チューニングエンジンに欠かせない装備が強化オイルポンプ。引き上げたエンジン性能に対して純正ポンプでは十分な潤滑性能が確保できないからだ。だが、ノーマルエンジンでも強化ポンプに変更する意味はある。冬季の朝などオイルが冷えて固い状況でエンジンをスタートすると、エンジンが温まるまで油圧は非常に高い。その状態で走り出すと各ガスケットなどに余計なストレスを与えることになる。
また高回転を常用するような乗り方をする場合も同様で、オイルの潤滑性能が純正ポンプでは足りない状況を生み出す。そこで検討したいのが強化オイルポンプへの変更なのだ。そこで今回はモトチャンプが各種動画を無料配信しているモトチャンプTVで公開している「新型ダックス125にSP武川の新作強化オイルポンプを組んでみる!」という会に触れたい。強化ポンプの特徴ととともに、DIYでオイルポンプを交換する手順が紹介されているからだ。
正式には「スーパーオイルポンプキット(リリーフバルブ機構付き)」という製品名で、価格は7,920円(消費税込み)とお手頃。このポンプが新形になった最大の特徴は、リリーフバルブ機構を備えていること。吐出量を引き上げるだけでは高回転を常用している場合、オイルパンの内部に溜めておくオイルが減ってしまいエアを噛む事態になる場合がある。そこで高回転時の高い吐出量に対してリリーフバルブを設けて不要なオイルを元に戻せるようになっているのだ。純正エンジンであっても安心して使える強化ポンプと言えるだろう。
オイルポンプ交換手順
オイルポンプを交換するにはマフラーを外してエンジンオイルを抜く準備が必要だ。ダックス125のマフラーを脱着するには以前に紹介した「プロが教える、ダックス125のマフラー交換手順と着脱のコツ」という記事を参照いただきたい。純正マフラーから社外マフラーへの交換手順だが、純正マフラーを外す方法を紹介しているので参考になるはずだ。
続いてスイングアームピボットナットとボルトを外して右ステッププレートを外す。ステッププレートにはリヤブレーキのマスターシリンダーがあるため、外したからといって車体から切り離すことはできない。そのまま下へ置くとブレーキホースに余計な負担をかけることになって危険なので、決して放置しないこと。
ではどうすべきかと言えば、ステッププレートごとグラブバーなどから吊り下げていけばいいのだ。ヒモや針金で固定しつつ、ボディやパーツに傷をつけないようウエスで養生しておくといいだろう。これならブレーキホースに負担がかからない。
続いてクランクケースカバーを外す前にひと手間かける。というのもそのまま外してカバーを元に戻そうとすると各種ハーネスなどを挟み込む原因になるからだ。まずエンジン本体にあるO2センサーのハーネスを固定しているクランプから外してシリンダーのフィンなどに仮止めしておく。さらにステッププレートを外すときに引き抜いたリヤブレーキスイッチのハーネスなどは、ボディの内側へ押し込んでおく。
クランクケースカバーは8ミリ頭のボルトで固定されているので、対角線ごとにボルトを緩めてから外す。ボルトの長さはどれも同じなので、神経質に保管しなくても大丈夫だ。またボルトは先に下側から抜いておくと、カバー内に残ったオイルで周囲を汚さなくて済む。
クランクケースカバーを手で引き抜くように外すと、高確率で外れるのがクラッチリフターカムプレート。そこでカバーを外すときにプレートを受けるように下側をエンジン側に寄せておくといいだろう。またプレートで押さえているクラッチリフターカムまで外れてしまうこともある。その場合、上写真のように丸いマーキングとボルトの溝にある垂直の溝を合わせるようにして固定する。
いよいよ純正オイルポンプを外す。ここはボルト3本で固定されているだけなので、ボルトを外したら手で抜くことができる。ただし内側に2本のノックピンがあるため、水平に抜くしかできない。
ポンプを外した時にノックピンがエンジン側へ残っていればいいが、オイルポンプについてきてしまったら外してエンジン側に戻しておこう。というのも、ノックピンはSP武川製ポンプキットには付属していないため、強化ポンプ装着時に再利用するからだ。
同様に純正ポンプ表面にも2本のノックピンとガスケットがついている。これも外してSP武川製ポンプへ再利用することになる。またガスケットは新品を用意しておくのが確実だ。
SP武川製ポンプへノックピンとガスケットを移植する。指で押さえている2本のピンがそれだ。この状態にしてからポンプ内へエンジンオイルを少量で構わないので入れておく。
最後に強化ポンプを装着したら完成。3本のボルトは必ずトルクレンチを使って規定トルクで締め込みこともポイントだ。ただ場所が狭いため、遠心クラッチを外すと作業性が上がる。そのためには遠心クラッチ用の工具が必要になるため、トルクレンチに使える薄いソケットを用意しておくといいだろう。
最後にクラッチケースカバーを戻してハーネスを元の位置で固定、ステッププレートをスイングアームピボットへ戻したら完成だ。その前にクラッチケースカバーを戻すときのポイントを紹介しよう。キットには新品ガスケットが含まれているので、必ずクラッチケースカバーを脱着する場合は新品ガスケットを使用すること。またカバーを取ると同時に外れてしまうクラッチリフターカムプレートは、嵌め込む時に薄くグリスを塗布しておくと作業中に外れることなくスムーズに作業できる。塗布するといっても極薄くだけに止めることもポイントだ。