Q:最近、アイドリング中にエンジンから「カチカチ」という音が聞こえるようになりました。回転を上げると音も速くなる気がします。これってタペット音でしょうか? 放っておくと壊れますか?

埼玉県/モタード命さん

まず知っておきたいのは、「カチカチ鳴る=すぐ故障」ではないということ。4ストエンジンのシリンダーヘッド周りでは、カムやロッカーアームなどがバルブを開閉しているため、正常な状態でもある程度の機械音は出る。ただし、以前より明らかに大きくなった、エンジンが暖まっても続く、回転数に合わせて目立つようになったという変化があるなら、バルブクリアランスを確認するきっかけにはなる。実際、弁すき間はエンジンの定期点検項目にも含まれている。

“カチカチ音が大きい=危険”だけじゃない。静かなほうが要注意なことも!?

いわゆるタペット音を理解するカギが「バルブクリアランス」だ。バルブを動かす機構には、エンジンが冷えた状態で決められたわずかなすき間が設けられている。車種によって規定値は異なるが、わずか0.1mm前後という世界だ。このすき間はエンジン温度によって変化するため、点検や調整は規定された冷間状態で行うのが基本となる。

バルブクリアランスが広すぎると、カムやロッカーアームなどがバルブを押し始める際の衝撃が大きくなり、「カチカチ」という音が目立ちやすくなる。だから異音をきっかけに点検する、という考え方は間違っていない。

ところが、ここに落とし穴がある。狭すぎる場合は、必ずしも派手な音で教えてくれるとは限らない。それどころか、すき間がほとんどなくなるとバルブが完全に閉じられなくなり、圧縮低下やパワーダウン、最終的にはバルブを傷める原因になる。つまり「カチカチ鳴っていないからバルブ周りは絶好調」とは限らないのだ。

タペット音は「大きいほど危険、小さいほど安心」という単純なものでもないのである。

音の大きさより「前と変わったか?」を気にしたい

では、普段乗っている人は何を基準にすればいいのか? まず役に立つのが、そのバイク自身の“いつもの音”を覚えておくこと。始動直後なのか、十分暖まったあとでも続くのか。アイドリングだけなのか、回転数を上げるとテンポまで一緒に速くなるのか。昨日まで気にならなかったのに突然大きくなったのか。こうした変化のほうが、「カチカチ」という擬音そのものより判断材料になる。

ちなみに、始動直後と暖機後で音が変わるのは、エンジン各部が熱で膨張し、バルブ周りのすき間や部品同士の位置関係が変化するため。始動直後はオイルの状態も暖機後とは違うので、機械音が目立つこともある。ただし「冷えていると必ずクリアランスが広い」「暖まれば必ず音が消える」という単純なものではなく、温度による変化はエンジンの構造や材質によって異なる。だから、冷間時だけなのか、十分暖まってからも続くのかを見ることが、異音を切り分けるひとつの手掛かりになる。

厄介なのが、シリンダーヘッド付近の音なら全部タペット音とは限らないこと。カムチェーンやテンショナー、カムシャフト、ロッカーアームなど、同じ周辺には音の原因になり得る部品がいくつもある。実際、シリンダーヘッド周辺の異音には、バルブクリアランス以外にもカムチェーンやテンショナー、カム周りの摩耗など複数の原因が考えられる。

そのため「カチカチするから、タペット調整!」と決めつけるのも早い。規定値から外れているかは、最終的には実際にクリアランスを測って確認する必要がある。

“音を消すため”に調整するわけじゃない

一般に“タペット調整”と呼ばれるバルブクリアランス調整は、カチカチ音を消すためだけのものではない。エンジンが暖まって各部が熱膨張しても、バルブがきちんと閉じられ、バルブ機構が適正に作動できるよう、規定されたすき間に保つための調整なのだ。

すき間が広すぎれば音が出やすくなり、狭すぎれば静かなまま不具合につながることも。だから気になる機械音が出たときは、「うるさいから詰める」のではなく、まず規定値に入っているかを見る。これが正解だ。

昨日まで聞こえなかった音が急に目立ち始めた、暖機後も変わらない、始動性やアイドリング、加速まで変わってきた。そんなときは、単なる“エンジンの個性”で片づけず、一度点検してみたい。

【モトチャンプ編集部】