ホンダX-ADV……1,488,300円

2026年型X-ADVの日本仕様のカラーリングは、マットパールグレアホワイト、グラファイトブラック、マットディープマッドグレーの3種。

リセールプライスランキングで6期連続の首位

ここ最近の2輪メディアの記事を見ていて、僕が何となく引っかかりを感じたのは、バイク王&カンパニーが運営している“バイク未来総研”が公表したリセールプライスランキングで、ホンダX-ADVが2024年中盤から6期連続で首位を獲得したというニュースである。

もっともそのランキングは、あくまでも売却時に高値が付くという視点に基づいていて、X-ADVが6期連続で首位を獲得した背景には、日本での販売台数が少ないという事情があると思う。

何と言っても2017年に登場したX-ADVの年間販売台数は、当初は400台で、以後は徐々に増えているものの、2026年型でも800台なのだから(近年の日本の絶大な人気を獲得しているカワサキZ900RSの年間販売台数は、4000~6000台前後で推移)。

ただし、販売台数が少なければリセールバリューが生まれるかと言うと、必ずしもそんなことはないわけで、絶対数が多くなくても、X-ADVに惹かれるライダーは確実に存在するのだ。

と言うか、僕自身もそういったライダーの一人で、2017年に試乗した際はホンダらしからぬ?と言いたくなる、独創的な乗り味に感動を覚えた。

とはいえ、僕がこのモデルに試乗したのは1度だけで、2021年以降の第二世代は体験していない。そこで今回の1000kmガチ試乗では、ネット記事の効果で注目度が上がっていて、自分自身もライディングフィールを改めて確認したかった、X-ADVを取り上げることにした。

過去に前例がない新境地を開拓

エンジン+フレーム前半部の基本構成はNC750シリーズと共通。ただし、トランクスペースやガソリンタンクの配置・形状は各車各様。

本題の前に大前提の話をしておくと、X-ADVは素性を説明するのがなかなか難しいバイクである。

外装や足まわりは同社のCRF1100Lアフリカツインに通じる雰囲気で、クラッチレバーとシフトペダルが存在しないことやステップがボードタイプであること、シート下に22ℓの収納スペースが存在することなどを考えると、“アドベンチャースクーター”と呼びたくなるものの……。

X-ADVを含めたNC700/750シリーズが搭載する並列2気筒エンジンの最大の特徴は、シリンダーが62度も前傾していること。動弁系はOHC4バルブで、スロットルボディは1個。

前任に当たるインテグラと同じく、このモデルはクランク位相角が270度の並列2気筒エンジンやオートマチック感覚で扱えるDCT:デュアルクラッチトランスミッション、スチール製ダイヤモンドフレームの前半部など、主要部品をNC750シリーズと共有しているのだ。

外観はまったく異なるが、2012~2016年に販売されたインテグラはX-ADVの前任に当たるモデル。開発コンセプトは、スクーティングモーターサイクル。

つまりX-ADVを正しく表現するなら、“モーターサイクルをスクーター風に仕立て、アドベンチャーテイストを投入したモデル”なのだが、それではあまりに長すぎるので、やっぱり“アドベンチャースクーター”と呼ぶべきなのだろう。

なお過去に前例がない新規境地を開拓したこのモデルは、主要市場の欧州で大人気を獲得し、これまでに6万台以上を販売。一部の国では長きに渡ってマキシスクーターの王座に君臨してきた、ヤマハTMAX/560に匹敵する支持を集めているようである。

イタリア車を思わせるフィーリング

ここからはインプレ編で、久々にして、第二世代では初めてのX-ADVに対する僕の第一印象は、車格が意外に大きいんだな……だった。

海外仕様と比較するなら、日本仕様は前後ホイールトラベルを約30mm短縮することで、シート高を820→790mmに下げているものの、軸間距離はCRF1100Lアフリカツインより10mm長い1580mmで、車重は現代の600~800ccクラスでは重めとなる237kgだから、そう感じるのは当然だろう。

ちなみに、エンジン+フレームの前半部を共有するNC750Xの軸間距離・車重・シート高は1530mm・226kg(DCT仕様)・800mmで、欧州でライバルと目されているTMAX560は1575mm・219kg・800mmである。

ただし、撮影を兼ねたツーリングに出かけた僕の頭からは車格の問題が消失。と言うのもこのバイク、エンジンがムチャクチャ面白いのである。

NC750シリーズのパラレルツインと言ったら、僕の認識は実直で堅実で黒子的な特性なのだが、吸排気系とDCTを専用設計したX-ADVは、2気筒ならではの鼓動感が濃厚なうえに、吹け上がりが軽やか。

しかも初代と比較すると、スロットルの電子制御化やバルブタイミングの刷新といった仕様変更を受けた第二世代は、右手の操作に対する反応が忠実・俊敏になっていて、中高回転域がよく回るのだ。

誤解を恐れずに言うなら、そのフィーリングはイタリア車的で、基本設計がNC750シリーズと共通とは思えないほど刺激的でドラマチック。

近年のバイクは多種多様なモデルに同じエンジンを搭載し、吸排気系のセッティングでキャラクターを作り込むことが多いけれど、ここまで兄弟車と別物の特性は珍しいんじゃないだろうか。

そして車体に関しても、X-ADVは魅力的な資質を備えていた。もっとも前述したように、日本仕様の前後ホイールトラベルは海外仕様より短いので、当初の僕は重心の低下による重ったるさを危惧していたものの、ハンドリングは思いのほか軽快で、狙ったラインにスパッと移動できる。

ただしそれでいて、長めの軸間距離や安定指向のキャスター/トレール(27度/104mm)、十分な包容力を備える前後サスペンションなどの効果なのだろう(フロントフォークはφ41mm倒立式で、リアサスはボトムリンク式モノショック)、スロットルをワイドオープンしても、かなりハードなブレーキングを行っても、車体に不安定な気配はまったく出てこないのだ。

これぞ、FUN BIKE‼

そのあたりを把握した僕は、X-ADVにFUN BIKEという印象を抱いた。

もっともこのモデルを語るとなったら、モーターサイクルとスクーターの魅力を融合、スクータースタイルでは初のアドベンチャーツアラーなどという言葉を使いたくなるし、そもそも二輪の世界でFUN BIKEと言ったら、125cc以下のオフロードを指すことが多いようだけれど、X-ADVを走らせていると、開発陣は実用性や親しみやすさよりもFUN、楽しさと面白さに注力したんじゃないか……と、思えてくるのだ。

いずれにしても、X-ADVのワクワク&ドキドキ感は特筆モノで、2017年に初めて試乗したときと同じく、いや、初めて試乗したとき以上の感動を僕は覚えた。そして冒頭で述べたリセールプライスランキングで6期連続首位という事実に、改めて納得したのである。

とはいえ、当連載のモットーは“バイクの本質は長距離を走ってみないとわからない”である。事実、撮影を兼ねたツーリングの後に、一泊二日の旅に出かけた僕は、X-ADVの意外な側面を知ることになったのだった。

今回の文章では“NC750シリーズ”と共有・共通という言葉を多用したけれど、X-ADVは数多くの部品を新規開発。倒立フォークやラジアルマウント式のフロントブレーキキャリパー、アルミスイングアーム、チューブレスタイヤに適合する17/15インチのスポークホイールなどを採用する足まわりに、NC750シリーズの面影はまったく無い。

主要諸元

型式:8BL-RH21
全長×全幅×全高:2200mm×940mm×1340mm 
軸間距離:1580mm 
最低地上高:135mm 
シート高:790mm 
キャスター/トレール:27°/104mm 
車両重量:237kg 
エンジン形式:水冷4ストローク並列2気筒 
弁形式:OH4バルブ 
総排気量:745cc 
内径×行程:77mm×80mm 
圧縮比:10.7
最高出力:43kW(58ps)/6750rpm 
最大トルク:69N・m(7kgf・m)/4750rpm 
始動方式:セルフスターター
点火方式:フルトランジスタ 
潤滑方式:ウェットサンプ 
燃料供給方式:フューエルインジェクション 
トランスミッション形式:常時噛合式6段リターン 
クラッチ形式:湿式多板コイルスプリング・DCT
ギアレシオ 
 1速:2.666 
 2速:1.904 
 3速:1.454 
 4速:1.178 
 5速:0.967 
 6速:0.815 
1・2次減速比:1.921・2.235 
フレーム形式:ダイヤモンド 
懸架方式前:テレスコピック倒立式φ41mm 
懸架方式後:スイングアーム・リンク式モノショック 
タイヤサイズ前:120/70ZR17
タイヤサイズ後:160/60ZR15
ブレーキ形式前:油圧式ダブルディスク 
ブレーキ形式後:油圧式シングルルディスク 
使用燃料:無鉛レギュラーガソリン 
燃料タンク容量:13L 
乗車定員:2名 
燃料消費率国交省届出値:42.5km/L 
燃料消費率WMTCモード値:27.1km/L