標準仕様でも330hp級を発生し、7000rpm付近で最高出力を発生。さらに7500rpm近くまで回る高回転型の性格を持つ
2000年代後半、自動車業界では大排気量の自然吸気エンジンから、小排気量ターボへと向かう流れが徐々に強まり始めていた。
そんな時代に登場したのが、日産の3.7L V6自然吸気エンジン「VQ37VHR」である。

2007年に発表され、2008年モデルのインフィニティ「G37クーペ」から本格展開されたVQ37VHRは、高回転まで一気に吹け上がるレスポンスと、自然吸気ならではのフィーリングを追求。

そのルーツとなる「VQ」シリーズ自体も、自動車史に残るエンジンである。米国の「Ward’s 10 Best Engines」では1995年から2008年まで14年連続で選出されるという実績を残した。VQ37VHRは、そのVQシリーズを大排気量・高性能化した集大成のひとつといえる存在である。
搭載車は「370Z(日本名:フェアレディZ)」をはじめ、インフィニティ「G37」「Q50」など幅広く、日本では2代目三菱「プラウディア」にも採用された。

VQ37VHRの大きな特徴が、高回転型自然吸気エンジンならではのレスポンスである。搭載車や仕様によって最高出力は異なるが、日本仕様のZ34型フェアレディZでは最高出力336ps/7000rpmを発生。そして高性能版の「フェアレディZ NISMO」では、VQ37VHRにNISMO専用チューニングを施し、最高出力を355ps/7400rpm、最大トルクを374Nm/5200rpmまで高めていた。
左右バンク独立の等長フルデュアルエキゾーストシステムや専用ECMなどによって性能を引き上げたもので、VQ37VHRが持つ高回転型自然吸気エンジンとしてのキャラクターをさらに際立たせた仕様だった。
その性能を支えた技術のひとつが、可変バルブイベント&リフト機構「VVEL」である。アクセル操作に応じて吸気バルブのリフト量を連続的に制御することで、スロットルバルブへの依存を減らしてポンピングロスを低減。同時にアクセル操作に対するレスポンスを高めている。
さらにCVTCS(連続可変バルブタイミング制御)や左右対称デュアル吸気システムなどを組み合わせ、高回転域まで淀みなく回る特性を実現した。
VQ37VHRが登場した当時は、V8エンジンを搭載する高性能車もまだ数多く存在していた。排気量や気筒数では及ばないVQ37VHRだが、仕様によっては当時の一部V8エンジンに迫る最高出力を実現。3.7LのV6自然吸気でありながら、大排気量V8と比較できるほどの性能を引き出した点も、このエンジンの技術的な見どころであった。
ただし、VQ37VHRの魅力を最高出力だけで語ることはできない。ターボやスーパーチャージャーといった過給機を使わず、VVELなど高度な可変機構によって性能を引き出したことに大きな特徴がある。
アクセルを踏み込むと回転数が即座についてくるダイレクトな感覚。そして低回転域から高回転域までパワーが自然に立ち上がり、回せば回すほど力強さを増していくフィーリングは、現在の高性能ターボエンジンとは異なるものだった。
また、過給機を必要としない自然吸気方式という点もVQ37VHRの個性である。VVELをはじめとした複雑な制御機構を備えるため、単純に「シンプルなエンジン」とはいえないが、現在でも耐久性を評価するオーナーは多く、高走行の個体が存在することもVQ37VHRの息の長さを物語っている。
現在の日産「フェアレディZ」は、3.0L V6ツインターボ「VR30DDTT」を搭載している。排気量を3.0Lへ縮小しながら、過給機によって大幅にパワーを高めるという、まさに現代的な高性能エンジンである。
一方で、VQ37VHRが今なお多くのファンから支持される理由は、絶対的な最高出力だけではない。アクセルを踏み込んだ瞬間の鋭いレスポンス、7000rpmを超えてなお回転を上げていく爽快感、そしてドライバーの右足とエンジンが直結したような自然なフィーリング。これこそがVQ37VHR最大の魅力であった。
電動化とダウンサイジングターボが主流となった現在、新たな大排気量・高回転型の自然吸気V6が登場する可能性は高くない。だからこそVQ37VHRは、VQシリーズが長年積み重ねてきた技術の到達点であると同時に、自然吸気スポーツエンジンが輝いていた時代を象徴する一基といえる。
フェアレディZをはじめ数々のモデルを支えた3.7L V6。その数字以上に濃密なフィーリングこそ、VQ37VHRが今なお「名機」と呼ばれる最大の理由なのである。






