Q:寒い時期はタイヤが冷えて滑りやます。走り出してから何分くらいウォームアップすれば大丈夫ですか?

茨城県/伝説のクラッシャーさん

チェンはこれまでサーキットで、タイヤが冷えた状態のまま走り出して転倒したライダーを何人も見てきました。特にスリックなどのレース用タイヤは、ある程度温度が上がらないと本来のグリップを発揮しにくい構造(美味しい温度帯が決まっている)。

ただし、一般公道を走るための市販タイヤまで同じように考える必要はありません。主要タイヤメーカーの公道用タイヤは、レース用ほど温度依存が高くなく、比較的低い温度域からグリップを確保できるよう設計されているものが多い。とはいえ、寒い時期はゴムも路面も冷えているので、走り出していきなり普段通りのペース、というのは避けたいところです。

チェンの目安は15分。でも“15分待てばOK”じゃない

「じゃあ何分?」と聞かれたら、チェンの場合は経験上15分くらい連続して走るのをひとつの目安にしています。サスペンションやエンジンも含めて車体全体をゆっくり目覚めさせるつもりで、無理せず走る。

大事なのは、15分という数字そのものより、その時間をどう走るか。急加速、強いブレーキ、いきなり深いバンク角を使うのではなく、最初は穏やかに加速して、ブレーキもコーナリングも徐々にいつものペースへ近づけていく。気温や路面温度、タイヤの種類、空気圧、走り方によって温まり方は変わるので、「15分経過=もう大丈夫」というタイマーではないんです。

つまり、15分は“待つ時間”ではなく、“慎重に走りながら車体とタイヤの感触を確かめる時間”。これなら寒い朝でも現実的ではないでしょうか。

「サクッ」から「ヌメ〜」へ。この感触の変化がおもしろい

チェンは冷えたタイヤで走り出したとき、車体が軽く、ゴムが硬いような感触を「サクッ」と表現しています。そこから走っているうちに接地面に柔軟性を感じるようになり、「ヌメ〜」っとした感触へ変わってくる。かなり独特な表現だけど、長く同じバイクやタイヤに乗っていると、こういう微妙な違いって意外と分かるものなんですよね。

もうひとつ目安にしているのが、停止後にトレッドへ触れたときの温かさ。もちろん手で触っただけで正確な温度は分からないし、「温かければ絶対大丈夫」というものでもありません。それでも、走り出し直後との違いを知るひとつの材料にはなります。

ただし、ここで忘れたくないのがツーリング途中の休憩。パーキングでコーヒーを飲んで一服している間にも、タイヤは思っているより早く冷えていきます。再スタートしたら休憩前と同じペースへいきなり戻さず、もう一度少し慎重に走り始める。このひと手間も大切です。

寒い日は、タイヤと相談しながら走ろう

公道用タイヤはレース用ほど温度にシビアではない。だから寒いからといって必要以上に怖がることはありません。でも、タイヤも路面も冷えている走り出し直後は、少し丁寧に走ってあげる。

目安は15分。ただ、本当に大切なのは時計を見ることではなく、そのあいだにタイヤや車体の感触がどう変わっていくかを感じることです。走り出しの「サクッ」が少しずつ変わっていく。そんな感触が分かってくると、時計ばかり気にしなくても「そろそろ馴染んできたかな」とタイヤの様子を探れるようになる。寒い朝は最初の15分くらい、急がずバイクとタイヤを起こしてやる。これくらいの付き合い方がちょうど良さそうです。

元レースメカニックで、カスタムビルダーや二輪誌編集部員のキャリアを持つ。現在はスーパーモトのレースに参戦し、ハイエースで全国を飛び回っている。

※この記事は月刊モトチャンプ2026年1月号を基に加筆修正を行っています

【モトチャンプ編集部】