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Vespa GTS Super 150 i-get……548,000円
1946年から続くベスパブランド
ピアジオグループがリリースするベスパ。スクーターの世界では古くから知られるイタリアの代表的ブランドだ。第二次大戦後の1946年に航空機産業の転換で登場。そういった意味では、いずれも1960年代に消滅した日本のラビット(富士重工業)やシルバーピジョン(新三菱重工業)の様な存在である。そんな一方でベスパは映画ローマの休日に登場したことでも良く知られ、スチールモノコックフレームや片持ちホイールもベスパを象徴してきた。
今回試乗したGTSスーパーシリーズはベスパの中で最もアクティブでスポーティなモデルである。ボディカラーはスペランツグリーン。その鮮やかな色使いはいかにもイタリア車らしい明るさが表現されている。カラーバリエーションはモンテホワイトとバルカンブラックの3種が基本で、マットレッドは受注生産となる。グリーンの色合いは派手過ぎと感じる人も居るようだが、太陽光を反射すると鮮やかに輝きだし、そのたたずまいは景観にも良く馴染み、記者は好きだ。
外観デザインも程良いサイズ感と、適度に丸みのある優しい雰囲気等、全体にバランス良くまとめられてとても綺麗。それに加えて前後12インチホイールを履く本格派スクーターの王道を貫く標準形としての貫祿も感じられる。
デザインの変遷はあれど、ベスパならでわのキャラクターが既に完成されていることが再確認出来た。端的に言うとかわいくてオシャレ。そしてGTSスーパーは優しさの中に逞しさも兼ね備えている。やはりデザインには「力」があると感じられた。
エンジンは水冷のi-get(イタリアン・グリーン・エクスペリエンス・テクノロジー)を搭載。従来の125㏄比較で約10㎏も軽量化された最新のもの。始動はクランクシャフトに直付けされたブラシレスモーターを使用し、アイドルストップ機構も採用。ちなみにバッテリー能力が低下するとこの機能は自動的にキャンセルされるので、不用意なバッテリー上がりの心配もなく安心。また傾斜センサーの働きで、万一転倒した場合は自動的にエンジン停止する機能もある。
早速試乗し街乗りから高速道路走行まで200㎞ほど走ったが、目線の高い大柄なライディングポジションが印象的であった。車体はコンパクトだが乗車感はゆったりしている。滑り止めの利いたフロアからシートまでの段差も十分あり、自然と背筋を伸ばした姿勢で座る感覚はベスパならではといえる。
特に秀逸なのは、厚みのあるシートクッションのデザインだ。たまたま記者の体格にピタリとマッチしたのかもしれないが、シート前方上面の両側が斜めにカット(面取り)された形状は膝裏近くまでの内股との密着が図れ、まるでニーグリップするように身体が安定する。シートに加わる体重も尻と大腿全体に分散されて、とても座り心地が良いのだ。
クッションは硬めだが、尻が痛くなる事はなかった。悪路通過でも初期の作動性に優れるサスペンションの働きと相まって、ライダーが暴れてしまうことはなく、安心感も高い。そして14.4psを発揮するエンジンは、全回転域に渡ってマイルド。力半分で走っている様な常に余裕を感じさせてくれる優しい出力特性が印象深い。市街地から高速まで、そのパフォーマンスに不足はない。シート下収納が多いわけではないし、いわゆる大型スクーターとは一線を画す仕上がりだが、本格派スクーターの基本形として、侮れない魅力があることは間違いない。コンパクトサイズながら大きくて快適な乗り味が魅力的なのだ。
なお試乗時の燃費は、高速、市街地共に34.4㎞/Lだった。
【ENGINE】 ・エンジン i-get 4ストローク水冷単気筒 SOHC 4バルブ スタート&ストップシステム ・総排気量 155cc ・最高出力 14.4HP(10.8kW)/8,250rpm ・最大トルク 13.5Nm/6,750rpm ・燃料供給方式 電子制御式燃料噴射システム ・冷却方式 水冷 ・トランスミッション 自動無段階変速(CVT)クラッチ自動遠心クラッチ 【CHASSIS】 ・サスペンション(前)片持ちリンクアーム油圧式 ・サスペンションサスペンション(後)プリロードアジャスタブル デュアルアクション ツインショックアブソーバー ・ブレーキシステム2チャンネル ABS ・ブレーキ(前)油圧式 220mm ディスクブレーキ ・ブレーキ(後)油圧式 220mm ディスクブレーキ ・タイヤ(前)120/70-12" ・タイヤ(後)130/70-12" ・全長/全幅/全高 1,950mm / 740mm/1,190mm ・ホイールベース 1,350mm ・シート高 790mm ・燃料タンク容量 7(±0.5)L ・車両重量 140Kg