唯一無二の存在だからこそ気をつける点がある

ジムニーノマドFC(4速AT)ボディカラーはシフォンアイボリーメタリック2 ブラックルーフ2トーン

先日、ジムニーノマドの試乗レポートをお送りしました。

オンロード&オフロードを走行したインプレッションのまとめとして「ジムニーの持つ独自の走り味」と「ファミリーユースが可能なパッケージ」を両立した唯一無二の存在であることがジムニーノマドの価値と記しています。

5ドア化しても292万円でコスパ最高!「ジムニーノマド」公道&オフロード試乗。後席は快適だし悪路走破性も圧倒的! | Motor Fan|自動車情報のモーターファン

2026年7月1日より「2型」に進化して発売中 2025年1月30日に、同年4月3日に発売開始することが発表されたジムニーノマドは、ある種「幻のクルマ」となっていました。なぜなら、発表から4日後の2月3日には受注停止とな […]

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言い換えれば、ロングボディ化と5ドア化によってファミリーユースに適したパッケージとなりながら、けっしてファミリーカーではなく、あくまでもジムニーらしいオフロード性能を有する仕上がりになっていたということです。全長3.9m程度のコンパクトSUVというプロファイルだけに注目して、凡百のクロスオーバーSUVと比べるような存在ではないという意味と読み解いた方もいるかもしれません。

ジムニーノマドは強固なラダーフレームとパートタイム4WDの組み合わせによるメカニズムを基本としています。モノコックボディとFFベースの4WD機構を持つクロスオーバーSUVとは、素性からしてまったく異なります。オフロード性能を高めたトレードオフの要素もあるわけです。

ジムニーノマドFC(5速MT) ボディカラーはセレスティアルブルーパールメタリック

その点を事前に理解せず、ボディサイズや価格帯から「コンパクトSUVの選択肢のひとつ」として捉えると、「想像していたのと違う」と感じることもあるでしょう。

ここでは、巷で「ここは期待はずれだった」と指摘される5つのテーマにフォーカスして、後悔しないためのジムニーノマド・バイヤーズチェックポイントをお送りしたいと思います。

オフロード走行をするジムニーノマド

【巷の指摘①】広くなったというリヤシートだが、他モデルと比べると狭い

全長×全幅×全高:3890mm×1645mm×1725mm ホイールベース:2590mm

これまでの3ドアボディのジムニーと、5ドアのジムニーノマドにおける最大の違いはホイールベースを340mmも伸ばしたこと。これにより、後席は広くなっていますが、じつはヒップポイントでいうと3ドア比で50mm後退しているだけで、340mmのストレッチがそのまま後席スペースに当てられているわけではありません。

後席用ドアがあり、後席シートもボリュームのある専用タイプとなっているので、3ドアのジムニーとの比較においては圧倒的に快適性が増していますが、コンパクトSUVというカテゴリーの中で見たときには、けっして余裕がある部類ではない、という評価が妥当でしょう。

室内高もそれほど余裕があるわけではありませんから、背の高い乗員はヘッドクリアランスが足りないと感じるかもしれません。あくまでジムニーとしては史上最高に座りやすいリヤシートですが、コンパクトSUVの中で比較しても広いと捉えることはできません。

ジムニーノマドのリヤシート
身長164cmの筆者が座った状態

最低地上高210mmという数字から受けるイメージ以上にフロアが高いのは、ラダーフレームの本格クロカン4WDゆえに当然のことです。実際、路面からステップまでの高さを測ってみると51~53cmもあります。これは3ドアのジムニーよりわずかに高めだったりします。なぜなら、ボディを伸ばしたぶんだけキャビンの前傾が強まっており、結果として後ろにいくほど地面との距離が離れてしまうから。

ステップ高の実測値は助手席側で51cm、後席で53cm

このあたりもモノコックボディのクロスオーバーSUVと同じような乗降性を想像していると、「家族が乗れないじゃないか」となり得ます。幼い子どもや高齢の家族がいるという環境では、事前に乗降性を確認しておく必要がありそうです。

後席に乗り込む筆者。膝が90度曲がるくらい足を上げる必要がある
助手席の乗降性も同様であることは理解しておきたい

【巷の指摘②】最小回転半径5.7mの小回り性能は街中できびしい

ラダーフレームの設計もあり、タイヤの切れ角は3ドアと同等

ジムニーノマドのスペックが明らかになったときから「最小回転半径5.7mはボディサイズからして大きすぎる」という指摘は多くありました。

ラダーフレームのフロント周り(エンジンを積み、フロントサスペンションを支える部分)は、3ドアのジムニーとさほど変わっていませんからタイヤの切れ角を増やすことは物理的に難しいですし、オフロード走行でのタフネスを考慮すると切れ角を増やすことは壊れやすさにつながってしまう部分もあります。ですから、ホイールベースが伸びた分だけ、最小回転半径が大きくなってしまうのは仕方がないといえます。

そうはいっても、軽自動車を49cmほど長くしたくらいのボディサイズで、5.7mという最小回転半径は納得できないというユーザーは少なくないようです。最近、話題のモデルでいうとプレミアムミニバンの日産エルグランドの最小回転半径が5.8mですから、ジムニーノマドの小回り性能はボディサイズに見合っていないという指摘はごもっともというほかありません。

今回、空いている駐車場でハンドルをフルロックまで切ってUターンしてみましたが、向きを変えるには約5台分の駐車スペースが必要でした。一台分の幅は2.5mほどですから、切り返さずにUターンするには12m程度の広さが必要となります。まさに最小回転半径を2倍した数字であることが確認できました。

狭い場所では切り返すことを前提にすれば、ボディがスクエアで見切りもよく、車両感覚もつかみやすいので、それほどストレスにはならないであろうとは思います。ただし、自宅の駐車場へのアプローチがタイトであるなど個々人で状況は異なるでしょうから、ジムニーノマドの小回り性能が許容範囲であるかは、よく考える必要があるでしょう。

【巷の指摘③】1.5Lのわりに燃費性能がイマイチだ

ジムニーノマドの1.5L「K15B」型エンジン

ジムニーノマドのエンジンは最高出力101馬力の1.5L DOHC 4気筒エンジン。カタログに記載される燃料消費率(WLTCモード)は5速MTで14.9km/L、4速ATは13.6km/Lです。

このボディサイズで15km/Lを切っているカタログスペックを見ると、経済性がイマイチと指摘したくなる気持ちは十分理解できます。

たとえば、同じくスズキのインド製クロスオーバーSUVであるフロンクスは1.5Lマイルドハイブリッド+CVTのパワートレインで、4WDのWLTCモード燃費は17.8km/Lです。ジムニーノマドより30%ほど燃費性能に優れているわけです。

こうした燃費性能については、ジムニーというブランドに期待する走破性とのトレードオフともいえます。

ジムニーノマドFC(5速MT) ボディカラーはセレスティアルブルーパールメタリック

具体的なポイントを挙げると、ジムニーノマドのタイヤ空気圧は180kPaが指定されています。燃費性能を高めるだけであれば250kPaの設定にしてもいいのかもしれませんが、それではオフロード走行でのタイヤの粘り強さを失ってしまいがち。オフロード走行で本領を発揮するというジムニーのキャラクターにプライオリティを置いた設計であれば、燃費性能が犠牲になってしまうのも致し方ないのでしょう。

5速MT車で1時間ほど市街地走行をした際の燃費表示は9.5km/Lだった

ちなみに、5速MTのジムニーノマドで市街地を中心に試乗したときの区間燃費をインフォメーションディスプレイに表示したところ、9.5km/Lとなっていました。これはカタログ達成率でいうと64%ですが、大人2名乗車で、エアコンもガンガンに効かせていたことを考えると、まあ妥当なレベルといえそう。

別の日に、一人乗りでアップダウンのあるコースを走ったときは15.0km/Lとカタログスペックをわずかに超えることができました。エアコンは使っていましたが、外気温が26℃と涼しかったこと、高めのギアを選んでマイペースでのんびり走ったことが、望外の好燃費につながったのでしょう。とはいえ、リアルワールドにおいてカタログスペックの燃費性能は現実的であり、常に一桁燃費に甘んじるということはなさそうです。

もっともオフロード走行でローレンジを選ぶとエンジン回転数は高まりますから、4~7km/Lあたりの燃費になるでしょう。非日常体験の燃費を気にするユーザーはほとんどいないと思いますが……。

一名乗車で、マイペースで走るとカタログ値を超える好燃費となった
オフロード走行での燃費は7.3km/Lとローレンジを使ったわりには悪くない印象

【巷の指摘④】1.2tの車重に対して101馬力はパワー不足

オフロード走行をするジムニーノマド

燃費やパフォーマンスといった点では「スポーツカーのような圧倒的な加速性能があれば、多少は燃費が犠牲になっても納得いくが、遅いのに燃費が悪いのは許せない」という巷の声もあるようです。

たしかに、ジムニーノマドの加速性能は過不足ないと思いますが、余裕があるとはいえないでしょう。「この加速性能なら、もっと燃費が良くてもよくない?」という指摘については、その通りとしかいえません。

ただし、オンロードで2WDもしくは4WDハイのギア比だけで試乗してジムニーノマドが力不足と感じているのであれば、本当の姿を見ていないともいえます。

4WDローレンジに入れたオフロード走行では、そうとう強力な駆動力を感じます。1.5Lエンジンとは思えないほどトルクフルな走りが味わえるのです。

冒頭でも触れたように、ジムニーノマドは”ジムニー”伝統のオフロード性能を重視したメカニズムであり、そうしたシチュエーションで走りを評価すべきです。そして、オフロードに持ち込んだジムニーノマドは、まさに水を得た魚のごとく走ります。

逆にいうと、オフロード走行をしない想定のユーザーは、ジムニーらしさを発揮する機会がないわけで、まさに宝の持ち腐れになる可能性があるわけです。

これはジムニーノマドに限らず、本格クロカン4WDには共通する部分ですが、街乗りオンリーでは本領発揮できないことは理解した上で購入を決断すべきです。

ジムニーノマドのコックピット

【巷の指摘⑤】5速MTはクセがつよい?

ジムニーノマド(5速MT)を試乗する筆者

これまでのジムニーを知らないユーザーも、5ドアのジムニーノマドには興味を持っているようです。そして、ジムニーノマドは今どき貴重(希少)な5速MTを設定しているモデルでもあります。

MTを運転できる免許保有者からすると「せっかくだからMTでスポーティにジムニーノマドを乗りこなすのもおもしろそう」と考えてしまうかもしれません。

もし、そう考えているのなら、購入前にジムニーノマドのMTを操作する機会をつくることを強くおすすめします。

なぜなら、ジムニーの5速MTはスポーツカーのようなフィールではなく、むしろ商用車的で、乗用車感覚だと「クセがつよい」と感じるであろうからです。

シフトレバーのストローク、クラッチペダルのストロークともに長めで、スパンスパンと操作するタイプではありません。ひとつひとつ確実に操作することを求めるタイプのシフト&クラッチとなっています。むしろダブルクラッチを使って、丁寧にシフト操作するほうがマッチしている印象です。

こうした操作性には、オフロード走行中のシフトミスを減らし、クラッチ操作の幅を広げるという設計思想が感じられます。オフロード走行を優先した設計のジムニーノマドには適切な設定と思いますが、スポーツカーのようなMTフィールを想定していると期待はずれとなってしまうでしょう。

いずれにしても、巷でいわれるジムニーノマドのウィークポイントというのは、クロカン4WDとしてのストロングポイントと表裏一体の部分があります。

「クロカン4WDといってもSUVの一種なんでしょう?」というご指摘はごもっともではありますが、乗用車の延長線上にあるクロスオーバーSUVとは、素性として異なる部分がジムニーノマドには存在していることを理解した上で、後悔のない選択をしてほしいと切に願う次第です。

ジムニーノマドの5速MT。写真手前に見えるのがトランスファーレバー
ジムニーノマドの3ペダル。クラッチは重くはないが、ストロークは長めだ

ジムニーノマド主要スペック

ジムニーノマドFC主要スペック【】内は4速AT
全長×全幅×全高:3890mm×1645mm×1725mm
ホイールベース:2590mm
車重:1200【1210】kg
サスペンション:3リンクリジッドアクスル式コイルスプリング
駆動方式:パートタイム4WD
エンジン型式:K15B
エンジン形式:4気筒 DOHC
総排気量:1460cc
エンジン最高出力:74kW(101PS)/6000rpm
エンジン最大トルク:130Nm/4000rpm
トランスミッション:5速MT【4速AT】
燃料消費率(WLTCモード):14.9【13.6】km/L
タイヤサイズ:195/80R15
車両本体価格:292万6000円

ボディカラーはシフォンアイボリーメタリック2 ブラックルーフ2トーン