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ホンダ・スーパーカブ110……302,500円
時代に合った進化を果たしていた
スタイリングデザインの基本は65年前に初登場したC100から大きく変わっていません。ひと目でスーパーカブと認知される普遍的なボディデザインにほっとする人は多いんじゃないでしょうか。いままでに何度となくモデルチェンジされていても、その独自のフォルムに表現されたコンセプトは一貫しているのです。もちろんそれは最新型も変わりありません。 しかし今回のモデルチェンジでは外観に変化がありました。まず大型の荷台はブラック塗装されました。荷台というより大型リアキャリアと呼んだほうがピッタリの雰囲気になってます。さらに伝統的に採用していたワイヤースポークホイールですが、これがなんとC125同様のキャストホイールになってしまいました。古いタイプのライダーにはかなり衝撃的じゃないでしょうか。そしてタイヤもついにチューブレスが装着となりました。耐パンク性でいえばうれしい変更ですね。さらにさらに、フロントブレーキがABS装備のディスクブレーキとなりました。世界的な安全基準を満たすために採用したものだと思いますが、外観性はともかく、安全性が高められたのは喜ばしいことですね。このように、今回のモデルチェンジはかなり大幅な変更が加えられたのが特徴的です。それまで日本国内では、スーパーカブは実用車という見方、使い方がされてきましたが、最新型ではレジャーバイク的な要素が強くなったと感じました。 跨ってポジションをとったときの感覚は従来型と変わりありません。コンパクトなボディは相変わらず抜群の足つき性を実現しています。しかも180㎝近い長身のボクが乗車しても窮屈なところはありません。前後サスペンションの初期作動も柔らかくて、シートにドッカリと腰を下ろした瞬間、なんともいえない安心感に包まれます。「座る」という独特の乗車姿勢もリラックスできる要因なのかもしれません。
始動方式はセル、キック併用式。まあいまの時代わざわざキックで始動することはないと思いますが、キックでの始動も可能というのは、昔からのバイク乗りであるボクのような熟年ライダーにはうれしいものです。それに、万が一バッテリー電圧が落ちてきてセルが回らなくても、キックでエンジンが掛けられるというのは心強いんじゃないでしょうか。
そんなわけで新型スーパーカブ110のエンジンをセルで始動します。相変わらず静かな排気音が放たれるので近所迷惑になりません。シーソー式のチェンジペダルを前方に踏み込んで1速に入れます。従来ではガクンと車体が挙動するほどショックがあったのですが、新型はショックが少なくなっている感じです。しかもギアの入りがとても良くなっていますし、いわゆるギア抜けも起きなくなっていました。これは進化ですね。
走りだしてすぐに感じたのが、回転フィーリングが滑らかになっていて、レスポンスも一段とスムーズになっていたことでした。全体に上質になった印象で、高回転での頭打ち感も少なくなっています。なのでエンジンに伸びがあるように感じて、高回転まで回すことにためらわなくなりました。従来型と実際に競走したわけじゃないので明確なことはいえませんが、おそらく加速性能は良くなっていると思います。体に伝わる鼓動もいい感じになっています。
スーパーカブ110のフィールドである市街地では、60㎞/h程度までの加速や速度が常用ですが、そうした領域で力強さを発揮してくれるようになっていたので、頼もしさがアップしました。もちろんツーリングでもこうした速度域がメインになりますから、気持ちよく走ることができるはずです。
新型スーパーカブ110における最大の変更点は、ロングストローク化した新設計エンジンを導入したことです。従来型はボア×ストロークが50.0×55.6mmだったものが、新型では47.0×63.1mmとなりました。最高出力は変わらないものの最大トルクは8.5から8.8Nmへとアップしています。わずかな差のように思えますが、実走ではそれが数値以上に効果を発揮していることが理解できるのです。しかも燃費まで向上しているというのですからうれしい限りです。
キャストホイールにチューブレスタイヤの採用で大きく変わった足回りですが、特段乗り心地が悪くなったわけじゃないし、走りが劇的に改善されたようなこともありません。厳密に比較すれば、スポークホイールのようにホイール自体が衝撃を吸収するわけじゃないので、若干は硬めの乗り味になるのかもしれませんが、サスペンションの設定である程度補っているんじゃないかと思います。またタイヤも異なっているので、その特性に左右される部分もあると思います。いずれにしても、攻め立てて走るようなバイクじゃないので、ちがいは大同小異といったところです。ハンドリングに関しても、わずかにバンキング操作がシャープになったかな?といった程度で、仮に従来型と峠道で競走したとしても、ほとんど差は出ないと思います。それよりもパンクへの不安が大きく減ったことのほうが効果が大きいと思います。万が一パンクした場合にも一気にタイヤがペチャンコになることはないし、補修キットで簡単に修理できるので心強いですね。 ABS装備のシングルディスクブレーキも、レバータッチ、効きともに良好で、ドラムブレーキとはかなりフィーリングがちがいます。好みは別れるでしょうが、たしかに安全性は高まっていて、安心してブレーキレバーを握り込むことができます。 新しくなったメーターにはデジタルディスプレイが内蔵されています。サイズ的には従来型のアナログメーターと変わりませんが、ギヤポジションが表示されるようになりました。さらにディスプレイには、燃料残量が常時表示されるほか、オド/トリップ、時計、平均燃費が切り替え表示できるようになっていて、実に便利になりました。街中での普段使いはもちろん、ツーリングでも大いに役立ってくれるはずです。 新型エンジンを導入するとともに装備を充実させて性能アップした新型スーパーカブ110は、上級モデルにあたるC125に近づいたという印象を受けました。しかもこれだけたくさん変更して価格は22000円アップにとどめたのは立派。これでまた新たなカブ主が増えそうですね。
主要諸元
車名・型式 ホンダ・8BJ-JA59 全長(mm) 1,860 全幅(mm) 705 全高(mm) 1,040 軸距(mm) 1,205 最低地上高(mm) 138 シート高(mm) 738 車両重量(kg) 101 乗車定員(人) 2 燃料消費率(km/L) 国土交通省届出値:定地燃費値(km/h) 68.0(60)〈2名乗車時〉 WMTCモード値 67.9(クラス 1)〈1名乗車時〉 最小回転半径(m) 1.9 エンジン型式 JA59E エンジン種類 空冷4ストロークOHC単気筒 総排気量(cm³) 109 内径×行程(mm) 47.0×63.1 圧縮比 10.0 最高出力(kW[PS]/rpm) 5.9[8.0]/7,500 最大トルク(N・m[kgf・m]/rpm) 8.8[0.90]/5,500 燃料供給装置形式 電子式〈電子制御燃料噴射装置(PGM-FI)〉 始動方式 セルフ式(キック式併設) 点火装置形式 フルトランジスタ式バッテリー点火 潤滑方式 圧送飛沫併用式 燃料タンク容量(L) 4.1 クラッチ形式 湿式多板ダイヤフラムスプリング式 変速機形式 常時噛合式4段リターン 変速比 1速 3.142 2速 1.833 3速 1.333 4速 1.071 減速比(1次/2次) 3.421/2.500 キャスター角(度) 26°30´ トレール量(mm) 73 タイヤ 前 70/90-17M/C 38P 後 80/90-17M/C 50P ブレーキ形式 前 油圧式ディスク(ABS) 後 機械式リーディング・トレーリング 懸架方式 前 テレスコピック式 後 スイングアーム式 フレーム形式 バックボーン