アウディが狙う新市場は「Gクラス」の世界

アウディが、ブランドの新たな方向性を示す可能性を秘めたSUVの投入を検討している。ターゲットとなるのは、メルセデス・ベンツ「Gクラス」やランドローバー・ディフェンダー、レクサスGXなどが君臨する本格クロスカントリーSUV市場である。

アウディ 新型オフローダー 予想CG

これまでアウディのSUVといえば、Qシリーズを中心にオンロード性能や高速巡航性能、先進技術を武器としてきた。しかし近年は世界的に本格オフローダー人気が高まり、プレミアムブランド各社も新たな成長市場として注目している。

アウディ 新型オフローダー 予想CG

そうしたなか、アウディは2026年3月、本格オフローダーの検討していることを明らかにしており、従来とは異なる新カテゴリーへの参入が現実味を帯び始めている。 

そんな構想をもとに制作した予想CGを公開したのが、提携するレンダリングアーティストのNikita Chuyko氏である。

Concept Cのデザインを本格オフローダーへ落とし込む

CGのベースとなったのは、アウディが将来のSUVデザインの方向性を示すスタディモデルとして公開した「Concept C」のデザイン言語だ。フロントフェイスを中心に、シャープなライティングや立体感のある面構成など、そのエッセンスを取り入れながら、スクエアなボディと高い悪路走破性を感じさせるプロポーションへと発展させている。

フロントには極薄のLEDデイタイムランニングライトと大型グリルを配置し、その下にはブラックアウトされた縦型インテークを採用。ワイドなフェンダーや大径オールテレーンタイヤ、大型スキッドプレートを組み合わせることで、従来のQシリーズとは一線を画す力強いスタイルを表現している。

リヤには背面スペアタイヤを装着し、縦型LEDテールランプや高い最低地上高を採用。Gクラスやディフェンダーを思わせる本格オフローダーらしいディテールを備えながらも、ライティングデザインや面構成にはアウディらしい先進性が盛り込まれており、「もし市販されたら」と期待を抱かせる完成度となっている。

もちろん、このCGはあくまでイメージであり、アウディが正式に公開したデザインではない。しかし、新世代デザイン言語を本格クロスカントリーSUVへ落とし込んだ姿としては違和感がなく、将来のアウディがこのカテゴリーへ参入した場合の方向性をイメージさせる仕上がりとなっている。

この計画で注目すべきなのは、デザインだけではない。最大のポイントは、その技術的な実現性にある。

仮にアウディが本格オフローダー市場へ参入する場合、最大の鍵を握るとみられているのが、フォルクスワーゲングループ傘下の新ブランド「Scout(スカウト)」だ。

Scoutは北米市場向けに、ラダーフレーム構造を採用した本格SUVとピックアップトラックを開発中で、EVに加えて発電用エンジンを搭載するレンジエクステンダー仕様も計画している。悪路走破性を重視した専用シャシーやデフロック機構など、本格クロカンに必要な技術を一から開発しており、将来的にはグループ内ブランドへ技術が他ブランドへ展開される可能性も十分考えられる。

もしScoutのプラットフォームやシャシー技術を活用し、その上にアウディ独自のデザインや最新のデジタルコックピット、「quattro」で培った四輪駆動制御技術を組み合わせることができれば、ゼロから専用車を開発するよりも効率よく競争力の高いフラッグシップSUVを生み出せる可能性がある。開発コストを抑えながら新たな市場へ参入できる点でも、グループ戦略として理にかなったアプローチと言える。

プレミアムSUV市場の次なる戦場になるのか

一方、このカテゴリーを狙っているのはアウディだけではない。BMWもGクラス対抗となる本格クロスカントリーSUVを検討していると報じられており、プレミアムブランド各社がこれまで手薄だったオフロード市場へ本格的に目を向け始めている。高級SUV市場が成熟するなか、「悪路も走れるプレミアムSUV」は新たな競争軸になりつつある。

これまでのアウディは、洗練されたオンロード性能や高速安定性、先進技術を武器にプレミアムSUV市場を切り開いてきたブランドである。しかし、本格クロスカントリーSUVへの参入が実現すれば、そのブランドイメージは大きく変わることになる。

現時点ではまだ構想段階であり、市販化が決定したわけではない。それでも、Scoutという現実的な技術基盤が存在することで、この計画は単なる夢物語ではなくなりつつある。もしアウディが本格オフローダー市場へ本格参入すれば、「アウディ版Gクラス」は同ブランドの新たなフラッグシップとして、プレミアムSUV市場に大きなインパクトを与える存在となるかもしれない。