後にも先にも唯一無二!

やっぱり初代のヤマハ・BW’S(ビーウィズ)はカッコ良い。太いブロックタイヤに、スクーターらしからぬゴツい足周り。フロント周りにはデュアルヘッドランプ風の顔つきが与えられ、エンジン(駆動系カバー)やフロントフォークまでホワイトで統一されている。普通のスクーターとは明らかに違う。なのに、キワモノで終わらず、妙にオシャレに見える。ここが初代BW’Sのすごいところだ。

当時のカタログでは、「プレイ・スクーター」と紹介され、「街を飛びだせ。遊びの天才ビーウィズ。」というコピーで打ち出されていた。さらに装備紹介ページでは「大地したたかに、街しなやかに。これが遊びの天才のたくまし装備。」という言葉も使われている。つまり、最初から“ただの街乗りスクーター”ではなかったのだ。街も、ちょっとした未舗装路も、アウトドア気分もまとめて楽しもうという、レジャー感満点の1台だった。

初代ってTW200もそうだけど、カスタムされていない素の状態の良さがある。あれこれ足さなくても、ノーマルの時点でキャラが立っている。カラーリングも含めて、見た目で優勝。今見てもそう言いたくなる完成度だ。

カタログの表紙には「プレイ・スクーター BW’S」の文字。海外ロケらしいレジャー感も含めて、当時のスクーターとしてはかなり異色の世界観だった。

タイヤは太いけど鈍くない。6.0psで小気味良く走る

BW’Sは見た目だけの雰囲気モデルではない。ベースはチャンプCX系のエンジンで、太いタイヤを履かせるためにクランクケースが伸ばされ、幅広の専用感ある構成になっていた。乾燥重量は65kg。数字だけ見れば、50ccスクーターとしては意外と重い。でも、走らせるとその重さをあまり感じさせない。

エンジンは空冷2スト単気筒49ccで、最高出力は6.0ps/6500rpm。カタログでも「低中速重視でチューンされたエンジン」と紹介されていて、街中での扱いやすさと加速を狙っていたことが分かる。実際、まあ速かったし、おもしろかった。太タイヤだから鈍そうに見えるけれど、イメージほどどんくさくない。むしろ“見た目のゴツさに反してよく走るな”という驚きがある。

足周りもBW’Sらしさのかたまりだ。前120/90-10、後130/90-10のビッグ&ワイドタイヤに、ロングストロークサスペンションを組み合わせる。スクーターにしては最低地上高も高く、ちょっとした段差や荒れた路面もあまり気にせず入っていける。もちろん本格オフローダーではないけれど、普通のスクーターよりずっとラフに扱える。その“場所を選ばない感じ”こそ、BW’Sの大きな魅力だった。

カタログではビッグ&ワイドタイヤ、ロングストロークサスペンション、デュアルヘッドランプなどを大きく紹介。“遊びの天才”を支える装備として、見た目だけでなく走りの自由さも打ち出していた。

雪の日も公園も遊び場にした、BW’S体験談

ここからは少し個人的な話になるけれど、筆者Sも一時期BW’Sを通勤の足として使っていた。これがまた、普通のスクーターとは違う楽しさがある。太いタイヤは少々ラフに扱っても安心感があって、ちょっとした段差なら“まあ行けるでしょ”と思わせてくれる。毎日の移動手段なのに、乗るたびに少しだけ遊び心が顔を出すのだ。

雪の日に遊んだこともある。まったくオススメできる話ではないけれど、当時のBW’Sにはそういう気分にさせる何かがあった。スクーターなのに、ちょっとした悪路や滑りやすい路面でワクワクしてしまう。そういうキャラクターは、普通の50ccスクーターにはなかなかない。

そしてイジっても楽しかった。プーリーを削ると最高速も加速も体感できるくらい変わったし、ドラムブレーキのためフロントが軽く、ウイリーもしやすい。ただし、太いタイヤだから何でも得意というわけではない。ハイグリップタイヤの選択肢はほぼなく、限界はそこまで高くない。だから本気で攻めるというより、“日常の中でラフに遊ぶ”のが似合う。とにかくデザインが大好きで、通勤なのに乗る前からちょっとうれしくなる。そんな一台だった。

架装の少ないシンプルなシルエットも特徴のひとつ。横から見るとワイドタイヤが主役なのが良く分かる。

カラーもポップ! 黒、青、赤、どれもBW’Sらしい

カラーリングもよかった。黒はちょっと引き締まった印象で、太タイヤとデュアルライト風フェイスの迫力がより強く見える。青はカタログでも印象的だった爽やかな定番カラーで、レジャースクーターらしい軽さがある。そして赤はもう、遊び道具感が全開。ポップで、元気で、見た瞬間に気分が上がる。

どの色も、ただの色違いではなく、キャラクターをちゃんと表現している。白いエンジン(駆動系カバー)や足周りとの組み合わせも効いていて、80年代後半のヤマハらしい遊び心が伝わってくる。いま見ても古びて見えないというより、むしろ新鮮。こういう色使いが似合うスクーターは、そう多くない。

ブラック系カラーは、太いタイヤとデュアルライト風フェイスの迫力が際立つ。ポップなBW’Sの中では、少し精悍に見える一台。

白×青の組み合わせは、カタログでも印象的だった王道カラー。レジャー感と爽やかさがあり、初代BW’Sらしさを素直に楽しめる。

赤×白はポップさ全開。遊び道具としてのBW’Sのキャラクターがもっとも分かりやすく伝わるカラーだ。

二代目、100cc、4ストまで続いた“BW’S顔”

初代BW’Sは、太タイヤとデュアルライト風フェイスで強烈な個性を打ち出したが、その後のシリーズもまた興味深い。ニ代目は正常進化し海外で100ccモデルBW’S100として登場。国内ラインナップにはなかったが、並行輸入車として人気を博した。

系譜はさらに4ストモデルまで続いていく。時代に合わせてエンジンや装備は変わっても、デュアルライト系のフォルムや雰囲気はしっかり残っていた。つまり、初代の時点で“BW’Sらしさ”はかなり完成していたということだ。

さらに、スタックハンドルの代わりにキャリアを備え、ロード寄りのタイヤを履いた「BW’Sスポーツ」が1989年に登場。車両価格はBW’Sと同じ14万9000円で、少し街乗り寄せた派生モデルである。

ロードタイヤに履き替え、踊るような車名ロゴを変更したBW’S SPORTS(1989年登場)。リヤキャリアを装備し、専用カラーもクール。

YAMAHA BW’S(1988)はどんなマシンだったのか

あらためてBW’Sをマシンとして見ると、かなり明確な狙いを持った50ccスクーターだったことが分かる。型式は3AA、エンジンは空冷2スト単気筒49cc。最高出力は6.0ps/6500rpm、最大トルクは0.67kgm/6000rpm。燃料タンク容量は3.3Lで、車両重量は65kg。前後ドラムブレーキながら、フロントは110mmの大径ドラムを採用し、ストッピングパワーにも優れていた。

タイヤは前120/90-10、後130/90-10。いま見てもかなりワイドで、ここがBW’Sの見た目を決定づけている。カタログでは、ビッグ&ワイドタイヤにロングストロークサス、オーバーフェンダー風の外装、デュアルヘッドランプなどを“たくまし装備”として紹介。街でもアウトドアでも楽しめるプレイ・スクーターという立ち位置が、しっかり作り込まれていた。

普通のスクーターなら、買い物や通勤の便利さを前面に出すところを、BW’Sは「街を飛びだせ」と言ってしまう。そこがいい。今でいうアクティブ系スクーターを、1988年の時点でかなり分かりやすく形にしていた存在だったのかもしれない。

SPECIFICATIONS|YAMAHA BW’S(1988)

全長×全幅×全高:1735×630×1030mm
ホイールベース:1170mm
シート高:735mm
車両重量:65kg(乾)
エンジン:空冷2サイクル単気筒
総排気量:49cc
最高出力:6.0ps/6500rpm
最大トルク:0.67kgm/6000rpm
燃料タンク容量:3.3L
燃費:80.0km/L(30km/h定地走行)
ブレーキ(前・後):ドラム・ドラム
タイヤ(前・後):120/90-10・130/90-10
車両価格:14万9000円 ※1988年モデル

※この記事は月刊モトチャンプ2025年3月号を基に加筆修正を行っています

【モトチャンプ編集部】