スーパーカブをカスタムするなら「鉄カブ」、それとも「JA07」!? 【第25回カフェカブミーティングin青山】

スーパーカブをカスタムする時、どのモデルをベース車に選ぶかは重要。完成した姿をカスタムする前からイメージしていないと、仕上がった時に「アレ?」となってしまうことが多いからだ。そこで今回は「第25回カフェカブミーティングin青山」に展示されていたカブの中から古い「鉄カブ」を選んだ例と、110になった当初のJA07を選んだ例の2台を紹介しよう。

REPORT●増田 満(MASUDA Mitsuru)
PHOTO●星野耕作(HOSHINO Kosaku)

カスタムベースの鉄板人気が「鉄カブ」だ!

ベースは2008年のプレスカブ50デラックス。
新聞配達用とは思えないほどセンス良くカスタム。

2022年はスーパーカブ110にフロントディスクブレーキと前後キャストホイールが採用され、いよいよカブがレジャーバイクとして浸透したことを感じさせた。スーパーカブ人気は盛り上がることはあっても冷めることは当分なさそうな雰囲気。人気が盛り上がったのはテレビ番組の影響もあるけれど、やはりカスタムベースとして最適だったことが挙げられるだろう。スーパーカブをカスタムする時、ベースに選ばれるのは圧倒的に数が多い「鉄カブ」だ。スーパーカブは2009年に樹脂ボディの110が発売され、2012年からはスーパーカブ50も樹脂ボディの新型へ生まれ変わる。これに対して古いモデルはボディがスチールだったことから「鉄」の愛称で呼ばれるようになった。

大型フロントキャリアに灯火類があることでプレスカブと判別できる。

ひと口に「鉄カブ」といっても長い歴史があるだけに、多数のモデルが存在する。多くはC50やAA01などだろうけれど、とても珍しいベース車を選んでカスタムされたのがこのマシンだ。なんと郵便配達業務に特化したプレスカブをベースにしているのだから。プレスカブは前後に大型キャリアを装備するほか、フロントバスケットに大量の荷物を積んでも前方を照射できるようにフロントキャリア先端にヘッドライトとウインカーが装備されている。そのためカスタムベースとしては敬遠される傾向が強いのだが、それを逆手にとってしまった好例といえそうだ。プレスカブの特徴であるフロントキャリアはそのままに、バスケットを外して海外のナンバープレートを移植。ウインカーレンズをクリアにすることで、プレスカブらしさを払拭しつつレトロさまで手に入れたのだから。

ロングシートと革のサイドバッグが似合っている。
サイドバッグは100均で買った丸いスチールネットで固定している。

レトロさを引き出しているのはフロントまわりばかりではない。シートを東京堂オリジナルのロングタイプとしつつ、センターキャリアを追加してビジネス車の印象を消している。さらにサイドバッグを左右に装備しているが、カブ用ではなく大型アメリカンなどに似合いそうなデザインを選んでいる。ここもポイントだが、面白いのは固定方法。ロングシートに変更したためリヤキャリアもシートの長さに対応した社外品としている。キャリアのサイド部分にバッグをくくりつけるわけだが、それだけだとバッグが揺れてタイヤに接触する。そこで考えたのが100円均一ショップで売っている丸い形状のスチールネット。これをキャリアと連結させつつ、バッグ裏でも固定できるようにしたことで十分な安定性を手に入れている。

レトロさを狙ってボックスにプレートを装着。
レンズ類はクリアで統一している。

スーパーカブといえばリヤに大型ボックスを装備するのが定番。バイク用の汎用ボックスを選ぶのが確実だが、スタイルを優先するボテ箱や木箱などとどちらにするかで悩むところ。確実性を優先してこのプレスカブにはバイク用の汎用ボックスを選んでいるが、目立つ位置にサーフィンを感じさせるプレートを取り付けた。これでルックスは大きく変わる。さらにリヤウインカーやテールランプのレンズをクリアとして、すっきりした印象になっているのだ。

コスパ最高のJA07をオフ車っぽくアレンジ!

ベースは2009年のスーパーカブ110。
シートとグリップをブラウンで統一してカスタム感を演出。

「鉄カブ」に対して樹脂ボディとなった後のスーパーカブは着実に進化を続けている。2009年に新発売されたスーパーカブ110、さらには2012年にフルモデルチェンジしたスーパーカブ50が発売される。続けて2017年には「鉄カブ」を思わせるスタイルへ大きく変更が加えられ、2022年のディスクブレーキ&キャストホイール装備へと続く。「鉄カブ」に比べて変化が多い110以降のカブは、やはり走りや質感が良くなる新型の人気が高い。ということは反面、初期のJA07型の110や2012年以降のAA01型の50などが中古車市場で安値で推移している。ここに目をつけたのがこちらの車両だ。

ブロックタイヤを履くだけで大きくイメージが変わる。
ヒートガードがハンターカブイメージのアップマフラーを装着。

オーナー自ら「コスパの良さで選びました」と語るように、2009年のJA07は中古車価格に対して走行性能が良く、ベース車として選ぶには今が旬といえるモデル。ただ、そのまま乗ることはせず、ライトなカスタムを施して楽しんでいる。ベース車が安いからとカスタム費用が高額になっては意味がないと考えられたのだろう。カスタムの方向性は「なんちゃってオフロード仕様」。ブロックタイヤとアップマフラーに変更することで、大きくイメージを変えることに成功しているのだ。

ナックルガードと樽型グリップで快適性を追求。
ブラウンの表皮にダイヤモンドステッチがおしゃれなシート。

バイクとライダーの接点といえばハンドルグリップとシート、ステップの3点。ここを変更すると乗り味が大きく変わるし疲労度も軽減されることが多い。カスタムポイントとしてぜひ考えていただきたいパーツでもある。その点、このJA07は大いに参考になる。樽型グリップは走行時の振動を提言させてくれるし、シートもステッチが入ることで体重を分散させることができる。このいずれもブラウンで統一することで、ルックスにも大きく貢献したというわけだ。

ウインカーレンズは前後ともクリアに変更。

大型ボックスはもはや定番で装備することでイメージも変わるが、それだけでなくリヤサスペンションや灯火類にも注目したい。JA07のリヤサスペンションはいかにも「カブです」というデザインで普遍的ではあるけれど、ファッション性という点ではイマイチ。そこで黒いコイルを剥き出しにした社外品でバイクらしさを追求。また前後のウインカーをクリアレンズにするだけでもイメージは大きく変わる。「鉄カブ」をカスタムするのは楽しいしパーツも豊富に揃うが、あえてJA07などの樹脂ボディを選んで差別化を狙ってみるのも楽しそうだ。

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著者プロフィール

増田満 近影

増田満

小学生時代にスーパーカーブームが巻き起こり後楽園球場へ足を運んだ世代。大学卒業後は自動車雑誌編集部…