ロイヤルエンフィールドのミドルサイズクルーザー、スーパーメテオ650。

ミドルクラスを中心に躍進著しいロイヤルエンフィールドから、またひとつニューモデルが投入された。3月の東京モーターサイクルショーでお披露目され、大きな注目と話題を集めたSUPER METEOR 650が7月26に新発売されたのである。


REPORT●近田 茂(CHIKATA Shigeru)
PHOTO●徳永 茂(TOKUNAGA Shigeru)/ピーシーアイ株式会社
取材協力●ピーシーアイ株式会社



ロイヤルエンフィールド・SUPER METEOR 650…….979,000円(消費税込み)~

ロイヤルエンフィールド・Super METEO R650
ロイヤルエンフィールド・Super METEO R650
ロイヤルエンフィールド・Super METEO R650
ロイヤルエンフィールド・Super METEO R650
ロイヤルエンフィールド・Super METEO R650
ロイヤルエンフィールド・Super METEO R650

Interstellar Green…….998.800円

ロイヤルエンフィールド・Super METEO R650
ロイヤルエンフィールド・Super METEO R650

左の標準車をベースにツーリング・スクリーン、デラックス・ツーリング・デュアルシート、バックレスト&グラブハンドルを装備したのがTOURER(右)。

標準車3台の内左側2台は…….979,000円(中央は…….998.000円)。右側2台はTOURER…….1,039,500円

ロイヤルエンフィールド・ブランドで、クルーザーの歴史はCITYBIKEから始まっている。
数多くのスケッチから吟味するデザインワークにたっぷりと時間を掛け、洗練された最終スケッチが導き出される。
完成されたレンダリングスケッチは、CADを使ったスタイリングを経て、クレイモデルが制作される。
1分の1(実寸)スケールで制作されたクレイモデル。

着座位置の低いシートに腰を落とし込むように跨がり、プルバックハンドルに両手を添える。やや前方に位置するステップに投げ出した両足を乗せて、寛ぎのライディングスタイルを愉しむ。積極的にバイクをコントロールして走るスポーツバイクとはまた異なるテイストと魅力がそこにある。落ち着きのある乗り味に心穏やかな気持ちよさが感じられる。
今回投入されたスーパーメテオ650の開発コンセプトは、まさにそんな乗り味と雰囲気を備える「クルーザー」造りから始められたと言う。
ルーツを辿ると、1996年投入のCITYBIKEに端を発し、その後のLIGHTNINGやTHUNDERBIRDへと続く。直近では2020年にMETEOR 350がデビューしている。つまり今回のスーパーメテオ650はクルーザーシリーズの頂点に立つと同時に、エンジン排気量では、先に発売されたINT 650と並ぶ、同社のフラッグシップに躍り出たモデルと言えるのである。
余談ながら筆者にとって650ccという排気量は、堂々たる重量級モデルの響きが感じられる。なぜならバイクに興味を持ち始めた頃(1960年代)はナナハンが登場する前の時代で、アメリカのハーレーダビッドソンは別格としてスポーツバイクの最大級エンジンは650ccだったからだ。
ミドルクラスを中心にラインナップの充実を図り、グローバル市場で業績を伸ばすロイヤルエンフィールド。今後も新機種投入が予定されていると言うが、拡大路線がどこまで続けられるのかも興味深い。

さて、冒頭に記した様なクルーザーモデルを構築するために、先ずは低いシート高とライディングポジションを設定。そこに程良いホイールサイズを求めてフロント19、リア16インチに決定。今回の開発はそこからスタートした。クルーザーというバイクをピュアに愉しむためのデザインを追求。具体的にはサンダーバードランブラー500がベースになっている。
リラックスして楽に乗っていられるモデルを追求し数百枚ものデザインスケッチが描かれ、最終的にはCADを利用したスタイリングを経て実寸のクレイモデルが製作される。もちろんクレイとCADの間は何度も行き来しながら修正が重ねられ数年を要すこともあると言う。
また今回は、ゴージャスなテイストを加味し、LED ライトやトリッパー(簡易型ナビゲーション)を装備。ハンドルスイッチも新設計部品が使用され、プレミアム感の演出にも抜かりはない。
部位に応じて鋳造、鍛造、プレス鋼板を組みあわせたスチールフレームは、英国のテクノロジーセンターで新設計。押出材を使用したスイングアームは楕円断面形状になっている。またフロントフォークはショーワ製の倒立式でダンパー機構の伸び側と圧側を左右に振り分けたSFF-BP(セパレートファンクション・フロントフォーク・ビッグピストン)が奢られた。   
搭載エンジンはINTコンチネンタルGTに搭載された648cc空冷2気筒エンジンを流用しているが、例えばクランクケースカバー等、細部は専用の物に化粧直しされている。ボア・ストロークは78×67.8mmというショートストロークタイプ。最高出力は47PS/7,250rpm。最大トルクは52.3Nm/5,650rpmを発揮。ちなみにこのデータは55年前のカワサキW-1とほぼ同等レベルである。
左右シリンダーの間にカムチェーンが通るSOHCでローラーロッカーアームを介して気筒当たり4バルブを駆動。クランク前方には1軸バランサーも備えられ、クレードルを持たないフレームにリジッドマウント。
ミッションは6速リターン式で、エンジンよりも前方に位置するステップにはシーソー式のシフトペダルが採用されている。
開発にはインド、イギリス、スペインのテストコースに加えて各地の市外地を含めて述べ100万km以上の実走テストを繰り返し、ユーザーそれぞれのニーズを踏まえて、より使いやすいモデルに仕上げられたと言う。
各ニーズに対応するためには、ソロツアラーやグランドツアラーがあり、純正のアクセサリーパーツでカスタマイズでき、それらを装備したモデルとして近日追加発売が予定されているそう。
なお、現在のバリエーションは上記の通りスーパーメテオ650と同ツアラーの2機種。カラーリングは全部で5タイプが揃えられている。

純正アクセサリーを活用して楽しめる二つのカスタムモデル。右のテーマは「ソロツアラー」、左は「グランドツアラー」で近日追加発売が予定されている。

程よい穏やかな乗り味が心地よい。

今回は御殿場を基地に、箱根周辺の一般道で開催された報道発表試乗会に参加した。INTERSTELLAR GREENの試乗車を受け取ると、先ずは落ち着いた佇まいのスタイリングが印象深い。
これまでの同社クルーザーは、サイズ的な見た目にどこか寸詰まった印象があったが、スーパーメテオ650は全体的に落ち着いた雰囲気の車体とそのボリューム感はとてもバランス良く優美な仕上がりが好印象。
堀の深い前後フェンダーデザインを始め、各部に見られる使用部品の仕上がりはなかなか美しく上質。太鼓状の膨らみがあるハンドルグリップを握ると重厚感が伝わってくる。    
高さ740mmのシートに腰を落ち着けると、それなりにドッシリとした重量を覚えるが、足付き性が良いせいか、手強い感触はない。体感的には220kg程度かと思っていたが、後で調べると241kgあり、その数値には少々ビックリ。ただ取り扱いに難があるわけではなく、その車格はとても親しみやすい。
両手両足を前方に投げ出すクルーザーらしいライディングポジションもサイズは大き過ぎることなく、日本の交通環境にも絶妙のマッチングを魅せてくれると思えた。
全体的にクラシカルな雰囲気も加味されたスタイリングは、至ってオーソドックスな仕上がりだが、アナログ表示式丸形スピードメーターの右隣には、液晶ディスプレイを採用した小径トリッパーの存在が新鮮。これは専用アプリをダウンロードしたスマホをBluetoothで連携することで、設定した目的地への方向(右左折等)と距離を表示する簡易型ナビゲーションのこと。早速チェックしようと思ったが、アプリのダウンロードにはオーナー登録等のひと手間が必要なのでここでは断念。ただ、既にアプリを入れたスマホとのマッチング作業は至って簡単で使い勝手は良さそうである。

シートに腰を落とし、プルバックハンドルを握る。前方に投げ出した足を前方に位置するステップに乗せると、ライダーの上体は直立から若干後傾ぎみとなる感じ。体重の全てがどっかりとシートに乗る感覚は、体荷重をアチコチに分散するように乗るスポーツバイクとはまるで異なり、身体全体の筋力からも緊張感が抜けて心底リラックスできる。
前方に広がる視界も広々とし、路面の流れる様子から前方に広がる青空まで、まるでパノラマの様に雄大な景色が自然と目に飛び込んでくる。
そこにプラスされるのが、中低速域から十分に良く粘る柔軟な出力特性が見逃せない。 特にライディング用のシューズを必要としないシーソー式のシフトペダル(の前方)を踏み込んでローギアにシフトしスタートすると、穏やかながらもまるで非力感のない加速性能を発揮する。スロットルレスポンスや回転変動具合に俊敏さこそ感じられないが、吹き上がりは意外にも軽快かつスムーズ。上まで引っ張ろうとは思わないが、あえて全開を続けると、7,000rpmあたりまでは伸び上がるであろう快活さも持ち合わせていた。
もっとも、クルーザーとしての雰囲気に相応しい走り方は、低い回転域をキープしつつ早め早めのシフトアップで静かに走るのが似合っている。トップギアに放り込んで、右手のスロットルだけで扱い、シフトダウンを不精するような操作でも難なく持ちこたえてくれる。そのフレキシビリティーに富む操縦性とゆとりある乗り味が心地良いのである。
箱根へ登る峠道でも40km/hをキープすればばスロットル操作だけで事足りてしまう。粘り強さと穏やかで頼れるトルク感は一級。クルーザーに相応しいエンジンは扱いやすく、なかなか魅力的であった。
フロント19インチホイールの直進安定性も実に心地よく車重も奏功して、全身に浴びる風を心地よく感じながらのクルージングはとても快適。
発進当初のタイトターンでは、ステアリングに若干の切れ込みが感じられ、それを当て舵ぎみでコントロールする感覚があったが、そんな癖も微妙なレベルに過ぎず、直ぐに慣れてしまった。
Rが異なるコーナーの連続でも寛ぎのラインディングの中でも操縦しやすい素直さと、良い意味で穏やかなエンジン特性とが相まって楽に走れたのが印象的だった。
ブレーキの扱いも自然で、効き味も自然な感覚。前後サスペンションも初期の作動性に優れ、乗り心地もなかなか良い。
落ち着いた心持ちで、自由気ままに穏やかな心持ちで景色の移ろいを愉しむ。適度に休憩を挟みながら軽く出かけてみる。そんなシーンに丁度良いクルーザーなのである。

古き時代においてはビッグツインと称したかもしれない、650ccの直(並)列2気筒エンジンを搭載。
様々な部材が組み合わされたスチール製フレーム。

足つき性チェック(身長168cm/体重52kg)

ロイヤルエンフィールド・Super METEO R650
ロイヤルエンフィールド・Super METEO R650

ご覧の通り、両足はベッタリと楽に地面を捉えることができる。シート高は740mm。車両重量は241kgと重いが、ステップの干渉もなく、乗降性は良い。バイクを支える不安も感じられない。

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著者プロフィール

近田 茂 近影

近田 茂

1953年東京生まれ。1976年日本大学法学部卒業、株式会社三栄書房(現・三栄)に入社しモト・ライダー誌の…