未舗装路もなかなかイケる、これは良い250ccアドベンチャーだ。Vストローム250SX試乗記

ネイキッドのジクサー250をベースに開発された軽二輪アドベンチャー、Vストローム250SXの日本仕様がついにリリースされた。生産国であるインド仕様との違いは、液晶メーターにスマホ連携機能がないことと、標準装着タイヤの製造メーカー、あとはサリーガードの有無ぐらいで、油冷単気筒エンジンのスペックなど主要諸元についてはほぼ共通となっている。日本市場では併売となる水冷2気筒のVストローム250より7万7000円安いこのニューフェイス、まずは単騎インプレッションをお届けしよう。

REPORT●大屋雄一(OYA Yuichi)
PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)

ディテール解説

ジクサー250/SF250と共通の249cc油冷SOHC4バルブ単気筒「SEP(スズキ・エコ・パフォーマンス)」エンジンを搭載。ボア径はGSX-R1000Rと同じφ76.0mmで、シム式ローラーロッカーアームやバルブ、リテーナー、ピストンなどにレースで培った解析技術を応用。冷却ファン付きの大型オイルクーラーにはガードを追加し、エアクリーナーのインテークカバーは省略している。6段ミッションの各変速比や、1次/2次減速比はジクサー250/SF250と共通だ。
ショートタイプのダウンサイレンサーはジクサー250と共通だが、マフラーカバーとテールカバーの表面処理をブラックとして差別化を図る。
ジクサー250のスチール製ダイヤモンドフレームをベースに、シートレールを専用設計としてパッセンジャーの快適性や積載性を向上。またスイングアームも専用設計とされ、リヤのホイールトラベル量をジクサー250の132mmから143.7mmへと増やしている。
フロントホイール径の17インチ→19インチ化にあたり、φ41mm正立式フロントフォークは前方へ30mmオフセットしたリーディングアクスルに。なお、ストローク量はジクサー250と同じ120mmで、フロントのブレーキディス径クはφ300mmからφ310mmへと拡大している。
リヤホイールは17インチで、セミブロック調の標準装着タイヤはインド仕様のMRF製からマキシス製のマックスプロアへ。こちらの方がよりグラベル向きとのこと。リヤのブレーキディスク径はジクサー250のφ220mmからφ240mmへ。キャリパーは前後ともバイブレ製で、デュアルABSのセッティングは250SX専用とされる。
リヤサスはリンクレスのモノショック。プリロードは7段階に調整可能で、標準位置は最弱から3段目。なお、車載工具にフックレンチは含まれていない。
全幅880mmはジクサー250より75mm広く、Vストローム250と共通だ。ハンドルにはナックルカバーを標準装備する。ワンプッシュでエンジンを始動できる便利なスズキイージースタートシステムを採用するが、その一方でハザードスイッチがないのは残念だ。
インド仕様のメーターは、スマホとの連携によってターン・バイ・ターンナビなども表示できる「スズキライドコネクト」を採用するが、日本仕様は見送られた。タコメーターは10,000rpm以上がレッドゾーンとされ、平均/瞬間燃費計や電圧計なども搭載する。
メーターの左側にはUSBソケット(定格5.0V 2A)が設置されている。イグニッションをオンにするとブルーの導光帯が点灯する仕組みだ。
縦3列配置のLEDヘッドライトはジクサー250から流用。ウインドスクリーンは肩の高さまでの防風効果を狙う。高さ調整機構はなし。
導光板を使用したLEDテールランプは先代ジクサー150から流用。前後ウインカーはフィラメント球(12V 10W)で、ナンバー灯はLEDだ。
シートは前後別体式で、リヤはキーロックを解除することで取り外し可能だ。ライダー側は座面をフラットとして着座位置の自由度を優先。一方、パッセンジャー側はインドでの横乗り(サリー乗りとも)に配慮し、座面を広く確保しつつクッション性の高いウレタンを使用している。グラブバーを兼ねるリヤキャリアはアルミダイキャスト製で、最大積載量は6kg。

Vストローム250SX 主要諸元

型式 8BK-EL11L
全長/全幅/全高 2,180mm/880mm/1,355mm
軸間距離/最低地上高 1,440mm/205mm
シート高 835mm
装備重量 164kg
燃料消費率 国土交通省届出値:定地燃費値 44.5km/L(60km/h)2名乗車時
WMTCモード値 34.5km/L(クラス2、サブクラス2-2)1名乗車時
最小回転半径 2.9m
エンジン型式/弁方式 EJA1・油冷4サイクル単気筒/SOHC4バルブ
総排気量 249cm3
内径×行程/圧縮比 76.0mm×54.9mm/10.7:1
最高出力 19kW〈26ps〉/9,300rpm
最大トルク 22N・m〈2.2kgf・m〉/7,300rpm
燃料供給装置 フューエルインジェクションシステム
始動方式 セルフ式
点火方式 フルトランジスタ式
潤滑方式 圧送式ウェットサンプ
潤滑油容量 1.8L
燃料タンク容量 12L
クラッチ形式 湿式多板コイルスプリング
変速機形式 常時噛合式6段リターン
変速比
 1速 2.500
 2速 1.687
 3速 1.315
 4速 1.111
 5速 0.954
 6速 0.826
減速比(1次/2次) 3.086/3.076
フレーム形式 ダイヤモンド
キャスター/トレール 27°00’/97mm
ブレーキ形式(前/後) 油圧式シングルディスク[ABS]/油圧式シングルディスク[ABS]
タイヤサイズ(前/後) 100/90-19M/C 57H / 140/70-17M/C 66S
舵取り角左右 35°
乗車定員 2名
排出ガス基準 平成32年(令和2年)国内排出ガス規制に対応

製造国 インド

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著者プロフィール

大屋雄一 近影

大屋雄一

短大卒業と同時に二輪雑誌業界へ飛び込んで早30年以上。1996年にフリーランス宣言をしたモーターサイクル…