ヒョースン・GV125Xロードスター……682,000円





本領発揮は7500rpmから。刺激的なエンジンにシビれる

原付二種と呼ばれる125ccクラスには、日常の足として活躍するスクーターから、趣味性に特化したMTモデルまで存在し、バリエーションの豊富さでは大排気量クラスに引けを取らない。その中でもひときわ異彩を放っているのが、ヒョースンの「GV125Xロードスター」だ。
後発のGV250Xロードスターとは、全長やホイールベース、タイヤサイズ、サスペンション、ブレーキなど車体の基本構成をほぼ共通としており、ピンクナンバーに違和感を覚えるほど車格は立派。しかも、細部まで眺めていくと全体の質感が非常に高い。およそ70万円という価格を最初に知ったときは正直驚いたが、実車に触れるうち、「ここまで作り込んでいるなら、むしろ納得できるのでは?」と思うようになった。コストパフォーマンスが重視されがちな原付二種クラスだが、こうして贅を尽くしたプレミアム路線があっても決して悪くない。
搭載されているエンジンは124.7ccの水冷60度V型2気筒SOHC3バルブ。ほぼ単気筒で占められている125ccクラスにおいて、Vツインというだけでもかなり珍しい。1気筒あたりの排気量は約62cc。これは250ccの4気筒エンジンとほぼ同じである。

アイドリング時のサウンドは、まるで小太鼓を細かく連打しているような連続的なもの。一般的な125cc単気筒とも違えば、大排気量Vツインの「ドッドッドッ」という重々しい鼓動とも違う。まず音からして、このエンジンは普通ではない。
発進は3000rpm、できれば4000rpm以上でクラッチをつないだ方がスムーズだ。ホンダのCT125・ハンターカブのように、スロットルを開けた瞬間からスタタタッと元気よく前へ出るタイプではない。172kgという250ccクラス並みの車重に加え(ハンターカブの車重は118kgだ)、120/80-16、150/80-15というワイドタイヤの転がり抵抗も少なからず影響しているのだろう。

ところが、回転計の針が7500rpm付近を越えると様相が一変する。そこからレッドゾーンの始まる1万400rpm付近までが、筆者の感覚では明確なパワーバンドだ。1速でレッド付近まで引っ張ればメーター読み約38km/h、2速なら約58km/h。ギヤを一段ずつ使い切りながら、次のパワーバンドへ放り込んでいく。
そのとき耳に飛び込んでくるのは、体感的には2万rpmぐらい回っているのではないかと思うほど高周波なVツインサウンドだ。そして、回転を落とせば途端に勢いが鈍るので、パワーバンドを外さないよう積極的にギヤを選ぶ必要がある。この小さなVツインを「レーシングエンジンみたいだ」と感じたのは、絶対的な速さではなく、こうした乗り手を急かすような性格ゆえである。
ベースとなったGV125Sボバーは9.9kW(13.5PS)/10250rpm、10.17Nm/9250rpm。それに対してGV125Xロードスターは10.3kW(14.0PS)/10000rpm、10.7Nm/8000rpmと、最高出力と最大トルクをともに増強しながら、それぞれの発生回転数を下げている。さらに5速だったトランスミッションを6速化し、クロスしたギヤを小気味よくつないでいける。単純に「高回転化してパワーを稼いだ」というエンジンではないところも興味深い。
それでも実際に走らせれば、7500rpm以上をキープして遊びたくなるのだから面白い。ビギナーの多い125ccクラスに、まるで2スト全盛期を思わせるような明確なパワーバンドを持つエンジンを投入したヒョースン。こういうキャラクターは、むしろさまざまなエンジンを知るベテランほど、ヘルメットの中でニヤリとしてしまうのではないだろうか。

当然、高回転域を多用することになるのだが、手や足へ伝わってくる振動は驚くほど細かい。例えるなら、炭酸飲料の微発泡のような軽やかさで、不快感はほとんどない。「Vツインならドコドコとした鼓動感があるはず」とステレオタイプに捉えている人ほど拍子抜けするかもしれないが、他の原付二種とは明らかに異なるエンジンフィールという意味で、筆者はこのVツインを大いに推したい。
フロントの存在感が大きいという個性的なハンドリング

ハンドリングは、バンク角主体で小気味よく旋回していくGV125Sボバーから一転し、ゆったりと舵角が付いていくタイプへ変化した。原付二種らしい操舵の軽さをどこかに残していたGV125Sに対して、GV125Xロードスターは250ccクラスに近い手応えがある。そう表現すると分かりやすいだろうか。
タイヤサイズおよびリムサイズはGV125Sボバーと共通だが、フレームはダブルクレードルからダウンチューブを持たない新設計のダイヤモンドタイプへ一新。さらにフロントフォークはφ35mm正立式からφ41mm倒立式となり、ホイールベースも35mm延長されている。キャスター角は29度から28度とわずかに立てられる一方、トレールは103mmから114mmへ11mm伸びている。さらに車重も165kgから172kgへ7kg増加。こうした変更の積み重ねが、フロントまわりの手応えや安定性の違いにつながっているのだろう。

走行中は常にフロントタイヤとフロントまわりの存在感が大きく、その塊を左右へ移動させながら旋回していくような感覚がある。マシン任せで走っている限りコーナリングは終始スムーズで、決してライダーを慌てさせない。
一方、「スパッと切り返して次のコーナーへ」といった場面では、こちらが期待するほど素早く向きを変えてはくれない。そもそも、そんな走り方はクルーザーに似つかわしくないのだが、何しろエンジンがあれだけレーシーなのだ。つい、その勢いのまま車体までスポーティに振り回したくなってしまう気持ちは理解してほしい。
気になったのはサスペンションである。フロントフォークにはやや作動の渋さが感じられたものの、これは走行距離が伸びて各部に当たりが付けば、ある程度改善する可能性がある。
それ以上に気になったのがリヤだ。乗車1Gではきちんとストロークしているのだが、実走では減衰が弱く感じられ、荒れた舗装路を通過すると車体の上下動がなかなか収まらない。結果として視線まで上下し、せっかくの落ち着いたハンドリングをスポイルしてしまう場面があった。ツインショックだけにセッティング変更の余地はありそうなので、今後、適合確認の取れた社外ショックが登場すれば試してみたいところだ。

ブレーキは、初期入力からガツンと食い付くのではなく、レバーを握り込むに従って制動力が立ち上がってくるタイプ。コントロール性そのものに不満はないものの、特にフロントは下り勾配のきつい峠道でもう少し絶対的な制動力が欲しいと感じた。パッドの銘柄変更などでフィーリングを自分好みに近づける余地はありそうだ。
一方、リヤブレーキは制動力、コントロール性ともに不満なし。試乗車ではペダル位置に少々違和感があり、踏み込みにくく感じたが、この点については改善される予定とのことだ。

さて、68万2000円という車両価格は、日本の原付二種市場においてトップクラスである。ここだけを見れば「125ccに約70万円?」と思うのも無理はない。
しかし、125ccの需要が大きい欧州市場へ目を向けると、少し見え方が変わってくる。例えばフランスでGV125Xの通常価格は4899ユーロ。ヤマハXSR125は5199ユーロなので、GV125Xの方がむしろ安い。さらにフランスでは、Bカテゴリーの普通自動車免許を原則2年以上保有していれば、7時間の講習を受けることで125ccクラスを運転できる制度がある。
つまり、「あらためて二輪免許を取得するほどではないが、いかにも125cc然とした簡素なバイクには乗りたくない」というユーザーがいても不思議ではない。そう考えれば、フルサイズの車格、Vツイン、倒立フォーク、前後ABS、ベルトドライブ、左右2本出しマフラー、切削加工ホイールといった装備にコストを掛けたGV125Xの立ち位置も、より理解しやすくなる。
「人が乗っていなさそうなバイク」が根っから好きな人。そして「原付二種であっても、所有する歓びやプレミアム感を大切にしたい」という人。そんなライダーにGV125Xロードスターは、かなり深く刺さるはずだ。
ライディングポジション&足着き性(175cm/65kg)
シート高は740mm。GV125Sボバーの710mmよりも30mm高いが、乗車1Gでリヤのサスペンションがほどよく沈み込むので、足着き性はご覧のとおり優秀だ。低い位置にあるハンドルとフォワードコントロールで構成される乗車姿勢はかなり個性的で、ほとんどの荷重がシートに掛かる。腰痛持ちのライダーは購入前にポジションのチェックを。
ディテール解説









ヒョースン・GV125Xロードスター 主要諸元
●エンジン
エンジン形式 水冷4ストローク60°Vツイン
バルブ方式 SOHC 6バルブ
総排気量 124.7cc
ボア×ストローク 42.0mm×45.0mm
圧縮比 11.8:1
最高出力 10.3kW(14.0PS)@10,000rpm
最大トルク 10.7Nm(1.09kgf.m)@8,000rpm
燃料供給方式 フューエルインジェクション
始動方式 エレクトリックスターター
潤滑方式 ウエットサンプ
エンジンオイル容量 1.4リットル
使用燃料 レギュラーガソリン
●トランスミッション
クラッチ形式 湿式多板
トランスミッション形式 6段リターン
ファイナルドライブ ベルト
1次 / 2次減速比 3.50 / 3.74
ギアレシオ 2.750 / 1.786 / 1.368 / 1.045 / 0.913 / 0.840
●シャシー
フレーム形式 クレードル
キャスター / トレール 28° / 114mm
サスペンション フロント テレスコピック(φ41mm倒立フォーク)
サスペンション リア スイングアーム(ツインショック)
ブレーキ フロント φ270mmシングルディスク / 対向4POTキャリパー(ABS)
ブレーキ リア φ250mmシングルディスク / 対向2POTキャリパー(ABS)
タイヤサイズ フロント 120/80-16
タイヤサイズ リア 150/80-15
ホイールサイズ フロント J16×MT2.75
ホイールサイズ リア J15×MT3.50
●寸法・重量
全長×全幅×全高 2,130mm×770mm×1,080mm
ホイールベース 1,460mm
最低地上高 125mm
シート高 740mm
車両重量 172kg
燃料タンク容量 14L
乗車定員 2名
●カラー・価格
ボディカラー ナイトブラック
メーカー希望小売価格 682,000円 (消費税抜620,000円)



