キャストホイール&ディスクブレーキ化&エンジン一新!全面進化のスーパーカブ110、果たしてその乗り味は?

スーパーカブ90の後継として2009年に登場した110が、最新の令和2年排出ガス規制に対応するため、よりロングストロークとした新型エンジンを搭載。合わせて前後ホイールをワイヤースポークからキャストとしてチューブレスタイヤを新採用したほか、フロントにディスクブレーキとABSまで導入した。カブオーナー待望のギヤポジションインジケーターも見逃せない新装備であり、これで22,000円アップは非常に良心的だ。

REPORT●大屋雄一(OYA Yuichi)
PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)

ホンダ スーパーカブ110……302,500円

90から110に進化した際、伝統のバックボーンフレームがプレス成型から角断面パイプを採用したものへ刷新された。2012年には剛性を見直しており、新型もこれを踏襲する。
写真は2020年に追加されたパールフラッシュイエロー。この年式でテールランプが灯火類の法規制対応品となり、リフレクターがレンズ一体型から独立タイプへと変更されている。
車体色は写真のタスマニアグリーンメタリックを含む5種類をラインナップ。車重は99kgから101kgへ2kg増えているが、キャストホイール化でバネ下重量は減っているとのこと。
筆者が2021年に沖縄をツーリングしたときの写真で、車両はレンタル819で借りた。これを執筆している2022年5月現在、沖縄のホンダGOバイクレンタルにスーパーカブ110はない。

ストロークは7.5mm延びたが、8,000rpmまで元気良く吹け上がる

令和2年(平成32年)排出ガス規制に対応するため、通称〝横型エンジン〟を搭載するグロムやモンキー125、スーパーカブC125らがボア×ストロークを変更した新型パワーユニットを採用。そして、これに続くようにスーパーカブ110、クロスカブ110(くまモンバージョンを含む)やスーパーカブ110プロもエンジンが新型となった。125cc系と110cc系はともに、ボア径よりストローク量の方が大きいロングストロークエンジンではあったが、今回の法規制対応ではどちらもさらにストロークを伸ばし、奇しくも同値である「63.1mm」になったのは興味深い。

さて、今回試乗したのは、シリーズ中で最もスタンダードな存在であるスーパーカブ110だ。まずはエンジンについて。前述したようにボア×ストロークが変更されており、具体的にはφ50.0×55.6mmからφ47.0×63.1mmとなっている。さらに圧縮比が9:1から10:1へと高められているのも見逃せない(ただし指定ガソリンは無鉛レギュラーのまま)。スペックを見ると、最高出力は8.0ps/7,500rpmで新旧変わらないが、最大トルクは8.5Nm/5,500rpmから8.8Nm/5,500rpmへと微増している。なお、1次減速比と4段ミッションの各変速比は変更されているが、総減速比としては新旧でほぼ同じだ。

実際に試乗して感じたのは、全域で微振動が減っていることだ。単気筒らしい鼓動感がマイルドになっており、上品になったとすら表現できる。それでいてスロットルの動きに対するレスポンスや、レブリミットまでのパワーフィーリングは旧型と大きく変わらない。ちなみに今回、外付けのデジタルタコメーターで回転数をチェックしてみた。アイドリングは1,400rpmで、加速フィールが力強くなるのは4,000rpmを超えてから。そしてレブリミットは8,000rpm付近で、1速でそこまで引っ張ると速度計の針は40km/h弱を指す。

感心したのは、シフトフィーリングのスムーズさだ。特にミッション系の変更や改善のアナウンスはないのだが、シフトペダルを踏み込んだときのコクッという節度感や、そこからペダルを緩めて遠心クラッチがつながるときのフィーリングが旧型よりも良くなっていると感じた。この部分にコストをかけたスーパーカブC125並みといったら言い過ぎだろうが、スムーズにシフトできることの喜びや満足度は同等レベルといっていい。


芯が一本通ったような、コーナーを楽しめるハンドリングに

続いてシャシーについて。写真を見てもらえばすぐに分かるように、足回りが刷新されている。伝統のワイヤースポークホイールとドラムブレーキは、スーパーカブC125と共通デザインのキャストホイールとABS付きのフロントディスクブレーキに進化。合わせて標準装着タイヤはチューブ入りのチェンシン製C6016から、チューブレスのIRC製NF63B/NR78Yとなった。

スーパーカブは、軽い入力でスイッと曲がれる旋回力の高さを持っており、そのイメージは新旧で大きく変わらない。新型は、ハンドルへの入力から旋回に移行するまでのタイムラグが短くなっている印象で、スポーティと表現するほどではないが、明らかにレスポンスが向上している。さらに旋回中のバンク保持性も高く、芯が一本通ったような安定感があり、コミューターでありながらワインディングロードが楽しいとすら感じた。

乗り心地に関しては、キャストホイール化によってワイヤースポーク時代の衝撃吸収性が減じられるのではと予想したが、チューブレス化が効いているのか、むしろタイヤがしっかりと仕事をしている印象だ。さらに、見直されたというサスセッティングもあり、快適な長距離ツーリングが楽しめるだろう。

ブレーキについては、やはりフロントのディスク化の効果は絶大だ。ドラムでも十分という意見は根強く、筆者もかつてはそう思っていたが、旧型で大量の荷物を積んだり、またはタンデムをすると制動力不足がすぐに露呈する。新型のフロントブレーキは、ディスクの中ではファジーなタッチであり、ドラムの旧型から乗り換えても違和感のないもの。それでいて握り込めば高い制動力を発揮してくれるうえ、新たにABSが採用されたこともあり、安心感は圧倒的といっていい。

さて、忘れてはならないのが新型のメーターだ。待望のギヤポジションインジケーターが採用されたことで、長年の「いま何速に入っているか?」問題が解消された。さらに平均燃費計も、燃費を気にするであろう多くのカブ乗りにとって有益な情報と言えよう。

これだけ進化していながら車両価格は22,000円アップに過ぎず、ついに30万円の大台をオーバーしたとはいえ、内容を考慮すればバーゲンプライスと断言できる。直近の旧型を乗っているオーナーは急いで買い換える必要はないが、これからスーパーカブ110を買おうと思っている人には迷わず新型をオススメする。


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著者プロフィール

大屋雄一 近影

大屋雄一

短大卒業と同時に二輪雑誌業界へ飛び込んで早30年以上。1996年にフリーランス宣言をしたモーターサイクル…