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ドゥカティ・スクランブラー1100…….1,621,000円
スクランブラーからイメージできるのは、ロードスポーツモデルをベースにするも、ダートを走る事も苦手としない万能性が売り。古い話をすれば、ツーリング最中に良く遭遇した工事中の砂利道等を、難なく走破して行ける機能性が頼もしい存在だったのである。
具体的には少しワイドなブリッジ付きアップハンドルを始め、ロードクリアランスを稼ぐアップマフラーの採用。クリアランスを空けたフェンダーデザイン。そして何より、ダートでもグリップの良いユニバーサルパターンのタイヤ選択が主な特徴だった。
そんなスクランブラーというカテゴリーに着目し往年(1960年代)のモデルにならい3タイプのエンジン登載でシリーズ完結を果たしたのが、このドゥカティ・スクランブラー。その最終章としての投入が今回試乗した1100なのである。ちなみにバリエーションとしてはスペシャルと、オーリンズ製サスペンションを奢ったスポーツも揃えられた。
開発のキーワードは「Land of Joy」。道路(舗装路)以外でも楽しめる自由な使い勝手を象徴している。実際、前述の様なダートに遭遇しても、ロードスポーツ車のようにアクセルを緩める必要のない豪快で、かつ安心感のある走りを楽しめるのが大きな特徴だ。
もっともそんな機能性よりも、スクランブラーたる機能を備えたバイクを選択し所有する所に、他にはない違った自己表現手段となりえる格好良さも見逃せないのである。
フロントにはやや細めの120/80ZR-18インチ、リヤは180/55AR-17を選択。ピレリ製のMT60RSエンデューロタイヤを履く。このフロントタイヤはスクランブラー1100のために特別専用開発されたものだ。スクランブラー800よりもワイド化されたスチール製 トレリスフレームに登載されたパワーユニットは空冷のOHCデスモドローミック機構を持つ2バルブLツイン。
2本のベルトによってバルブ駆動されるデスモドュエ・エンジンは、φ55mmのフル・ライド・バイ・ワイヤ・スロットルボディとツイン・イグニッションの採用が特徴的。最高出力は欲張らずに86ps/7500rpmを発揮。特に最大トルクの88.4Nmは4750rpmで発生する中低速重視の出力特性が印象深い。
その他、トラクションコントロールを始めアクティブ、ジャーニー、シティ、3タイプのライディングモードが選べるエンジン・パワー制御、そして旋回中の急ブレーキでも賢く作用するボッシュ製コーナリングABSも標準装備されている。
またサイドビューで目線が集まる燃料タンクサイドには、着せ換え可能なアルミニウム製サイドパネルをマッチ。豊富なアクセサリー部品や用品も含めて、オーナーの個性を主張するカスタマイズに対応している点も見逃せない。
全方位で!気の向くままに使える相棒!
跨がって、思わず頬が緩むのは、オーバー1Lもの大排気量モデルであることを感じさせないフレンドリーな感触にある。さすがLツインエンジンは横置きの特徴が活かされ、クランクケースの幅は単気筒に迫る狭さ。
ワイドで高めなハンドルを握り、バイクに跨がると、足元までスッキリとした印象で、気軽に乗れてしまうのが好感触である。
決して小柄では無く、車両重量も200kgを超えるが、親しみやすい範疇にある。太く乾いた排気音は迫力があり、穏やかにして強力な出力特性が実用域でも遺憾なく発揮されて、とてもおおらかな乗り味に包まれる。
背筋が伸びて前方や周囲への見晴らしも良く、周辺の情報や素晴らしい景色等がどんどん目に飛び込んでくる。ひとり自由気ままにワクワクできる気分が心地よいのである。
ハンドル切れ角が少なく感じられたが、実用上小回りUターンに困る事も少ない。市街地から郊外までどこでも走る場所を選ばない感覚はスクランブラーならでは。左手スイッチのモード切り換えでジャーニーを選択しておけば、穏やかにして何不足無い出力特性が発揮され、とてもおおらかで気分の良い走りが堪能できる。日本の道路事情とも絶妙のマッチングだ。
ローギヤで5000rpm回した時のスピードは51km/h。トップギヤ100km/hクルージング時のエンジン回転数は3700rpm程度だった。
ちなみにアクティブモードを選択すれば、かなりヤンチャなハイポテンシャルを発揮。スロットルレスポンスが過激になり、アップライトな姿勢で乗っていると少々乱暴者的な挙動になるが、本領を発揮させれば、実は凄いんだぞ!という心の余裕にも貢献できる感じである。
実際、好んでダートを走ろうとは思わないが、砂利や砂地等の悪路に遭遇しても動じることなく走破できる安心感と軽快感に富む操縦フィーリングは快適である。日本で走るなら、同社のスクランブラー 800で十分であると思うのも本音だがちょっと贅沢な気分と余裕のある走りが楽しめると言う意味でスクランブラー 1100は価値ある選択になるだろう。