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F.Bモンディアル・HPS300 … 57万6400円(消費税込み)
数奇な運命を辿った老舗イタリアンブランド!
世界ではさまざまなバイクメーカーが生まれては消え、そして復活している。1948年(日本では昭和23年)にイタリアのミラノで生まれたF.B Mondial(F.Bモンディアル)も歴史の波に翻弄されてきたブランドのひとつだ。ロードレースの世界選手権で好成績を収めるなど高い技術力を誇ったが、他メーカーとの販売競争で苦境に立ちレース界から撤退。1979年に解散することになってしまった。
しかし1999年にFBモンディアルの権利が新たなオーナーの手に渡り、2000年にはホンダ・VTR1000 SP-1のエンジンを搭載したハイクオリティなスーパーバイク「ピエガ」をリリース。それは日本でも発売され高い注目を浴びた。ところがその後、経営状況が不安定になり操業停止に。ブランドが現オーナーの手に渡り、2015年にイタリアで開催されたモーターサイクルショー<EICMA>でHPS125の発表とともにF.Bモンディアルが復活した。
一見するとロー&ロングのイメージだが、またがってみると意外と腰高なイメージ。しかし足裏1/3が接地するのでそれほど不安は感じない。初見のときは上下逆じゃない!?とも思ったカタチのハンドルも握ってみると適度な前傾になり、高めのステップとのバランスも良好。
その意外さに驚いた。ただ右のステップはマフラーを避けるためショップ独自のアダプターで外側に大きくオフセットされているので、左右非対称感が気になった。シートは薄めだがそれほど座り心地は悪くない。タンデムシートはサイズ、形状ともに長時間乗るのは大変そう。
中回転域から元気に吹け上がる249cc単気筒エンジン
ネオ・カフェレーサー的なフォルムのマシンはコンパクトではあるがかなり目を引く。日本車にはないデザインということもあり街角に停めてあるだけで独特な存在感を醸し出している。
セルボタンを押すと水冷単気筒エンジンが目を覚ます。車名に300とは付くが日本仕様は249㏄なのであしからず! アップタイプのマフラーから吐き出されるシングルサウンドは意外と迫力がある。マフラーが高い位置にあるのでライダーの耳に届きやすいのも理由だろうか。
単気筒エンジン特有の細かい振動が伝わってくるハンドルを握りスタート。先にも書いたが、ハンドルの形状は独特だが、ポジションは不思議と馴染む。外側にオフセットされた右ステップはなかなか慣れなかったが、操作性は悪くない。iS(イズ)モーターサイクルの伊藤代表は「ノーマル状態ではブレーキペダルを踏みにくかったので、普通に操作できるようにオフセットアダプターを製作しました」という。スタイルとポジションの両立を図った結果なのだから、これも個性と受け止めるのがよいだろう。
単気筒エンジンは4000〜4500回転あたりからパワーが盛り上がってくる。ショートストロークということもあってキビキビと吹け上がる印象。中回転域でパンチがあるフィーリングだ。高回転域で伸びるタイプではないので引っ張り切る前にシフトアップするのがよいだろう。
サスペンションの動きはこのクラスでは一般的なレベル。ラグジュアリーではないが、それなりに動いてくれるのでギャップ通過時もそれほど衝撃は伝わってこない。
ブレーキはにぎりはじめから中間域でのタッチがやや固い印象。止まらないわけではないが、コーナーの進入などで微妙なスピードコントロールをするには、もう少しリニア感が欲しいところ。
素直なハンドリングと安定した高速クルージング性能
ハンドリングは基本的に素直。思ったところでバンクしてくれラインに乗せるのも難しくない。ただタイヤの影響か、少しゴツゴツ感があり深くバンクさせるのには向いていない感覚。純粋なオンロードタイヤを装着すればよりスムーズにバンキングできそうだが、スクランブラーというキャラクターを考えると悩ましいところ。
また高速道路での移動も経験したが、法定速度でのクルージングは安定している。振動があるにはあるが苦になるほどではないし、サスペンションも仕事をしてくれる。軽二輪クラスはサスペンションにコストをかけにくいこともあって、ルックスが良くても走るとバタバタと暴れてしまうモデルも存在する。しかしHPS300は納得できるベターなフィーリング。パワーの兼ね合いで追い越しのときはシフトダウンが必要になるが、250ccのスクランブラーということを考えれば妥当なものであろう。
個性的なスタイルに惚れたなら選ぶのもあり!
聞き慣れない海外メーカー製のバイクと聞くと構えてしまうかも知れないが、乗ってみると良い意味で「普通」だった。変な癖もなく気難しいところもないため、街中でのUターンなどもスムーズに行えた。普段使いにも十分対応してくれる性格である。
耐久性に関しては正直未知数だが、一般的な外国車とそう変わらないとも聞く。パーツの入手なども含め、不安な人は販売店で聞いてみるとよいだろう。
ともあれHPS300は「250ccクラスの個性的なバイクに乗りたい」という欲求には十分に応えてくれる存在。自分らしさを重んじる人や、他人と被ることを良しとしないライダーにとって選択肢のひとつになるモデルだといえるだろう。
ディテール解説
カウルなしのネイキッドながら、逆三角形のヘッドライトが個性を主張する。ヘッドライトはハロゲンでポジションランプも一般的な電球だ。
不思議なカタチのバーハンドルだが、意外にもフィットする。グリップの凹凸は大きめ。バーエンドミラーは視線の移動量が大きいが後方の視認性はよい。
小型の液晶メーターを採用。表示が集約されていてシンプルだが、太陽光の角度によってはウインカーなどのワーニングランプが見えにくいシーンも。
倒立フォークにラジアルマウント式のブレーキキャリパーを装備。ディスクローターはフローティングタイプ。ABSを備えている。
ヘッドがコンパクトなSOHC単気筒エンジンを搭載。ショートストロークなのでアクセルに対する反応は俊敏。パワーは必要にして十分なイメージ。
ガソリンタンクのサイドは削られているが、シートに近い部分の角が内ももに当たる感じ。上面に四角いモールドがあるのがオモシロイ。
右2本出しのアップマフラーがスクランブラーらしさを演出。ヒートガードがあるが右足に熱気は伝わってくる。
しっかりとステップに足を置き、ブレーキペダルの操作をしやすくするためアルミのオフセットブラケットをセット。これはイズモーターサイクルのオリジナル品だ。
薄いシートエンドの下にセットされるテールランプ。スリムなリヤフェンダーや矢じり型のウインカーなどによりシャープに仕上がっている。
シートはシングルシートをイメージした形状だが、素材が柔らかいのでタンデムもできる。
ナンバープレートとリフレクター、リヤフェンダーはスイングアームにセット。流行りの処理方法である。
リヤショックはオーソドックスなツインタイプ。白いスプリングと別体式リザーバータンクがスポーティなイメージ。
エンジン下に大型キャタライザーを装備しユーロ4に対応。イメージを壊さないようアンダーカウルでカバーされている。
SPECIFICATION
車名:HPS300 全長×全幅×全高:2,025mm×710mm ×1,050mm 軸間距離:1,360mm 最低地上高:145mm シート高:790mm 車両重量:149kg エンジン型式:水冷・単気筒・SOHC・4バルブ 総排気量:249cc 内径×行程:77mm × 53.6mm 圧縮比:11.5:1 最高出力:17.0kW/ 8,500rpm 最大トルク:22.5N・m/ 6,500rpm 燃料タンク容量:9.5L フロントサスペンション:40mm 倒立フォーク-97mm リヤサスペンション:ダブルショックアブソーバー(120mm) フロントブレーキ:4ピストンラジアルキャリパー、280mm、ABS リヤブレーキ:1ピストンフローティングキャリパー、220mm、ABS タイヤサイズ(前/後):100/90-18 /130/80-17 乗車定員:2名 ※日本輸入元:アイビーエス(http://www.ibsweb.jp)
協力ショップ
今回、HPS300を試乗させてくれたのは東京都大田区にあるイズモーターサイクルさん。F.Bモンディアルをはじめトライアンフやアプリリア、モトグッツィ、ファンティック、ランブレッタなど多くの海外モデルを取り扱っている。車両のみならずアパレル類も取り扱っていて店内は華やか! レンタルバイクも行っており、今回試乗したHPS300もラインナップに加わっている。ぜひ一度訪れてみてはいかがだろうか。
●イズモーターサイクル 東京都大田区東矢口3-31-14 TEL:03-3737-1811 FAX:03-3737-3388 定休日:毎週火曜日 第3水曜日 営業時間:AM10:00~PM7:00 http://ismotorcycle.tokyo