電動キックボード、新宿の歩行者天国に進出!「自転車安全利用TOKYOキャンペーン」|同じ電動キックボードでも、「買った場合」と「シェアリング」では、ヘルメット着用有無のルールが違う

新しいモビリティの走り方を盛り込んだ改正道交法の2年以内施行に向けて、電動キックボード関係者の動きが活発です。事業者の団体の1つは、警視庁主催の交通イベントでデモ走行に臨みました。「まずは知ってもらうこと」とPRに力を注ぎます。
東京・新宿通り 日曜の歩行者天国で初の電動キックボードデモ走行 撮影=中島みなみ

周知期間は約2年、ルールの浸透の難しさ

 5月29日午前、東京・新宿区の歩行者天国で自転車利用者を対象にした交通安全イベント「自転車安全利用TOKYOキャンペーン」が開催されました。新宿駅東口交差点から新宿通り約200メートルの道路を会場に、子供から高齢者までの幅広い自転車利用者に向けたイベントでした。主催は警視庁新宿署と新宿交通安全協会。協力した団体の1つが「日本電動モビリティ推進協会」(JEMPA)でした。

 JEMPAは電動小型モビリティの製造販売する事業者で構成され、glafit(グラフィット)、SWALLOW(スワロー)、FreeMile(フリーマイル)の3社が、立ち乗り型の電動キックボードや自転車のミニサイクル自転車のような電動小型モビリティを道路に展示、デモ走行を実施しました。

歩行者天国にテントを張って試走

 電動キックボードなど新しいモビリティは、今年4月に公布された改正道路交通法で「原動機付自転車」の中でも免許不要な「特定小型原付」に位置付けられました。しかし、法律が効力を持つ施行まで2年以内と定められ、実現はまだまだ先の話です。この期間は改正内容の周知期間と定めて、関係省庁も関連法令の整備を急いでいます。そして、製造販売の事業者にも新しいモビリティへの理解を広げなければ、という焦りがあります。

電動キックボードも原付登録と自賠責加入が必要。でも、個人所有とシャアリングで借りた場合の交通ルールは違う 撮影=中島みなみ

 JEMPA事務局は、こう話します。
「法案が成立したこともあり、電動キックボードをはじめとした新しいモビリティの関心は高くなっている。ただ、ヘルメット、免許なしで、今すぐにでも公道走行できるのではないか、と誤解している人もいれば、そもそも電動キックボードって、どんな乗り物っていう人もいて、その理解は人それぞれ。実際に車両を見てもらって、現行法ではこういう形で適法に乗ることができる、将来の改正法ではこんなふうに乗れるという正しい認識を広げていきたい」

 今の道交法で電動キックボードを買った場合は、原動機付自転車として登録して、原付バイクと同じ交通ルールで走らなければなりません。車道の左端を走行、ヘルメット着用、二段階右折です。

警察官に説明する事業者。誰にとっても新しいモビリティはわからないことだらけ。取り締まられているわけではない。撮影=中島みなみ

 一方、シェアリングで事業者から車両を借りた場合は、買った場合と同じ立ち乗り型の電動キックボードでも、原付バイクではなく「小型特殊」とほぼ同じ交通ルールで走ることが求められます。そのためヘルメットなしOK、乗用車と同じ小回り右折です。両者には大きな違いがありますが、2年以内に予定される改正法では「特定小型原付」という新しいルールで一本化され、要件を満たせば歩道も走ることができるようになります。

 ただ、ルールが一本化された後も課題があります。
「今はどちらも運転免許が必要ですが、改正法が施行された後は16歳以上であれば誰でも乗れるようになります。誰も知らなかったことを誰が教えるのか。私たちも安全教育を担っていかなければならないのですが、それだけではとても理解は広がらないと思います」(前同)

自転車事故をスタントマンが実演するスケアード・ストレートではバイクと自転車の衝突事故も再現された 撮影=中島みなみ

自転車安全教育の中で乗り方体験も

 「自転車安全利用TOKYOキャンペーン」では、自転車事故をスタントマンが実演するスケアード・ストレートや都バスに乗車体験して運転士の死角を実感する車両展示なども行われました。

 新宿アルタ前で実施されたスケアード・ストレートでは小さな子供らも参加し、大型車の内輪差の体験なども行われました。また、自転車の右側通行が原因となる衝突事故なども再現され、注意が促されました。

 改正法施行後は、今は免許保持者しか運転できない電動キックボードなどが自転車のように乗れるようになります。交通安全イベントにも電動キックボードの乗り方が登場するかもしれません。

「今までほとんどなかった新しい乗り物なので、乗って体験してもらってわかってもらうことがいちばんだと思う。今後もこうしたイベントに参加させてもらえるのであれば、ぜひ試乗体験も実施させてもらいたい」(JEMPA事務局)

 クルマ、バイク、自転車に続き、電動キックボードが人々の移動を変える手段となるのでしょうか。試行錯誤が続きます。

(文・写真 中島みなみ)

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