ホンダXL750トランザルプ E-Clutch……1,430,000円

海外では3色のボディカラーを展開するXL750トランザルプだが、2026年型の日本仕様はマットバリスティックブラックメタリックのみで、従来型に存在したロスホワイトの設定はナシ。

ライバル勢とは異なる資質

近年の二輪の世界で最も活況を呈しているジャンルは、アドベンチャーツアラーである。

それは1000cc以上に限った話ではなく、600~900ccクラスもかなり充実していて、フロントタイヤが21インチのモデルに限っても、BMW F900GS、ドゥカティ・デザートX、トライアンフ・タイガー900ラリープロ、KTM 890アドベンチャー/R、790アドベンチャー、ハスクバーナ・ノーデン901、スズキVストローム800DE、ホンダXL750トランザルプ、ヤマハ・テネレ700、アプリリア・トゥアレグ660など、10機種以上が販売されている。

ではそれらの中で、当記事で紹介するXL750トランザルプがどんな特徴を備えているのかと言うと、最大の魅力はフレンドリーさだと思う。

具体的な話をするなら、このバイクはアドベンチャーツアラーの試乗で僕が通例にしている、頭と身体のアジャストを必要とせず、オンロードモデルと大差ない感覚で走り出せるし、車格は決して小さくないのに、前輪の細さや適度な重心の高さなどのおかげで、ハンドリングはヒラヒラ軽快なのだ。

その感覚は峠道でも同様で、21インチの前輪とアドベンチャーツアラー特徴である豊富なホイールトラベルは、舗装路のコーナリングでは足を引っ張る要素になることが珍しくないのに、やっぱりこのバイクはオンロードモデルと大差ない感覚で気持ちのいい旋回ができる。

絶妙なサジ加減

そしてそこまで舗装路が楽しいとなると、悪路走破性に疑問を持つ人がいるだろう。でもフロント:200mm/リア:190mmのホイールトラベルを確保しているだけあって(オンロードバイクの定番は120~140mm近辺)、このバイクは未舗装路も相当にイケるのだ。

もちろん絶対的な悪路走破性は、さらにホイールトラベルが長いライバル勢に及ばないはずだが、一般的な林道を一般的なペースで走るぶんには至って快適だし、アドベンチャーツアラーの基準では多めとなる43度のハンドル切れ角のおかげで、Uターンも比較的容易に行える。

つまりXL750トランザルプは、一般的なライダーにとって十分な悪路走破性を備えながらも、オフロードに注力しすぎていないモデルなのだ。その絶妙なサジ加減は車体寸法に表れていて、他社のライバル勢と比較すると、前後ホイールトラベルはやや短く、シートはやや低く、車重は軽めの部類。

以下の表を見れば、このモデルの資質が理解できるだろう。

KTM 890アドベンチャーとハスクバーナ・ノーデン901の数値は、790アドベンチャーとほぼ同じなので省略。また、F900GSとデザートXの日本仕様はローダウンモデルで、本来のシート高は、F900GS:870mm、デザートX:880mm。

Eクラッチとの相性は抜群

クランクケース右側に備わるEクラッチのユニットは、CB/CBR650Rやレブル250・CL250が採用していた従来型とは似て非なる構成。

さて、素性を記していたら意外に長い文章になってしまったけれど、2026年型XL750トランザルプは新機構として、左手の操作がほぼ不要となるEクラッチを導入した(オーソドックスなマニュアクラッチ仕様は廃止)。

なおEクラッチは、すでにCB/CBR650Rやレブル250・CL250などで定評を得ている技術だが、電子制御式スロットルと組み合わせるのはこのモデルが初で、ホンダのプレスリリースによると、既存のケーブル式スロットルとは一線を画するスムーズなクラッチの断続とギアチェンジが可能になったとのこと。

また、リフト機構を1→2軸化し、アクチュエーターを前方に配置することで、システムのコンパクト化も実現したと言う。

ただし僕自身は、必ずしもEクラッチ礼賛派ではなく、過去に体験したこの機構の採用車では、レブル250に好感を抱く一方で、CBR650Rには必然性を感じなかった。ではXL750トランザルプはどうかと言うと……。

前述したフレンドリーさがマシマシという印象で、バイクのキャラクターに合っていると思った。もちろん他社のライバル勢と比較するなら、Eクラッチはさらなるアドバンテージになるに違いない。

しかもそれでいて、現代の600~900ccアドベンチャーツアラーの中では、XL750トランザルプの価格は安いのである(前述したライバル勢の中で、XL750トランザルプの価格を下回るのは、139万7000円のVストローム800DEのみ)。

もっとも近年の二輪の世界の流行を考えると、他メーカーの600~900ccアドベンチャーツアラーも、今後は自動クラッチ/オートマチック機構を導入する可能性はあるのだが、実際に導入を行うとライバル勢の価格は現状の+10万円前後に上昇するはず(Eクラッチに加えて、フルアジャスタブル式前後ショックとスキッドプレートを採用した2026年型XL750トランザルプの価格は、2025年型+16万5000円)。

そういった事実を考えると、価格の安さを含めたフレンドリーさという面で、このモデルの優位は今後も揺るがないだろう。

日本仕様のアドベンチャーツアラーは、着座位置を低めに設定することが多いホンダだが、XL750トランザルプの850mmというシート高は海外仕様と同じ。もちろん、ディメンションやサスストロークも同じである。

ライディングポジション(身長182cm・体重74kg)

近年のミドル以上のアドベンチャーツアラーの基準で考えると、足着き性は良好な部類。ただし一般的なオンロードバイクの基準だと、シートは高めの850mmなので、身長170cm以下のライダーは適度な不安を感じるだろう。そういった問題を解消するべく、ホンダでは純正アクセサリーパーツとして、着座位置が30mm低くなるローシートを設定している。

ディティール解説

当初は1灯式だったヘッドライトが、2灯式に変更されたのは2025年型から。センターにダクトを備えるスクリーンの素材は、バイオエンジニアリングプラスチックのDURABIO。
5インチTFTディスプレイは、近年のホンダの定番品。基本ライディングモードはスポーツ/スタンダード/レイン/グラベルの4種類で、その他にパワー・エンブレ・トラコン・ABSを好みの設定にできるユーザーモードが存在。
左右スイッチボックスも、近年のホンダ車の定番品。ライディングモードの設定も含めて、TFTディスプレイ内の操作は左側のMODEボタンと十字ボタンで行う。クルーズコントロールの設定はナシ。
シートはオンロードバイク的なデザイン。荷物積載に役立つグラブバー+リアキャリアは、ツーリングライダーにとっては嬉しい装備だ。
シート下に収納スペースは存在しないものの、ETC2.0ユニットは標準装備。
ステップラバーは脱着式で、取り外すとギザギザが刻まれたオフロードタイプのバーが現れる。シフトロッドの途中にはクイックシフター用のセンサーを設置。
ホンダ独自のユニカムOHCヘッドを採用した並列2気筒エンジンは、91ps/9500rpm、7.6kgf-m/7250rpmを発揮。クランク位相角は270度で、振動を緩和するバランサーは2軸式。
従来型の前後ショックは調整機構がプリロードのみだったが、2026年型は前後とも伸圧ダンパーの調整が可能となった。
純正指定タイヤは、メッツラー・カルーストリート(写真)と、ダンロップ・ミックスツアーの2種。フロントブレーキはφ310mmウェーブディスク+片押し式2ピストンキャリパー。
リアブレーキはφ256mmディスク+片押し式1ピストンキャリパー。メイン部にスウェージング加工を施したアルミスイングアームは専用設計で、リアサスはボトムリンク式。

主要諸元

車名:XL750トランザルプ E-Clutch
型式:8BL-RD16 
全長×全幅×全高:2325mm×840mm×1455mm
軸間距離:1560mm
最低地上高:195mm
シート高:850mm
キャスター/トレール:27°/110mm
車両重量:216kg
エンジン形式:水冷4ストローク並列2気筒
弁形式:ユニカムOHC4バルブ
総排気量:754cc
内径×行程:87mm×63.5mm
圧縮比:11
最高出力:67kW(91ps)/9500rpm
最大トルク:75N・m(7.6kgf・m)/7250rpm
始動方式:セルフスターター
点火方式:フルトランジスタ
潤滑方式:ウェットサンプ
燃料供給方式:フューエルインジェクション
トランスミッション形式:常時噛合式6段リターン
クラッチ形式:湿式多板コイルスプリング
ギアレシオ
 1速:3.000
 2速:2.187
 3速:1.650
 4速:1.320
 5速:1.096
 6速:0.939
1・2次減速比:1.777・2.812
フレーム形式:ダイヤモンド
懸架方式前:テレスコピック倒立式φ43mm
懸架方式後:プロリンク式モノショック
タイヤサイズ前:90/90-21
タイヤサイズ後:150/70R18
ブレーキ形式前:油圧式ダブルディスク
ブレーキ形式後:油圧式シングルディスク
使用燃料:無鉛レギュラーガソリン
燃料タンク容量:16L
乗車定員:2名
燃料消費率 国土交通省届出値:34.5km/L(2名乗車時)
燃料消費率WMTCモード値・クラス3-2:22.7km/L(1名乗車時)