではないのだが、スーパースポーツ的な特性を考えると、乗車中は適度な緊張を強いられている……気がしないでもない。
その感触をどう捉えるかは人それぞれだが、天候や乗り手の体調などに関わらず、日常の足として気軽に使えるという点では、NMAXのほうが優位だろう。

さらに言うなら利便性や経済性でも、NMAXはアエロックスを上回る資質を備えていた。
シート下のトランクスペース容量はアエロックスのほうがわずかに大きいけれど、NMAXはフロントポケットが左右に備わっているし、純正アクセサリーパーツとしてリヤキャリアとトップケースが存在する(アエロックスのフロントポケットは左のみで、積載系の純正アクセサリーパーツはナシ)。
また、意外に差が大きいWMTCモードの燃費やガソリンタンク容量、ナビ画面のサイズなどを考えると、NMAXの行動範囲はアエロックスより広くなりそうだ。

ヤマハの懐の広さを実感
さて、ここまでの文章を振り返ると、何だか過去にモトチャンプに掲載したNMAXとPCXの比較インプレに近い内容になってしまったが、アエロックスの登場で、僕のNMAXに対する認識がPCXと同じになったのかと言うと、そういうわけではない。
PCXを基準にして考えると、やっぱりNMAXはスポーティだと思う。

そのあたりを説明するうえで、読者の皆様にイメージしていただきたいのが30cm定規。かつての僕が、スポーティなNMAXを0cm、コンフォートなPCXを30cmと考えていたとするなら、今現在は0cmの位置にアエロックスが入り、NMAXは15cm近辺に移動、という感じなのだ。
いずれにしても、“スーパースポーツバイクに最も近いスクーター”として開発されたアエロックスを体験した僕の中では、NMAXの位置づけが微妙に変化し、今現在はスポーツコミューター、あるいはベーシック&スポーツスクーターという印象を抱いている。

もっともそういった住み分けは、ヤマハにとっては何を今さらの話で、おそらく、各車の初代が登場した2010年代中盤から変わっていないのだろう。とはいえ僕自身は今回の比較試乗を通して、ヤマハのスポーツスクーターに関する懐の広さを実感することとなったのである。

ライディングポジション(身長182cm・体重74kg)


スポーツライディングの楽しさを追及したアエロックスと比較すると、ハンドルグリップが高くて近く、着座位置が低く、フットスペースが広いNMAXのライディングポジションは、コンフォートな雰囲気。もちろん、これはどっちがいい悪いという話ではないのだが、人によってはアエロックスに敷居の高さを感じるのかもしれない。
ディティール解説


メーターの設置位置は、アエロックス:ハンドル上部、NMAX:フロントカウル内(フレームマウント)。スイッチボックスは2台に共通で、左にライディングモードの切り替えとシフトダウン用のボタン、右にアイドリングストップ用のオン/オフレバーが備わる。


アエロックスの計器はオーソドックスなデザインの4.2インチTFTディスプレイで(ただし、スクーターでは珍しいラップタイムの表示が可能)、NMAX155は4.2インチTFTと3.2インチLCDを組みわせたデュアルディイスプレイ。スマホと連携して表示するナビは、アエロックス:ターンバイターン式、NMAX155:全画面マップ。


シートの座り心地はいずれも良好。加速中のホールド感を意識したのか、アエロックスは前後の段差が大きい。なおアエロックスは独立式のグラブバーを装備していないが、テールカウル左右下部にはアシストグリップが備わる。


トランクスペース容量は、アエロックス:24.5ℓ、NMAX:23ℓ。いずれのモデルもアライのラパイドNEOはギリギリで収まったけれど、上部に大きなエアロパーツが備わるヘルメットは難しそう。


φ230mmディスク+片押し式1ピストンキャリパーの前後ブレーキは2台に共通。ただし、アエロックスのABSが1チャンネル式であるのに対して、NMAXは2チャンネル式。ちなみにABS作動感は、アエロックスのほうがナチュラルだった。純正指定タイヤは、アエロックス:IRC SCT-005、NMAX:ダンロップ・スクートスマート。


前後ショックの設定は、アエロックス:運動性重視、NMAX:快適性重視。もっとも、アエロックスの乗り心地は決して悪くなかったし、NMAXでスポーツライディングが楽しめないわけではない。リヤショックにプリロードアジャスターが備わるのはNMAXのみで、リザーバータンク付きのアエロックスは調整不可。
【モトチャンプ】


![by Motor-Fan BIKES [モーターファンバイクス]](https://motor-fan.jp/wp-content/uploads/2025/04/mf-bikes-logo.png)