
可愛すぎない、シャープなすまし顔
第一印象は「キリッとした凛々しい顔だなー」だった。電動トライクは多くの場合、フォルムそのものが丸っこくてファニーなものが多い。細部のデザインへのアプローチはそれぞれだけど、たいがいはタマゴ型と言って差し支えないだろう。でもこのZINMAはどうだ。アピアランスが甘すぎない。これならビジネスユースでも男性ドライバーでも、引け目なしに街を颯爽と往来することができそうじゃないか。結果的にこのファーストインプレッションは、試乗することでますます好印象に転じていくことになった。

スタンダードモデルとハイエンドモデルの2車種
今回試乗するZINMAはラインナップの中でハイエンドモデルという位置付けだ。ZINMAには2種のグレードがあって、搭載されるバッテリーのパフォーマンス差で「スタンダード」と「ハイエンド」の2種に分けられている。
このZINMAを日本国内で販売する「EV-LAND」の代表取締役である五十嵐隆博さんがおっしゃるには、「パフォーマンスとプライスのバランスを鑑みると、ハイエンドモデル一択と言っていいと思います」とのことだ。かつてEV-LANDが揃えていた多種多様なEVトライクについても鋭意車種の整理が進められており、販売的にもユーザーさんにはZINMAのハイエンドモデルを推しているという。
ZINMAは日本でこんな乗りもの
試乗の前に、このEVトライクのZINMAが日本の法規上どのような乗り物になるのかをおさらいしておこう。
★クルマの普通自動車免許(AT限定OK)で乗ることが可能。バイクとしての取り扱いではなく、道路交通法では普通自動車に区分される
★法律的にはヘルメットやシートベルトは不要。
(ZINMAには安全上の配慮から前後シートにシートベルトが装着されている)
★車検はなし。負担する税金は年間3600円の軽自動車税のみで、車庫証明も不要
★法令上は高速道路を走れる乗りもの。しかし巡航スピードが低いので推奨されない。高速道路では最高速度が80 km/h、最低速度は50 km/hに設定されているゆえ

ZINMAはおおむね“クルマとして振る舞う”べし
さて、ZINMAは日本の路上で“何者”になり、どのように走るべきなのだろうか?
★道路運送車両法でZIMAは「側車付軽二輪」登録という扱いになる
★側車付軽二輪と言っても本来的に三輪構造なので、道交法的には二輪ではなく原付でもない。クルマの免許でのみ運転可能で、公道上ではあくまでクルマとして走行する。法定速度もクルマと同じ
★「電動トライク」や「電動トゥクトゥク」などと表現されるが、どちらも側車付軽二輪の登録。実質的に同じ乗りもの
ちなみに駐車場所についてはそのスペースを管理する団体なり業者の判断が優先されるので、事前の確認が必要になる。現場合わせということだ。

実質一択! ハイエンドモデルは電源がタフ&ロング
EV-LANDが用意するZINMAのラインナップはとてもシンプルだ。「ハイエンド」と「スタンダード」の2モデルで、大きな違いはバッテリーとなる。さらに2026年5月よりスタンダードモデルはモデル改良中であるため、ユーザーの選択肢は1車種となるのでご留意を。
ハイエンドモデル
リン酸鉄リチウムイオンバッテリー搭載
充電回数/2000回
耐用年数/2日に1回の充電で約10年
価格/129万8000円(税込)
スタンダードモデル
鉛バッテリー搭載
充電回数/1000回
耐用年数/2日に1回の充電で約5年
価格/88万8000円(税込)
※モデル改良中につき目下、販売停止中
ちなみに2車の外装や装備に差異はほとんどなく、主だってはバッテリーの仕様が異なるのみだ。



ZINMAの外装、美点はオトナっぽい車体デザイン
ここ日本でもライバルが多く存在するEVトライク。このZINMAのアピールポイントはどこにあるのだろうか。テスターが実車を目の前にしてまず感じたのは、オトナっぽい落ち着き溢れる高質感だった。
ボディの全長はバイク並みの2160mm。幅は1150mmと軽自動車の規格よりも30cm以上タイト。それでいて高さは1680mmと大人の身長くらいはある。3サイズの比率から言ったら、バカ売れしていた頃のコロコロコミックを横に倒したくらいだ。それらの3サイズを前提に、空力までを考慮したボディデザインにすると……それは必然的に丸っこいフォルムになるだろう。
しかしZINMAはその定石とは一線を画し、甘くない。キリリとしたシャープなデザインを身にまとっている。このことで得た販売的なメリットは大きく、「可愛すぎない」「凛々しい」ことで男性やビジネスパーソンからの引き合いが比較的多いという。

EVトライクはクルマとバイクの中間?
試乗しよう。左右にドアが存在しないZINMA、そして大半のEVトライクは乗車へのアプローチがとてもイージーだ。車高が身長とさほど変わらずフロアー自体も低いので、大人でもスッと身体を滑り込ませることができる。些細なことに思えるかもしれないが、乗車のアクションそのものが楽だと単純に「乗る回数」が増えることは想像しやすい。自転車や原付バイクのような気軽さでスタートできるEVトライクの美点のひとつだ。
始動もカンタン、暖機は不要だ。あっという間に発進できる。外気にカラダがさらされるので夏は暑くて冬は寒いが、とはいえ前方からの風はボディが遮ってくれるので自転車やバイクよりははるかに快適。オプションのサイドシート(3万8500円)を装着すれば雨の日の耐候性もかなり高い。この点から言っても立ち位置はクルマに近い。

操縦フィールは至ってナチュラル
運転席に着座し、スイッチをONにしても静寂は保たれたまま。当たり前ながらボディからはなんのサウンドもノイズも発生せず、「行くも行かぬもご自由に〜」と言わんばかりのEVトライク君はのんびりと物静かにドライバーのアクションを待っている。
スピードをコントロールするスロットル、制動のための左右ブレーキレバー、車体の向きを変えるハンドル……操縦にまつわる主だった入力はすべてハンドルまわりに集約されている。それらは一般的なスクーターの運転方法となんら変わらない。ソッと慎重にスロットルをひねればウィーーンとZINMAは前に進んだ。とてもあっけない。想像を超えて速いわけでも遅いわけでもないが、ナチュラルな加速フィーリングにひと安心。扱いやすさをすぐに感じることができる。

最高速よりも加速重視のトルクカーブ
ハンドルを切るアクション自体は軽くもなく、重くもなく。左右に大きく切ると少々重めかもしれない。ただし運転に不慣れな当初はうまく操縦できるかどうかという不安もあってか、ドライバーは力みがちだ。しかし距離を重ねるごとにその力みはどんどん取れていくので、気負いによるオーバーアクションは自然と消えていくだろう。自分がそうだった。
平坦路での加速はたぶん、みなさんが想像するよりもずっとスムーズで速い。テスターも最初のフルスロットルで「お、意外と……」とニンマリひとり言。最高速度に関しては幹線道路だとさすがに「もうひと伸び、ふた伸びほしい」となるが、それでも走るルートを工夫すればそこまでストレスを感じさせるものではなく、むしろポジティブに「ウラ道を駆使して目的地まで最速リーチ〜」なノリを楽しむことができる。
登坂時はさすがにへこたれるかなーと危惧していたのだが、そこもあっさり裏切ってスイスイと登っていくZINMA。スムーズかつパワフルな電気パワーの実力に、感心しっぱなしの試乗となった。

ドライビングのコツは力を抜いて自然体
テスターのように、バイクのライディング感覚をそのままEVトライクの操縦に持ち込もうとしてしまうドライバーはきっと多い。コーナーリング中に必要以上にイン側に上半身を入れよう(傾けよう)としてしまうのは、その最たる例だろう。長年二輪車を楽しんできた者にとってはこれこそが日常で、もちろん悪いことではない。
しかし日ごろのその習慣のせいで「操っている感」は楽しめるものの、そこまで大げさなアクションを行わずともZINMAはスッと行きたい方向に曲がってくれる。拍子抜けするくらいだ。つまり、そこまで車体に積極的に重心移動を働きかけなくても左右の旋回になんら問題はないということ。そのことに早めに気づくことができれば、EVトライクのドライビングはもっとその上達スピードを早めることができる。

ZINMAの優れた美点が、もうひとつ
ZINMAに試乗して感心したことがもうひとつある。それは乗り心地だ。
ZINMAハイエンドモデルの車重は420kg。前回試乗したVIVEL TRIKEの240kgと比べても明らかにヘビー級のボディで、その差は1.75倍もある。その重さゆえにきっと「加速が鈍いのでは」「ハンドリングが重いかも」などのネガがあると危惧していた走行性能だったが、まったく問題なかったのである。
試乗後半で気づいたのは、ヘビー級のボディが作用している明らかな乗り心地の良さだ。車体が重いことがいかに乗り心地の良化に貢献するか、ということについてはいまさら説明はしないが、そのことがしっかりZINMAでも証明されていた。のちに社長の五十嵐さんに聞けば、「シャシーの堅牢さはZINMAの優れた特徴のひとつです。そこはまったく手を抜いていません」とのこと。ZINMAの良いところは、乗るたびにもっともっと浮き彫りになってくるだろう。

代表の五十嵐隆博さんが語る
EVモビリティのこれからについて
「現在のEV事業は2023年にスタートしました。事業の譲渡を受けるカタチでのEVトライクの販売開始だったのですが、まずは車両メンテナンスの仕組みを強化するべくサポート体制の充実を目指しています。
そのことと並行して製品改良を細かく実施し、お客様に満足していただけるEVトライクを市場に供給したいですね。ZINMAはもともと中国で設計された製品。不足のあるパートについては、日本の道路運送車両法に合わせて日々改良を重ねています。以前は配線の接触不良などの細かな問題も確かにありました。しかし現在ではコンプリートノックダウン(CKD)方式を目指して体制の刷新を図っています。具体的には、日本国内の提携工場で組み立てる仕組みを構築中。複数の国内業者との間で協業化を進めています。
もうひとつ目標にしていることがあります。それは“型式認定”の取得です。現在、このカテゴリーで型式認定(国土交通省の認可)を受けて販売されている車両は国内にほとんどありません。認可には100ページ以上にわたる厳しい書類審査や、JARI(日本自動車研究所)でのブレーキテストなど非常に厳しいハードルがあります。型式認定を取得できれば国からの補助金対象となりますので、国内組み立てによる品質向上を後ろ盾にしながらのプライス低減を実現させたいですね。
われわれの強みはメンテナンスにある自負しています。目下、大手企業と業務委託契約を結んでおり、全国の郵便バイクの整備インフラを活用してZINMAのサポートができる体制を整えています。お客様には第一にそのことに安心していただき、将来のセールス拡大と認知度のアップにつなげていきたい。そう考えています」
安心して乗れるEVモビリティを日本でもっとメジャーな存在に──。かつてない大きな視野をもって臨むEV事業。五十嵐さんのマーケット開拓への挑戦はまだまだ続く。
主要諸元
車名:ZINMA/ジンマ ハイエンドモデル
全長×全幅×全高:2160mm×1150mm×1680mm
車体重量:420kg
モーター出力:3.0kW(3000W)
バッテリー:リン酸リチウムイオン電池
充電時間:100V・5〜6時間、200V・3〜4時間
バッテリーライフ:約2000回充電
最高速度:45km/h
航続距離:100〜120km
乗車人数:3人
積載重量:200kg
タイヤサイズ:前120/70R12、後135/70R12
保証期間:1年または3000km
車両区分:側車付軽二輪(要普通自動車免許)
車両価格:129万8000円(税込)
車名:ZINMA/ジンマ スタンダードモデル
全長×全幅×全高:2160mm×1150mm×1680mm
車体重量:420kg
モーター出力:2.2kW(2200W)
バッテリー:鉛蓄電池
充電時間:100V・8時間
バッテリーライフ:約1000回充電
最高速度:45km/h
航続距離:40〜60km
乗車人数:3人
積載重量:200kg
タイヤサイズ:前120/70R12、後135/70R12
保証期間:1年または3000km
車両区分:側車付軽二輪(要普通自動車免許)
車両価格:88万8000円(税込)
※現在販売を停止中
ディテールカット



























