Q:トラコンや走行モードが付いていたら、バイクに任せて走ればいいんでしょ?

北海道/電子制御わからんさん

いやいや、そこまでバイク任せにはできません。ただ、昔ならライダーが右手や左手で細かく調整していた部分を、電子制御がかなり手伝ってくれるようになったのは確かです。

例えば2026年型YZF-R7には6軸IMUを使った車体姿勢の推定に加え、トラクションコントロール、スライドコントロール、リフトコントロール、ブレーキコントロール、エンジンブレーキ制御、双方向クイックシフターなど多くの電子制御が入っています。GSX-8T/8TTにも走行モード、電子制御スロットル、双方向クイックシフトなどが採用されています。今やスーパースポーツだけの装備ではなくなってきました。

電子制御は“勝手に走ってくれる装置”じゃない

電子制御の代表的なものがトラクションコントロール。前後輪の回転差などを見ながら、後輪が過度に空転しそうになったときにエンジン出力を調整して、グリップの回復を助けてくれます。IMUを備えた車種なら、バイクがどれくらい傾いているかといった車体姿勢まで加味して制御するものもあります。

ただし、電子制御がタイヤのグリップそのものを増やしてくれるわけじゃありません。濡れたマンホールや砂利の上で、物理的に使える摩擦力が少なければ限界はある。ABSだって同じで、「絶対に転ばないブレーキ」ではなく、タイヤがロックしそうな状況を制御してライダーを助ける装置。近年はスクーターにも採用されています。

つまり電子制御は、ミスを何でも帳消しにしてくれる魔法ではなく、危ない方向へ行きそうなときに横から手を貸してくれる“助っ人”くらいに考えると分かりやすいんです。

クラッチまで自動! それでも操作するのはライダー

最近はさらに一歩進んで、クラッチ操作そのものを電子制御するバイクも登場しています。Honda E-Clutchなら、発進・変速・停止時のクラッチ操作を自動化できるため、基本的にはクラッチレバーを握らなくても走れます。

でも、ギヤを何速にするか決めてシフトペダルを操作するのはライダー。E-Clutchはクラッチだけを自動制御する仕組みで、通常のマニュアルトランスミッションらしい操作は残されています。2026年にはCBR400RやNX400にもE-Clutch搭載モデルが設定されました。

これってかなり象徴的です。電子制御が増えたから「人間の仕事がなくなる」のではなく、面倒だったり難しかったりする部分をバイクが手伝い、ライダーは「どこを走る」「どんなペースで走る」「何速を選ぶ」といった判断へ集中しやすくなっているんです。

じゃあライダーがやることは何?

まずタイヤやブレーキをちゃんと整備しておく。電子制御がどれだけ優秀でも、空気圧が大きく狂ったタイヤや、状態の悪いブレーキまで新品に戻してくれるわけではありません。

そして、自分のバイクにどんな制御が付いているのかも一度は知っておきたいところ。例えばライディングモードを変えると、最高出力そのものは変わらなくてもスロットルに対する反応が変わる車種があります。トラクションコントロールも介入の強さを選べるモデルがある。せっかく付いている機能なのに、買ったときの設定のまま何年も乗るのはちょっともったいない。

雨の日は介入を強めてみる、ツーリングでは穏やかなモードを選んでみる。安全な範囲で設定を変えて走ると、「こんなにスロットルの感じが変わるんだ」と自分のバイクの守備範囲の広さを感じるはずです。

電子制御が増えても、“乗る”のはやっぱり人間

電子制御が進化すると、「バイクが全部やってくれるようになった」と思いがち。でも実際には、バイクがライダーの操作を読み取り、必要なところだけ手伝ってくれているだけ。

アクセルをどれだけ開けるか。どこでブレーキを掛けるか。どのラインを走るか。今日はゆっくり景色を見ながら走るのか、それともワインディングを気持ちよく流すのか。最後に決めるのはやっぱりライダーなんです。

電子制御を切り離して考えるより、「こんな助っ人が付いているんだ」と一度設定画面をのぞいてみる。使い方が分かると、今まで触らなかったスイッチにもちゃんと意味が見えてくる。バイクが賢くなったぶん、それをどう使うか考えるのも、今どきのバイクとの付き合い方なんですよね。

【モトチャンプ編集部】