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VFR800F(パールグレアホワイト)……1,522,400円
VFR800F(ヴィクトリーレッド)……1,445,400円
先進メカが凝縮された「走る実験室」
実車を見た時は、思わず「おおっ」と唸ってしまった。青×赤×白のストライプカラーに「INTERCEPTOR」のロゴも入ったカラーリングは、1980年代に北米で発売されていたVFR750Fインターセプターを彷彿させる。レジェンドライダーの一人であるフレディ・スペンサーが1983年AMAスーパーバイク選手権で優勝したことを皮切りに、WGPに参戦する前のウエイン・レイニーやバハ・ショバートが大活躍。アメリカでのインターセプターの名は、最速ブランドとして今でも語り継がれている。
ただ、北米では大人気となったものの、V型4気筒エンジンは日本で受け入れられてきたとは言えない。大きな要因は、迫力に欠ける排気サウンドと、シリンダーの配置によりどうしてもエンジンの熱がライダーに負担をかけてしまったからだ。直4のフォーンッ!と抜けるようなエキゾーストノートに対して、V4のメカニカルで少しバタつくような音質ははっきりと好みが分かれた。一方で、性能面では明らかに直4よりもトルク特性や最高出力で勝っていた。技術的にもV4は機構が複雑で、チャレンジ精神を重視するホンダとしてはこのV4エンジンを主流にレーシングマシンの開発や市販車のラインナップも充実させていくだろうと思われた。実際に2スト、4スト問わず、レーサーはV4エンジンを主流に搭載し、1990年代のレースではホンダのマシンが様々なレースタイトルを席巻したのだ! しかし、この実績は市販車の販売増には結び付かなかった……。もちろん、根強いファンがいて、VFRシリーズは1200→800ccと排気量を変更しながら継続してリリースされている。現行のVFR800Fは2014年にモデルチェンジされ、ハイパーVテック、トラクションコントロール、ウインカーオートキャンセラー、LEDライト等を搭載するほか、オプションでクイックシフターを用意するなど「走る実験室」との異名に相応しい最新メカが導入されている。
今こそV4エンジンの魅力を体感すべき時!
見た目はボリュームがあるのに、またがってみるとV型エンジンの特性を生かしてボディがスリムなため、意外なほど足着き性がよい。スポーツツアラー的な位置づけなので、前傾姿勢は強くないが、自然なスポーツライディングのポジションがとれる。ギュッとエンジンを中心にメカが絞り込まれた密度の濃いパッケージは、VFRシリーズに共通した印象だ。エンジンをかけると、排気音はメカニカルノイズが先進的で、マフラーが最新の騒音規制に対応しているためか、以前に感じていた線の細さが無く、重量感のある排気サウンドだった。
クラッチは重めなので、長距離ツーリング等を主体とするなら、できればオプションのクイックシフターを付けたいところだ。
特筆したいのがスロットルに忠実に反応する加速感。フューエルインジェクション搭載車にありがちな過敏さが無く、キャブレター搭載車のように自然なのだ。低速からドンドンと押し出すようにトルクがあり、ストップ&ゴーの多い街中の走行も楽しい。
ハンドリングは安定志向。フロント荷重が強く切り返しは少し粘るが、振動が少なく直線もコーナリング時もタイヤの接地感が高いので、走るステージを問わず安心してバイクのポテンシャルを引きだす走りが楽しめる。
VFRのアイデンティティであるハイパーVテックは低・中回転域は2バルブで高回転域になると4バルブに切り替わる仕組みだ。7000pm手前くらいで排気音が変わり、8000rpmあたりから高回転の加速がグンと底上げされるようなフィーリングが体感できる。レッドゾーンまで一気に到達し、ガオッと唸る排気音と、シューンというメカニカルノイズが重なり合ったサウンドは、これぞV4と堪能できること請け合いだ。個人的には、ホンダが目指したスポーツバイクの方向性はココにあると思わずにはいられない。
絶対的なスピードはCBRシリーズに譲るだろうが、耐久レース的なロングツーリングなら、疲労の少なさやアベレージスピードの高さ、扱いやすいエンジン特性により、VFRに軍配が上がるシーンも多いだろう。
「HYPER VTEC」って?
ホンダの可変バルブ機構「VTEC」。これを発展させた「HYPER VTEC(V4 VTEC)」がCF400SF(1999年~)と2002年以降のVFRシリーズに採用されている。これはロッカーアームを介さない直押しタイプのバルブ制御を実現したもので、1シリンダー(4本)のバルブを低回転域で2つ停止させて吸気排気を各1ポートで行う。
バルブを閉じることで吸気効率を上げてトルク感や加速力アップを狙い、6400rpmを境に4つのバルブが作動し、さらに直押しによるバルブ自体の動荷重が軽くなる効果もあって、より高回転域での追従性を高められる! CBR400Fからスタートした、2バルブと4バルブのメリットを両立する「REV」機構からVTECが生まれ、それを飛躍的に進化させたのがHYPER VTECとなる。
足つきチェック(ライダー身長182cm)
フルカウルモデルなので見た目に大きく感じるが、ライディングポジションは意外にコンパクト。タンクやエンジン周りがスリムなので、シートがスタンダードポジション(高さ809mm)でも足着き性は良好!ロングツーリングメインなら、ハンドル位置を少し手前にオフセットするカスタムを施したい。