ホンダX-ADV……1,488,300円

2017年から発売が始まったX-ADVの電子デバイスは、世代を重ねるごとに充実化。2018年型では悪路を意識したGスイッチとトルクコントロールが追加され、電子制御式スロットルを採用した2021年型以降は4+2種類のライディングモードを設定。さらにユーザーの声に応える形で、2025年型からはクルーズコトロールを導入している。なおグリップヒーターとETCは、初代の時点で標準装備。
 

ライディングポジション(身長182cm・体重74kg) ★★★★☆

真横からの写真だと、X-ADVのライディングポジションは完全にスクーター。とはいえ乗り手としては、シートには“座る”ではなく“跨る”感覚で、乗車時に目前に広がるコクピットの雰囲気はアドベンチャーツアラー。弟分に当たるADV160も同様の雰囲気を構築しているが、何とも不思議な乗車感である。

なおステップに体重を預けづらいため、ロングランの後半では尻に適度な痛みが発生したが、腕や足腰に疲労は感じなかった。

海外仕様より30mm低い、日本仕様の790mmというシート高は、現代の600~800ccクラスの基準では低い部類で、身長が160cm前後のライダーでも両足が地面に接地するようだ。ただしシート下左右の張り出しを考えると、足着き性が素晴らしく良好なわけではない。

タンデムライディング ★★★☆☆

運転手の視点だと、後輪荷重が増えてもハンドリングの変化が少なく、DCTのおかげでスムーズな変速ができ、後部に座るライダーからの圧迫感がほとんど無いので、2人乗りはなかなか快適。

とはいえ、タンデムライダーを務めた富樫カメラマン(身長172cm・体重52kg)の印象は、僕の印象とは真逆だった。「位置が低くて角張ったグラブバーは握り心地がいまひとつだし、スクータースタイルだから止むを得ないけど、タンデムステップは左右幅がかなり広い。シートの座面が広いから期待していただけに、ちょっとガッカリしたかな……」

取り回し ★★★☆☆

車格は決して小柄ではないので(軸間距離は1580mmで、車重は237kg)、当初はちょっと心配していたものの、39度の切れ角を確保したハンドルに力を入れやすいので、取り回しで苦労することはなかった。

最小回転半径は2.8mで、この数値は同じホンダのXL750トランザルプやCRF1100Lアフリカツインより0.2m大きく、NC750Xよりは0.2m小さい。

ハンドル/メーターまわり ★★★★★

コクピットは旅心がそそられる雰囲気。ハンドルは近年のアドベンチャーツアラーで定番になっているアルミ製テーパータイプで、そのクランプはフロントフォーク上部との接面を持つ独創的なデザイン。イグニッションはスマート式で、スイッチ後部にはシートと燃料給油口のオープナーが備わる。

表示内容に多少の違いはあるものの、スマホとの連携機能を備える5インチTFTフルカラーディスプレイは、近年のホンダで数多くの車両が採用している定番品。スイッチボックスからの操作性と視認性は良好だけれど、個人的には少々面白みに欠ける気がしないでもない。

左右スイッチ/レバー ★★★★★

左右スイッチボックスには数多くのボタン・レバーが存在するので、初試乗時は戸惑う人がいそうだが、慣れるとサクサク使える。右側中央のレバーは、ニュートラル/オートマチック/マニュアルの切り替え用で、左側にはライディングモードの選択用レバーやクルーズコントロールの車速調整ボタン、シフトアップ/ダウンボタンなどを設置。

前後ブレーキレバーの基部には位置調整用ダイアルが備わる。ナックルガードとグリップヒーターは標準装備。フロントブレーキマスターシリンダーの後部に見えるのは、パーキングブレーキ用のレバー。

燃料タンク/シート/ステップまわり ★★★★☆

燃料タンクの設置場所はシート前半の下部で、その周辺の外装部品はスネやくるぶしでの車体ホールドを意識した造形。

シートはスタイリッシュなデザインだが、肉厚とは言い難いウレタンには、足つき性とトランクスペースの板挟み的な気配を感じる。なおウレタンが+10mmとなる純正アクセサリーのコンフォートシートの価格は、この種のパーツとしてはかなり高めの7万8650円。

ステップはスクーター然としたボードタイプで、足の置き場に関しては十分な自由度を確保。もっとも開発陣は、このタイプでは運動性を引き出しづらいと感じたのか、純正アクセサリーとして、バー位置がNC750Xとほぼ同様になるオフロードタイプのライダーステップキット(6万7639円)を設定。

積載性 ★★★★★

純正アクセサリーに複数のパニア/トップケースとコンソールバッグが存在するものの、積載性はノーマル状態でも十二分。

シート下のトランクスペース容量はフルフェイスヘルメットの収納を視野に入れた22ℓだし、タンデムシートの座面がフラットで大きいので、シートバッグ(写真は筆者の私物であるタナックスのミニフィールドシートバッグ)はビタッと安定。

ブレーキ ★★★★★

フロント:φ296mmディスク+ラジアルマウント対向4ピストンキャリパー、リア:φ240mmディスク+片押し式1ピストンキャリパーのブレーキは、オンでもオフでも、ドライでもウェットでも、どんな場面でも扱いやすかった。ABSの作動感は至ってナチュラルで、悪路重視のGモードを選択すると介入が遅くなることも好感触。

サスペンション ★★★★☆

日本仕様の前後サスペンション(フロントフォークはφ41mm倒立式で、リアはボトムリンク式モノショック)はローダウン仕様で、おそらく、前後ホイールトラベルは120mm近辺。

第二回目に記したように、フロントのプリロードと伸び側減衰力、リアのプリロード調整後は露骨な不満を感じなかったものの、できることなら純正アクセサリーとして、ストロークが長い海外仕様の前後ショックを販売して欲しいところ。

車載工具 ★★★★★

シート下の車載工具袋には、スマートキーにトラブルが発生した際に使用するEMカプラー、ヘルメット用ワイヤーロック、差し替え式ドライバー、10×14・12/14mmの両口スパナ、フロントのプリロードを調整する19mmのレンチ、5mmのL型六角棒レンチ、フロント用ダンパーアジャスター、ヒューズプーラー、リアショック用フックレンチ+エクステンションバーが収まる。NC750Xも内容は同じだが、近年の車載工具の基準で考えると相当に豪華。

実測燃費 ★★★★☆

頻繁にスロットルを全開にし、頻繁にシフトダウンを行ったからだろうか、前半の燃費はWMTCモード値の27.1km/ℓを下回ったものの、乗り方を心得て来た後半はWMTCモード値を超える燃費を3回マーク。とはいえネットを検索すると、30km/ℓ以上というX-ADVユーザーが少なくなかった。今回のトータル燃費から算出できる航続可能距離は、26.2×13=340.6km。

X-ADVのタイヤサイズは、フロント:120/70ZR17・リア:150/60R15という特殊な組み合わせ。前後セットで使えるアフターマーケット製としては、ダンロップ・トレールマックス・ミックスツアー、ミシュラン・パワーシフト、ピレリ・スコーピオンラリーSTRなどが存在する。

主要諸元

型式:8BL-RH21
全長×全幅×全高:2200mm×940mm×1340mm 
軸間距離:1580mm 
最低地上高:135mm 
シート高:790mm 
キャスター/トレール:27°/104mm 
車両重量:237kg 
エンジン形式:水冷4ストローク並列2気筒 
弁形式:OH4バルブ 
総排気量:745cc 
内径×行程:77mm×80mm 
圧縮比:10.7
最高出力:43kW(58ps)/6750rpm 
最大トルク:69N・m(7kgf・m)/4750rpm 
始動方式:セルフスターター
点火方式:フルトランジスタ 
潤滑方式:ウェットサンプ 
燃料供給方式:フューエルインジェクション 
トランスミッション形式:常時噛合式6段リターン 
クラッチ形式:湿式多板コイルスプリング・DCT
ギアレシオ 
 1速:2.666 
 2速:1.904 
 3速:1.454 
 4速:1.178 
 5速:0.967 
 6速:0.815 
1・2次減速比:1.921・2.235 
フレーム形式:ダイヤモンド 
懸架方式前:テレスコピック倒立式φ41mm 
懸架方式後:スイングアーム・リンク式モノショック 
タイヤサイズ前:120/70ZR17
タイヤサイズ後:160/60ZR15
ブレーキ形式前:油圧式ダブルディスク 
ブレーキ形式後:油圧式シングルルディスク 
使用燃料:無鉛レギュラーガソリン 
燃料タンク容量:13L 
乗車定員:2名 
燃料消費率国交省届出値:42.5km/L 
燃料消費率WMTCモード値:27.1km/L