琥珀色の世界に映える黄色い車たち

© 2026 WBEI

『ドラッグストア・カウボーイ』(1989年)で注目を集め、『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』(1997年)と『ミルク』(2008年)でアカデミー賞にノミネート、『エレファント』(2003年)でカンヌ国際映画祭パルムドールと監督賞を受賞した、現代アメリカを代表する名匠ガス・ヴァン・サント。『ドラッグストア~』と同じく、彼が“アメリカで最も美しい街”と語るポートランドを主な舞台にした『マイ・プライベート・アイダホ』は、日本でも青春映画の金字塔として幅広い世代に愛され続けている名作です。

リヴァー・フェニックスが演じるのは、緊張すると突然意識を失ってしまうナルコレプシー(睡眠障害)を抱える青年マイク。彼は12歳の時に母親に捨てられて故郷のアイダホを離れ、ポートランドの路上で体を売って暮らしています。

かたやキアヌ・リーヴス演じるスコットは、ポートランド市長の息子で何不自由なく育つものの家庭に温かさを感じられず、放蕩生活を送っていました。街で出会った二人は、マイクの母をイタリアに訪ねるなど行動を共にするのですが、やがてそれぞれの道を歩むことになり――。

Norton Commando 750

男娼として生きる二人の友情を軸にアメリカの姿を見つめ直し、“家”への回帰と青年の挫折・成長を詩的に、ファンタジックに描いた本作。キアヌが駆る黄色いタンクのノートン・コマンド750が劇中でもっとも印象的な“乗り物”ですが、どこか浮世離れしたような車たちも見逃せません。

まず印象的に登場するのが、ウド・キア演じるドイツ人セールスマンのハンスが乗る真っ黄色の1975年製メルセデス・ベンツ300D。マイクは彼の執拗な誘いを断るのですが持病で意識を失い、ポートランドまで運ばれます。続いて登場するパトカー(1982年製のシボレー・マリブ)もなぜか薄っすらと黄色で、なんだか夢と現実の境が曖昧になってきます。

マイクの母に会うためイタリアのローマに向かった二人が乗るタクシーは、これまた黄色の1988年製フィアット・ティーポ。しかし二人が決別した後に登場するのは、1991年製の黒いキャデラック・ブロアム、シャンパンゴールドの1985年製キャデラック・ドゥビル。そしてラストシーンに映るのはチェッカーの1978年製タクシーキャブなのですが、なぜかボロボロの赤色で……。

リヴァーが着る褪せたオレンジ色のハンティングコートや、キアヌが着る紺や茶のコーデュロイジャケット、映画全体を覆う琥珀色の色彩感覚と併せて、乗り物の色に注目してみるのも面白いでしょう。そうそう、レッド・ホット・チリ・ペッパーズのフリーの個性的な演技も必見です。

『マイ・プライベート・アイダホ』公式サイト・アイダホ』

画像コピーライト:© 2026 WBEI