コンパクトなボディに広い室内を備えたルーミー
ルーミーは、トヨタが2016年11月9日に発売したトール2BOXである。
開発コンセプトは、広々とした空間を表す「Living」と余裕のある走りを表す「Driving」を掛け合わせた「1LD-CAR(ワン・エル・ディー・カー)」。
ミニバンが持つ広い室内空間やスライドドア、多彩なシートアレンジといった特徴を取り回しやすいコンパクトなボディに取り入れることが狙いだった。
車名の「ROOMY」は、英語で「広々とした」を意味する「roomy」に由来する。その名の通り、室内空間の広さは発売当初からルーミーを特徴づける要素のひとつとなっている。
ルーミーと同時に、基本部分を共有する「タンク」も発売された。
ルーミーは「品格と艶やかさ」、タンクは「ダイナミックさとアグレッシブさ」をデザインテーマとし、それぞれ異なる個性を持たせて展開。発売時の月販目標台数は各3,750台だった。
発売から約1カ月後の受注台数は、ルーミーが約1万8,300台、タンクが約1万6,700台に達している。
ルーミーの変遷
ルーミーは2016年の発売以降、フルモデルチェンジではなく一部改良やマイナーチェンジを通じて商品力を高めてきた。
なかでも大きな変更となったのが2018年の安全装備強化、2020年のマイナーチェンジ、2026年の一部改良である。
ここでは、主な変更点を時系列で振り返っていく。
2016年|ルーミーとタンクが同時に登場


初代ルーミーは2016年11月9日に発売された。
全長は約3.7mに抑えながら、前後乗員間距離は最大1,105mmを確保。最小回転半径は14インチタイヤ装着車で4.6mとし、市街地や駐車場での取り回しにも配慮された。
後席にはスライドドアを採用し、グレードに応じて両側パワースライドドアを設定。リヤシートは240mmの前後スライドに対応し、前方へ格納すれば1,500mmを超える荷室長も確保できた。
前後席間のウォークスルーやリヤシートのダイブイン機構なども採用され、乗員の移動から荷物の積載まで幅広い使い方を想定したパッケージとなっている。
エンジンは1.0L自然吸気と1.0Lターボの2種類。
ターボエンジンは最大トルク140N・mを発揮し、トヨタは発売時に1.5Lクラス相当のトルクとして訴求していた。高速道路や坂道での加速にも配慮した設定である。
グレードはX、X“S”、G、G“S”、G-T、カスタムG、カスタムG“S”、カスタムG-Tを用意。自然吸気モデルには2WDと4WD、ターボモデルには2WDが設定された。
安全面では、5つの機能を備えた「スマートアシストII」を一部グレードに標準装備。駐車時に車両周辺を確認できるパノラミックビューなども設定されている。
コンパクトな車体と広い室内、スライドドアを組み合わせるという現在まで続くルーミーの基本的な商品性は、登場時から形づくられていた。
2018年|スマートアシストIIIで安全性能を強化

2018年11月には一部改良を実施した。
大きな変更点が、衝突回避支援システムの「スマートアシストII」から「スマートアシストIII」への進化である。
衝突回避支援ブレーキの検知対象に歩行者を追加したほか、夜間の歩行者発見を支援するオートハイビームを採用。前後の障害物を検知するコーナーセンサーも装備された。
これらの安全装備はXを除くグレードに標準設定され、安全性能の底上げが図られている。
同時にボディカラーを追加したほか、特別仕様車「G“Cozy Edition”」も設定された。
室内の広さや使い勝手といった基本部分を維持しながら、安全装備やラインアップを充実させた改良だった。
2020年|マイナーチェンジでデザインと安全装備を刷新

2020年9月15日には、発売後初となるマイナーチェンジが行われた。
外観ではフロントフェイスを変更。シート形状や表皮も見直し、内外装の印象を改めている。
安全装備も大きく進化した。
スマートアシストを全車に標準装備し、衝突回避支援ブレーキや衝突警報の検知対象に夜間の歩行者や、同じ方向を走行するバイク・自転車などを追加。全車速追従機能付アダプティブクルーズコントロールなども採用された。
快適装備では、9インチディスプレイオーディオを全車にオプション設定。ウェルカムパワースライドドアや、スマートフォンなどを充電できるUSB端子も採用している。
マイナーチェンジ後のルーミーの月販目標台数は8,700台に設定された。
また、同じ基本構造を持つタンクは2020年9月で販売を終了。以降、トヨタではルーミーが販売を継続する形となった。
2024〜2026年|安全・快適装備をさらに強化

2020年のマイナーチェンジ以降も、ルーミーには継続的な改良が加えられている。
2024年12月には一部改良を実施し、9インチディスプレイオーディオとバックカメラを全車に標準装備するなど、装備内容を見直した。
そして2026年8月31日、最新の一部改良が行われた。
予防安全機能「スマートアシスト」では、交差点右折時の対向直進車や、右左折時に対向方向から横断する歩行者への検知機能を追加。スマートアシストには14種類の予防安全機能が用意されている。
装備面では、SRSサイドエアバッグとSRSカーテンシールドエアバッグを全車に標準装備。XにはオプティトロンメーターとTFTカラーマルチインフォメーションディスプレイを新たに採用した。
また、電動パーキングブレーキとブレーキホールド、停止保持機能付きの全車速追従ACCはカスタムG-T、カスタムGに標準装備され、G-T、Gではメーカーオプションとして用意されている。
一方、2024年の一部改良で全車標準装備となった9インチディスプレイオーディオは、2026年の改良でメーカーオプションへ変更された。
発売当初からの室内空間やスライドドアといった基本的な特徴を受け継ぎながら、安全・快適装備の内容を時代に合わせて見直してきた。
ルーミーの国内販売台数から見る約10年の歩み
ルーミーは2016年11月の発売後、国内で販売を拡大してきた。
発売翌年の2017年には7万8,690台を販売。その後も2018年は8万6,265台、2019年には9万1,650台と販売台数を伸ばした。
国内販売台数の推移は以下のとおりだ。

| 年 | 国内販売台数 |
| 2016年 | 8,675台 |
| 2017年 | 78,690台 |
| 2018年 | 86,265台 |
| 2019年 | 91,650台 |
| 2020年 | 87,242台 |
| 2021年 | 134,801台 |
| 2022年 | 109,236台 |
| 2023年 | 100,800台 |
| 2024年 | 67,698台 |
| 2025年 | 95,221台 |
| 2026年(1〜8月) | 69,322台 |
※2016年は11月発売のため約2カ月分、2026年は1〜8月の累計。
2020年は8万7,242台となり、前年を下回った。同年9月にはマイナーチェンジを実施し、タンクの販売も終了している。
翌2021年には13万4,801台まで増加し、登録車の年間販売台数で2位を記録。発売から5年が経過した時点で、年間13万台を超える販売規模となった。
2022年は10万9,236台で4位、2023年は10万800台で5位。いずれも年間10万台を超えている。
一方、2024年は6万7,698台まで減少した。
この時期には、生産を担当するダイハツ工業の認証問題を受け、2023年末からルーミーの生産・出荷が停止している。2024年3月15日に国土交通省による出荷停止指示が解除され、その後3月25日に出荷、4月19日に生産を再開した。
2024年の年間販売台数は、年初に生産・出荷が停止していた期間を含む数字となっている。
2025年は9万5,221台まで回復し、登録車の年間販売ランキングでも5位となった。
2026年は8月までに6万9,322台を販売している。
約10年間の推移を見ると、年による増減はあるものの、ルーミーはフルモデルチェンジを行わず販売を継続するなかで、年間10万台を超える年も複数回記録してきた。
まとめ
ルーミーは2016年の登場以来、フルモデルチェンジを行うことなく約10年にわたって販売が続けられてきた。
その間も、全長約3.7mのコンパクトなボディに広い室内空間とスライドドアを組み合わせる基本的な考え方は変わっていない。1.0L自然吸気/ターボというパワートレーン構成も受け継がれている。
一方、安全・快適装備は時代に合わせて更新されてきた。発売時に採用されたスマートアシストIIは段階的に機能を拡大し、現在では交差点での検知や全車速追従ACC、電動パーキングブレーキなども取り入れられている。
車体やパッケージを大きく変えるのではなく、発売当初からの使いやすさを残しながら安全性や快適性を高めてきたルーミー。
2016年に掲げられた「1LD-CAR」というコンセプトは、約10年にわたる改良を経た現在のモデルにも受け継がれている。