最新モデルなのに懐かしさを感じる操縦性。空冷エンジンも心地よい。|ロイヤルエンフィールドハンター350新車試乗記

増強されるバリエーション展開、カスタム市場にも積極的な姿勢を示す。そんなロイヤルエンフィールドは1901年創業、世界最古のオートバイブランドとして知られている。去る3月7日、日比谷公園内松本楼にて新型HUNTER 350の報道発表会が開催された。アジア太平洋市場担当事業責任者であるAnuj Dua(アヌージ・ドゥア)さんとのライブ通信を中心に開発のお話を伺い、一般道でのプチ試乗も行われた。

REPORT●近田 茂(CHIKATA Shigeru)
PHOTO● 山田俊輔(YAMADA Shunsuke) /ピーシーアイ株式会社
取材協力●ピーシーアイ株式会社

バーエンドミラーやスクリーン等、純正アクセサリーパーツ装着車。

ロイヤルエンフィールド・HANTER 350…….657,800円〜

Rebel Blue…….664,400円

カラーバリエーション

Rebel Black…….664,400円
Rebel Red…….664,400円
Dapper Ash…….657,800円
Dapper White…….657,800円
Dapper Grey…….657,800円
ロイヤルエンフィールドは創業120年を超える老舗ブランド。
ベーシックな造りから、カスタムを楽しむベースにも人気。
ハンター開発コンセプトの元になったと言われる500 Fury (写真は1960年製)

そのブランド名は日本でも古くから知られていたが、精力的な新製品開発と販売展開でバリエーションが充実され出したのはここ数年のこと。
ミドルクラスに的を絞った製品を揃え「乗って楽しむを大切にする」一貫したコンセプトワークは、結果的に好評を得て、イギリスやニュージーランドと韓国では同クラスでトップシェアを獲得。タイ市場では2位、オーストラリアで3位。日本市場でも輸入車ブランドとして早くも5位に入る販売実績を誇っている。カスタムを楽しむベース車としても注目を集め、ツーリングイベントの開催も評価され、世界のマーケットで広く受け入れられている。
古きブランド・モデルをオマージュしながら投入されるニューモデルの数々は、なかなか新鮮で独自の魅力を放っているようだ。

今回投入されたハンター350は、既に発売されているメテオやクラシックと同じJプラットフォームを共用した派生モデルで、搭載エンジンも基本的に共通。
街で気軽に乗れる便利な乗り物を開発したいと、手頃な移動手段として軽量で小型なバイクをリリース。先行発売されている各国市場では若いライダーを始め多くのユーザーに受け入れられていると言う。多彩な使い方に対応するモデルを「気持ちの若い人」にお届けしたいというのが開発の発端になったそう。
主な特徴は、①乗りやすい、②俊敏性が高い、③市街地で快適に乗れる、④軽い車体、⑤現代的でスタイリッシュ、⑥日々手軽に乗れる、以上の6項目。
イメージされたのは、かつて存在した「Fuly 500」だそう。開発スタッフはデザインチームと共に協議検討を重ね、そのデザインワークには数年を費やしたと言う。
メインフレームや搭載エンジンこそ共用するものの、リアフレームはオリジナルの設計が加えられている。そして何よりもクラシック350と大きく異なっているのは、前後ホイールに17インチサイズのチューブレスタイヤを採用している点。
フロントフォークはラバーブーツ付きφ41mmの正立式テレスコピックタイプを採用。キャスターアングルも少し立てられている。リアのツインショックには、黒い等ピッチコイルスプリングと作動性に優れるエマルジョンタイプのダンパーを採用。フロントは130mmのストロークを、リヤはホイールトラベルで102mmのストロークを備えている。
エンジンはクラシック350と共通でボア・ストロークが72×85.8mmというロングストロークタイプの空冷2バルブOHC単気筒。349ccの排気量はもちろん、20PS/6,100rpmの最高出力や27Nm/4,000rpmの最大トルクも同じ。
5段リターン式のトランスミッションも、減速比は全て共通。1次2次減速比も同じ。ただし後輪はクラシックの120/80-18から140/70-17インチに換わっているので、タイヤ周長が5%ほど短くなっているもよう。総合減速比でも少し低くなり、キビキビした走りに貢献しているもよう。
ライディングポジションは市街地と郊外での快適性に配慮して設計された。前述の通りホイールサイズの変更で、クラシックよりはスポーティな運動性能が高められていることが想像できるが、果たしてその乗り味は如何なるものだろうか。

3次元CGも活用されるデザインワーク。
350cc単気筒エンジンの透視図。

ダミー ダミー

多くのデザインスケッチが描かれる。
最終案を基に実寸のクレイモデルが製作され、さらに検討が重ねられる。
テクニカルセンターはイギリスとインドにある。ハンターの開発途上を捉えたデザインスタジオでの開発作業風景。

アクセントカラー描写が加えられた最終スケッチのひとつ。力強さを感じさせる仕上がりだ。

穏やかな出力特性を軽快に楽しむ

試乗は数十分に過ぎず、近所の丸の内オフィス街や皇居周辺道路を走行した。
先ず印象的だったのは、ミドルクラスとしてとても手頃な車格感を覚えたこと。足つき性チェックの写真からわかる通り、シートに跨がると両足はベッタリと地面をとらえることができた。両膝にも余裕があり、バイクを支える上でとても安心感がある。
シート高は790mm。ライバルとして頭に浮かぶホンダ・GB350Sの足つき性もそれほど悪くはないレベルだったが、シート高は800mmで両足の踵が少し浮いていた。
車体サイズもハンター350はGBよりひとまわりコンパクト。全長で75mm、ホイールベースで70mm小さく、多くの人にとって親しみやすいと感じられることだろう。
なるほど、各市場で多くの注目を集め、高い人気を獲得している要因は、その程良く親しみすい車格感にあると思えたのがスタートして直ぐに感じられた第一印象である。
その割にハンターはズッシリと重量感のある手応えを覚える。やや大柄なGB350Sは168kg。対するハンター350は181kgあるだけにそう感じられたのは無理もないだろう。ついでに言うとクラッチレバーの操作力もハンター350の方が重く感じられる。走り始めてしまえば、車重の重さは欠点として感じられるのではなく、むしろ適度な落ち着きが、ツーリング用途に心地良い乗り味としても感じられる。
穏やかな雰囲気と確かな直進安定性に、相性の良いエンジンとのハーモニーで言うとクラシック350の乗り味も侮れない魅力を覚えるが、峠道での身のこなしや、市街地で少しシャープさを増したハンター350のハンドリングもまた好感触。古い時代を知る筆者にとっては、どこか懐かしさを覚える標準的な操縦感だ。街で乗りやすいスタンダードスポーツとしての仕上がりが好印象なのである。
 

柔軟な出力特性を発揮するロングストロークエンジンが、むしろクランクマスが軽めなスクラム411の様な軽快感を発揮する出力特性の方が車両全体の雰囲気により似合ってくるのではないかと思えたものの、普段使いのバイクとしてハンター350のパフォーマンスは十分に不足の無いポテンシャルが備わっている。
小回りUターンも含めて街を駆ける操縦性は素直で扱いやすいし、適度な落ち着きがあってなかなか快適。
かつてスーパースポーツからレーサーレプリカへと熾烈なパフォーマンス競争が繰り広げられた中で忘れ去られてしまったスタンダードスポーツとしての実用的な心地良さが体感できる。その程良くバランスの良い総合性能が発揮されていることに改めて価値ある存在感を覚えたのである。
データ的な高性能を欲張らないのなら、多くのユーザーにとって、良い選択肢のひとつになるだろう。
なおメーターディスプレイにタコメーターは装備されていない。装備の必要も感じない柔軟で扱いやすいエンジン特性も秀逸。
あえて外付けのタコメーターを装備してチェックすると、アイドリング回転数は1,100rpm。ローギヤで5,000rpm回した時のスピードは39km/h。5速トップ50km/hクルージング時のエンジン回転数は2,250rpm。つまり100km/hクルージングなら4,500rpmでこなせる。
また、あえてスロットル全開で引っ張ると決して俊敏ではないが、7,000rpm付近までは難なく吹き上がる気配を見せてくれた。心穏やかに走れる標準的なミドルスポーツとしてなかなか個性的かつ魅力的なモデルである。

足つき性チェック(身長168cm/体重52kg)

ご覧の通り、両足はベッタリと地面を捉えることができる。それなりに重量感を伴う乗り味だが、バイクを支えるのは楽で不安はなく扱いやすい。

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著者プロフィール

近田 茂 近影

近田 茂

1953年東京生まれ。1976年日本大学法学部卒業、株式会社三栄書房(現・三栄)に入社しモト・ライダー誌の…