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モーターファンBIKES編集担当の山田がスーパーカブを手に入れた。不動車になっていたのでキャブレターを外してオーバーホールを試みたところ、無事にエンジンは再始動した。ここまでは3回に渡り「はてさて、どうする!?」「キャブの外し方は結構簡単です」「キャブレターオーバーホールの方法と凡ミスの罠」と記事にしたので、未読ならリンクへ飛んでほしい。サクサク復活させるつもりが凡ミスを犯してプロの面倒になるという、なんとも失笑ものの顛末となった。けれど、AA01時代の特徴を理解してもらえることと思う。これでようやく我がリトルカブとのツーリングが楽しめるが、季節は真冬。いかに暖冬とはいえ、路面凍結や積雪の可能性がある時期に無理してツーリングすることもない。と思っていたら、山田がとんでもないことを言い出した。「雪道を走りましょうよ!」と……。
どこまで本心で言っているのか、好んで雪道を走ろうなどと思うのは一部のマニアかと思っていたが、山田の実家は豪雪地帯。雪とスーパーカブは身近な組み合わせなのだという。そもそも、筆者も山田も雪が降ったら確実に積雪になる田舎(一応首都圏ではあるが)に住んでいる。備えあれば憂なし。ツーリングまでせずともタイヤの冬支度は必要かもしれないと考え直した。
気になるのはスパイクタイヤで走っても良いのかということ。クルマの場合は一部地域と期間を除いて使用が禁止されている。先ほど話題にした北海道なら11月前後から4月頃までなら使用が認めらているが、本州以南では東北や北陸、山梨や長野・岐阜、鳥取や島根などを除いて使用してはいけない。これは自動二輪についても適用される法律で、違反すれば罰則を受けることになる。逆に積雪路を走る場合、4輪だけでなく自動二輪であっても冬用タイヤやチェーンを巻くなどの処置をしないと法律違反になる。ところが原動機付自転車、すなわち125cc以下の原付バイクであればスパイクタイヤを装着しても構わないのだ。
とはいえ、積雪や凍結していない路面でスパイクタイヤを履いた原付を走らせると違反になるし路面を削り粉塵を発生させるので控えたい。そこを踏まえたうえでスパイクタイヤやスノータイヤ、スノーチェーンを使用しよう。実はスーパーカブ用には各社からスノータイヤが複数発売されている。14インチと小径なリトルカブにもラインナップがあるので、路面を攻撃しないスノータイヤを選べば、何も問題ない。ただ今回はスパイクタイヤが雪道でどれほど優れているのか確認すべく、我がリトルカブに履かせてみることにした。
タイヤとチューブを編集部に用意してもらい、できるだけプロに頼らず自分たちでタイヤを交換してみよう。カブのタイヤぐらい楽勝でしょー、何事もやってみるべし。そこで今回はリトルカブの前後ホイールを外す方法をご紹介しよう。元に戻すときは逆の手順で行えばいいので、今回は外し方だけ紹介して、次回はタイヤ交換の手順へ続ける予定だ。
リトルカブからフロントタイヤを外す手順
それではまずフロントホイールから外してみよう。ホイールを外す前によくよく確認すれば誰にでもわかるのだが、フロントホイールはブレーキと一体で外すことになる。つまり、フロントブレーキを解除してスピードメーターケーブルを抜かなくては、アクスルシャフトを抜いてもホイールは外れないということ。ブレーキはアジャスティングナットと呼ばれる大きめの筒のような部品を外すことでロッドを抜くことができる。ナットは工具なしでも緩めることができる。ブレーキアームを手で操作して緩めることでナットを手で回せるのだ。
ナットが外れたらジャバラになっている部分ごとブレーキパネルからロッドを引き抜く。ここも工具なしで作業できるが、スピードメーターケーブルはプラスドライバーが必要。プラスネジを緩めることでブレーキワイヤーの上にある黒いスピードメーターケーブルを抜くことができる。
ブレーキロッドとスピードメーターケーブルを抜いたらタイヤを支えているアクスルシャフトを緩めよう。左右からメガネレンチなどをかけて同時に操作すれば緩めることができる。アクスルシャフトは手で引き抜くこともできるが、多くの場合硬くて手では抜きづらい。そこでナットを外した側からプラスチックハンマーなどで叩くことでシャフトの先端を引き出す。ここまですればアクスルシャフトを抜くのは難しいことではない。
アクスルシャフトが抜けたらブレーキパネルの溝に入っているサスペンション内側の突起部分をずらすようにして引き抜くことができる。ただしここで注意点。そのままフロントタイヤを外してしまうと、フロントフォークが落ちてきて地面と激突する場合がある。フォークが落ちてこないようエンジン下に支えを置いて固定すると、作業しやすくなるはずだ。
リヤタイヤを外す手順
リヤタイヤはブレーキロッドだけでなく、ブレーキング時の振れ止めとして機能するトルクロッドが接続されている。それなりに負荷のかかる部分なので、トルクロッドを留めるナットには割りピンが入って抜けないようにされている。まず割りピンをラジオペンチなどで起こして真っ直ぐにして引き抜く。曲げられていたものを真っ直ぐにするため、多少の歪みがある。そのためスムーズに穴から抜けないこともあるので、やはりペンチなどで引き抜くといい。
続いてリヤブレーキロッドを外す。フロントと全く同じで、ブレーキアームを手で操作するとアジャスティングナットが露出してくる。そのままナットを手で回せば工具なしで外すことができる。ちなみにカブシリーズはチェーンの弛みを調整するチェーン引きを緩めず、そのままでタイヤ交換ができるようになっている。
ブレーキロッドとトルクロッドが外れたらアクスルシャフトを抜いてタイヤを外そう。ところが、14インチと小径で車高がスーパーカブより低いリトルカブの場合、アクスルシャフトを抜こうにもマフラーが邪魔して抜くことができない。仕方なしにマフラーを外すことにする。スーパーカブよりも一手間掛ってしまうが、仕方がない。
マフラーはエキゾースト根元にある2本のフランジナットを外して、スイングアームピボットでサイレンサーを共締めしているナットを外せばフリーになる。だが、そのままで抜くことはできずブレーキペダルを下に降ろしながら、マフラーを知恵の輪を外すようにして回さないと抜けてくれない。一度覚えてしまえば難しいことではないので、何事も経験すべし。
邪魔者がいなくなったのでアクスルシャフトを引き抜くことができた。リヤタイヤをマフラーがいなくなった側へ傾けるようにすると、車体からタイヤを抜くことができる。またリヤ側はタイヤを外してもセンタースタンドが支えてくれるため、車体と路面の間に何も入れなくて大丈夫。以上、簡単だがちょっとしたコツがあるリトルカブのタイヤ外しだ。次回はタイヤを組み替える方法を紹介しよう。