目次
国内4メーカーのラインアップをチェック
まずは、このクラスにどんなバイクがあるのかを、国内4メーカーのラインアップを例に挙げてみよう。
【ホンダ】
●CBR250RR
2023年モデルでは、エッジの効いたデザインのレイヤードカウルを採用するなどで、外観を一新。クラス初の電子制御スロットルや3タイプのライディングモードなど、最新の電子制御システムも搭載するプレミアムな250ccスポーツだ。
エンジン:249cc・水冷4ストロークDOHC4バルブ直列2気筒
最高出力:31kW(42ps)/13500rpm
最大トルク:25N・m(2.5kgf・m)/10750rpm
車体サイズ:全長2065mm×全幅725mm×全高1110mm
シート高:790mm
車両重量:168kg
価格(税込):86万9000円~90万7500円
【ヤマハ】
●YZF-R25 ABS
1000ccスーパースポーツ「YZF-R1」イメージのスタイルに、倒立フォークや肉抜きタイプのハンドルクラウンなど、レーシーな装備も満載。アルミ鍛造ピストンなどを採用したエンジンは、低回転域から扱いやすく、高回転域では伸びのある加速感が楽しめる。
エンジン:249cc・水冷4ストロークDOHC4バルブ直列2気筒
最高出力:26kW(35ps)/12000rpm
最大トルク:23N・m(2.3kgf・m)/10000rpm
車体サイズ:全長2090mm×全幅730mm×全高1140mm
シート高:780mm
車両重量:169kg
価格(税込):69万800円
【カワサキ】
●ニンジャZX-25R/SE
クラス唯一の水冷4気筒エンジンは、走行風でパワーを増大させるラムエアシステムにより、最高出力を45ps→46psにアップさせることが可能。2種類のパワーモードや3モードのトラクションコントロールも採用。スタンダードと上級仕様の「SE」を設定する。
エンジン:249cc・水冷4ストロークDOHC4バルブ並列4気筒
最高出力:33kW(45ps)/15500rpm・ラムエア加圧時34kW(46ps)/15500rpm
最大トルク:21N・m(2.1kgf・m)/13000rpm
車体サイズ:全長1980mm×全幅750mm×全高1110mm
シート高:785mm
車両重量:183~184kg
価格(税込):84万7000円~93万5000円
●ニンジャ250
250ccフルカウルモデル人気の立役者、2008年登場の「ニンジャ250R」が元祖。3代目の現行モデルは、シャープなスタイルと、扱いやすさを生む軽量な車体が特徴。やや高めのセパレートハンドルなどで、長距離ツーリングでも快適なポジションを実現する。
エンジン:248cc・水冷4ストロークDOHC4バルブ並列2気筒
最高出力:26kW(35ps)/12500rpm
最大トルク:22N・m(2.2kgf・m)/10500rpm
車体サイズ:全長1990mm×全幅710mm×全高1125mm
シート高:795mm
車両重量:166kg
価格(税込):67万1000円
【スズキ】
●GSX250R ABS
低・中速トルクを重視した2気筒エンジンやスリムな車体などにより、街乗りからツーリングまで、幅広いシーンで乗りやすさが光るモデル。3色あるスタンダードのほか、ボディに「SUZUKI」のロゴを入れ、MotoGPマシンなどを彷彿させるカラーも用意する。
エンジン:248cc・水冷4ストロークSOHC2バルブ2気筒
最高出力:18kW(24ps)/8000rpm
最大トルク:22N・m(2.2kgf・m)/6500rpm
車体サイズ:全長2085mm×全幅740mm×全高1110mm
シート高:790mm
車両重量:181kg
価格(税込):56万9800円~58万1900円
●ジクサーSF250
独自の油冷方式「SOCS」を採用する単気筒エンジンは、高出力とWMTCモード値34.5km/Lという高い燃費性能を両立。車両重量158kgの軽い車体は、街乗りからツーリングまで軽快。2023年モデルは新色を追加、51万円台のリーズナブルな価格も魅力だ。
エンジン:249cc・油冷4ストロークSOHC4バルブ単気筒
最高出力:19kW(26ps)/9000rpm
最大トルク:22N・m(2.2kgf・m)/7300rpm
車体サイズ:全長2010mm×全幅740mm×全高1035mm
シート高:800mm
車両重量:158kg
価格(税込):51万4800円
250ccスーパースポーツの特徴とは?
以上のように、国内4メーカーだけでも、豊富なラインアップを誇るのがこのクラスだ。2気筒エンジン車が多いが、ほかにも単気筒から4気筒まで、多種多様のエンジンタイプを揃える。
特に、ホンダのCBR250RRや、ヤマハのYZF-R25、カワサキのZX-25R/SEは、各社がスポーツモデルのフラッグシップにすえる1000ccスーパースポーツをイメージしたスタイルなどが特徴だ。
世界最高峰の2輪レース「MotoGP」や、市販車ベースのマシンで競う「WSBK(スーパーバイク世界選手権」などに参戦するワークスマシンからの技術をフィードバックしたのがこれら1000ccマシン。それを源流とするという意味では、250ccスーパースポーツについても、1980年代から1990年代に一斉を風靡したレプリカマシンに近い存在だといえる。
ただし、当時の250ccマシンは、実際に当時の最高峰レース「WGP(世界グランプリ)」に参戦する2スト250ccレーサーをイメージしていたから、厳密には同じではない。
あえていえば、ホンダ「CBR1000RR-Rファイヤーブレード/SP」やヤマハ「YZF-R1/M」、カワサキ「ニンジャZX-10R/RR」といったハイパーマシンたちの血統を受け継ぐ兄弟車といったところだろうか。スポーツバイクやレース好きユーザーの多くが憧れる大排気量マシンが持つイメージを受け継ぐことで、その世界観を演出している。
ただし、唯一スズキだけは、同社の最高峰スポーツモデル「GSX-R1000R ABS」と、GSX250R ABSやジクサーSF250を区別しているような車名となっている。あくまで、これら2モデルは、街乗りも快適な軽二輪といった性格付けで、あまり「サーキットも楽しい」などの高性能さをうたってはいない。
実際に、装備も、あまりレーシーなものは少なく、CBR250RRやZX-25R/SEのように電子制御システムも採用していない。その分、他のモデルと比べ、かなりリーズナブルな価格となっていることが大きな魅力のひとつといえるだろう。
ちなみに、GSX-R1000R ABSは、2022年に生産終了となった(平成32年排出ガス規制の影響だとされている)。他メーカーが1000ccスーパースポーツを揃えているのに対し、スズキだけ国内に最高峰クラスのマシンを設定していないのは残念だ。
魅力はレーシーなスタイルと価格
では、250ccスーパースポーツには、多くのユーザーを惹きつけるどんな魅力があるのだろうか? それは、まず、レーシーなスタイルだろう。特に、最近のモデルは、戦闘的なフェイスデザインやシャープなテールまわりなどを持つ機種が多く、スポーティなバイクを好む若者世代から支持を受けている。
また、リターンライダーについても、特にレプリカ世代であれば、子育てなどで一旦バイクを降りたものの、子どもが成長し独立したことなどを契機に、再びバイクに乗りたいと思った時には、やはりフルカウルモデルを選ぶユーザーも多いだろう。
若い頃に乗ったホンダ「NSR250R」や「TZR250R」といったレーサーレプリカのイメージを、現代の250ccスーパースポーツなら重ね合わせやすいからだ。当然、なかには、当時モノの中古車を探して乗りたいユーザーもいるだろうが、当時のレプリカは現在、中古車の価格が高騰しているという背景もある。
なにせ、例えば、NSR250Rなどの場合、状態がいい中古車には200万円以上の価格が付いているケースもあるほどだ。また、故障などで状態が悪い車両を安く手に入れたとしても、レストアするには費用と時間がかなり掛かり、乗り出すまでのハードルはかなり高いケースも多いといえる。
一方、現行モデルの250ccスーパースポーツなら、100万円を切る値段で購入が可能。久々に購入するバイクにあまり費用を掛けられないリターンライダーであれば、必然的に250ccスーパースポーツを選ぶことは容易に想像がつく。
しかも、こうしたクラスは、軽二輪だから車検がなく、維持費も安い。それでいて、高速道路も乗ることができるから、長距離ツーリングなどにも使える。よりリーズナブルに楽しめるという点も、初心者やリターンライダーに注目される理由のひとつだといえるだろう。
扱いやすさや足着きのよさも最適
しかも、車体がコンパクトなため、駐車場などでの取り回しもよく、細い路地などでのUターンもしやすい。また、1000ccスーパースポーツを比べると、足着き性が断然いい。シート高自体も、例えばCBR1000RR-Rが830mmなのに対し、CBR250RRは790mmと40mm低い。
その上、最近の1000ccスーパースポーツは、サーキット走行でのポテンシャルを考慮しているためか、乗車時にあまりリヤサスペンションが沈み込まないため、身長165cm、体重59kgと小柄な筆者などは、またがると足がツンツンとなる場合がほとんどだ。つま先でバイクを支えるような感じとなり、いつ立ちゴケするのか不安になる。
その点、250ccモデルでは、ちゃんと車体後方が沈むこともあり、足着きは良好。シート高の差以上に、安心感が高い。そして、こうした差は、ホンダだけでなく、他メーカーのモデルでも同様だといえる。
さらに、200psを超える1000ccスーパースポーツの圧倒的パワーに比べると、250ccモデルは「扱いきれるパワー」だ。特に、初心者はもちろん、久々にバイクへ乗るリターンライダーの場合は、乗り方を忘れている人も多いという。
以前、ヤマハ主催のライディングスクールを取材した際に聞いたのだが、スクールに参加したリターンライダーの中には、発進時にクラッチミートをすることすら忘れてしまっており、エンストを繰り返す人もいたのだという。
そうしたライダーが、もしハイパワーの1000ccマシンに乗ったら、有り余るパワーによりかなり危ないケースもあるだろう。自分の感覚を取り戻すことも含め、もし久々にバイクへ乗るのであれば、まずは250ccクラスあたりから始める方がいい。
だが、どうしても1000ccモデルに乗りたいのであれば、まずはレンタルバイクなどを借りてみて、自分がちゃんと乗りこなせるのかを一度試してみることをおすすめする。
サーキット走行でも実は速い!
もちろん、250ccスーパースポーツにも、デメリットはある。1000ccクラスと比べれば直線などは当然遅く、電子制御などの最新装備も劣る。なので、1000ccや600ccなどの大型スーパースポーツをある程度乗りこなせるライダーであれば、250ccクラスのパワーに物足りなさを感じるかもしれない。
だが、実は、サーキットの走行会などでは、250ccのスーパースポーツで、1000ccクラスのライダーをぶち抜く強者もいる。特に、ベテランのエキスパートライダーなどが、筑波サーキット2000など、長い直線が少ない、テクニカルなコースを走る場合は、あえて250ccクラスを選ぶ人も多いようだ。
筑波にも、437mのバックストレートがあり、そこでは200km/hを超えるスピードが出せる1000ccクラスが断然有利なのは間違いない(250ccクラスでは、おそらく150km/h台だろう)。だが、圧倒的に多いタイトコーナーなどでは、250ccクラスの方がコーナリングスピードが速く、実は周回タイムにあまり差が出ない。
また、バックストレートでも、例えば、体重が軽い女性などで、筑波を上手く走れるライダーの場合は、250ccのバイクでもかなり車速が伸びる人もいる。ライダーとマシンの両方が軽い分、加速が鋭いからだ。
実際に、筆者も、ホンダ「CBR650R」で筑波サーキットを走るのだが、そうした250ccの女性ライダーに、バックストレートで全く追いつかず、ぶっちぎられた経験がある。648cc・4気筒エンジンを搭載する筆者のバイクは、最高出力95psを発揮し、筑波のバックストレートでは180km/h以上出る。直線なら、スペック的に250ccマシンよりも速いはずなのだ。
だが、筆者より上手く、たぶん体重も軽い彼女は、手前の第2ヘアピンから早めにアクセルを開けて俊敏に立ち上がり、後を走っていた筆者のバイクをグングンと引き離した。おそらく、アクセルを全開にする時間が筆者より長く、バイクとライダーが軽いために最高速度に到達する時間も短いためだろう。あっという間に見えなくなってしまった。
つまり、腕がものをいうコースであれば、サーキットでも250ccのスーパースポーツは、乗る人が乗れば速いということだ。特に、筑波では、CBR250RRやニンジャZX-25Rに乗る上手いライダーが多い。きっと、そうした人たちは、1000ccなどの大型スーパースポーツを追い回したり、ぶち抜く快感を味わっているのだと思う。
ともあれ、扱いやすいことで、初心者やリターンライダーがライディングを楽しめるのはもちろん、上手いライダーが乗れば意外に速いのが250ccのスーパースポーツだ。
数々の魅力を持つこのクラスが、これからも高い人気を誇り、今後も各メーカーが多くの魅力あるモデルを出し続けることは想像に難くない。