駆動系メンテナンスで疲れたスクーターをリフレッシュ&シャシダイにのせてみる!後編 【動画・モトチャンプTV】

毎日の通勤通学で酷使されるスクーター。何にせずに乗り続ければ、当然のようにあちこちがくたびれる。そこで駆動系をメンテナンスしてどの程度性能が戻るのか試す企画の第二弾。今回はいよいよリフレッシュを終えたスクーターの性能を、試乗とシャシーダイナモによる測定で確認してみるぞ。

通勤通学などで毎日のように乗るスクーター。毎日のように乗るから徐々に劣化している性能に気が付きにくいものだが、定期的なメンテナンスを怠れば当然初期の性能は発揮できない。実に走行距離が2万キロを突破したシグナスXだと、乗りにくいと感じられるほどスロットルワークに対しての反応や段付きのある加速感を示していた。そこで駆動系パーツをリフレッシュすると、どこまで性能が回復するのか実験してみるのが今回の企画だ。前回の記事では乗りにくいと感じる回転数を試乗とDYNOSTARによるパワーチェックで照らし合わせてみた。さらに駆動系を分解するところまで紹介している。そこで今回は、駆動系パーツを組み直して再度パワーチェックと試乗をしてみる。いつものようにユーチューブで無料配信しているモトチャンプTVのなかから「通勤で酷使されているスクーターの駆動系パーツを交換。Part.2〜新車並みのパワーを取り戻しますよ〜。」という回をダイジェストにまとめている。

クラッチを徹底的に清掃する

クラッチシューや周辺を清掃する。

駆動系メンテナンスでは、一般的にクラッチシューやベルトなど摩耗する部品を新品に交換する。ただ、今回は諸事情により交換するのはベルトだけにとどめ、他の部品は徹底的な清掃により再利用することになった。まずクラッチはシューの当たり面を粗めのペーパーで削り表面を均一にならす。さらに周囲に堆積しているシューの削りカスや汚れをワイヤーブラシなどでこそぎ落としていく。

クラッチアウターの内側は汚れが堆積してサビまで出ていた。

クラッチアウターは内側のシューと当たる面をよくよく確認しよう。ここにもシューの削りカスが付着しているし、水が回ることでサビまで発生していた。ひたすらワイヤーブラシで汚れとサビを落としたら、シューとの当たり面をシュー本体と同様に粗めのペーパーで磨いてならしておく。

サビと汚れを落としたら最後にパーツクリーナーで清掃する。

クラッチアウターの汚れはひどいもので、最後に脱脂をかねてパーツクリーナーをスプレーすると、受け皿には見事に汚れが落ちてきた。こうした現状を目で見ることで、どれだけ酷使してきたかを実感できることだろう。

クラッチを組み立てる

スプリングとトルクカムを合わせてナットで組み付ける。

最後にクラッチを組み立てる。クラッチシューにスプリングを重ねて上からアウターをかぶせる。そのままだとスプリングの反力でアウターが外れてしまうので、足裏でスプリングを押し込み、その状態でナットを回して固定するのだ。ナットは最後に規定トルクで締め込まなければならない。そのままでは締め込めないので周り留めをしてからトルクレンチを9kgf・mに設定して締め込む。

プーリーを清掃して駆動系を戻す

ドライブフェイスやプーリー側も同様に清掃する。

ドライブフェイスとプーリーもクラッチ同様に汚れを落として、脱脂をかねてパーツクリーナーでスプレーしておこう。特に冷却フィンの間は汚れが溜まりやすいので、細めのワイヤーブラシでゴシゴシ汚れを掻き出すようにするといい。

ウエイトローラーの向きに要注意。

プーリーに差し込む円筒形のプーリーボスを仮組みして、スムーズに回転するか確かめておく。この時、プーリーとボスにガタがないかを確認することを忘れずに。もしガタがあるようなら新品部品に交換しなければならなくなる。さらにウエイトローラーを元に戻すのだが、ローラーには入れる向きがある。片側だけカバーがされているので、カバー側が左になるようにしてすべてのローラーを戻すこと。内部でローラーが動く時スムーズに移動するための向きなのだ。

駆動系パーツを元に戻す

クラッチにベルトをかけてプーリーとともにエンジン側へ戻す。

クラッチ、プーリーともに組み直したらエンジン側へ戻そう。手順としてはクラッチに新品ベルトを組む。結構な力とコツが必要だが、できないことはない。ベルト組んだクラッチを車体に戻したらプーリーへベルトをかけてからプーリー本体も戻す。さらにナットで双方を固定する訳だが、この時にベルトがフリーな状態であるかどうか再確認しよう。ベルトがフリーな状態でないと、組み直した後に正常な動きをしてくれなくなるからだ。最後にクラッチアウターをかぶせてナットをかける。クラッチ側ナットは6kgmの規定トルクで締める。プーリー側は同4kgf・mだ。いずれもトルクレンチを使うのはもちろんだが、組みながら絶えずベルトがフリーであるか確認して作業を進める。

カバーはノックピンにグリスを塗布して次回開けやすいようにしてから装着する。

最後にクランクケースカバーを元へ戻したら作業は完了だ。カバーには新品のガスケットを使うのが鉄則で、車体側とのガイド役になるノックピンにはグリスを塗布してフタをしよう。なぜグリスを塗るかといえば、次にカバーを開ける時に固着しないための処置。グリスを塗らないままカバーを締め込むと、外すときに難儀するのだ。

メンテの結果をデータと試乗で確認。

作業終了後にDYNOSTARで性能を測定する。
測定後にMCシモが試乗してメンテナンスの効果を体感。

駆動系メンテナンスが終了したところで、再び埼玉県越谷市にあるエムファクトリーに常設されているシャシーダイナモ、DYNOSTARを使ってパワーチェックを行う。馬力だけでなくエンジン回転数とスピード、変速タイミングやクラッチのつながり具合をデータ化できるのだ。パワーチェックが済んだら、今回の進行役を務めたMCシモによる試乗が行われた。いきなり全開にせず、ある程度ベルトが馴染んでくれるのを待ってから、いよいよスロットルを開ける。すると、当初 MCシモが指摘していた、初めに回転数が上がった後、半クラッチが終わってクラッチが繋がりきったところで回転落ちが激しかったことが見事に解消されていた。さらに走行中にスロットルを戻し、その後再加速するような場面でのスロットルのツキが段違いによくなった。以前は回転数によりムラがあるため、スロットルを開けても加速がついてこないような状態があったのだが、それらネガティブな要素が一切ないのだ。最高速はともかく、たとえば時速60キロに到達するまでの時間が確実に短くなった。これは駆動力がスムーズに伝達されている証拠で、どのような場面でも乗りやすくさえなった。

試乗で体感した効果をデータでも確認できた。

試乗で体感できたスムーズさは、やはりデータにも表れていた。メンテナンス前に回転落ちする場面をデータでも捉えていたが、それが一切なくスムーズな特性になっていることがわかる。上の青いラインがメンテナンス後の性能曲線で、最高速付近まで谷が一切ないことをお分かりいただけよう。乗りやすくなることは速さに貢献するのはもちろん、疲労度を低減してくれるし燃費にも好影響を与える。これだけハッキリ効果を得られるメンテナンスなのだから、酷使しているスクーターがあるならぜひ、メンテナンスを考えていただきたい。エムファクトリーでは有料となるがDYNOSTARでパワーチェックもしてくれるから、メンテナンスの効果をより理解できることだろう。

キーワードで検索する

著者プロフィール

増田満 近影

増田満

小学生時代にスーパーカーブームが巻き起こり後楽園球場へ足を運んだ世代。大学卒業後は自動車雑誌編集部…