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生成AIによるデザインとヤマハ発動機のノウハウの融合で実現した「Concept 451」
これからのモビリティデザインは、どのように進化するのか?長年培われたヤマハ発動機のノウハウやアセットと掛け合わさることで、どのようなシナジーが生まれるのか?
このような大きなアジェンダをもとに、ヤマハ発動機と、私のスタートアップFinal Aimが手を組み、生成AIとブロックチェーン技術を駆使して、農業向けのEVモビリティのプロトタイプ「Concept 451」を生み出しました。これまでにない独特なデザインのみならず、そのプロセスやマネジメントなどの手法が、その答えの一端を示しています。
小さなEVを、社会を変える力に – ヤマハ発動機が提案する汎用EVプラットフォーム「DIAPASON」
「DIAPASON(ディアパソン)」は、ヤマハ発動機が「YAMAHA MOTOR PLATFORM CONCEPT」として2023年に発表した1~2人乗りの低速EVプラットフォームで、特に都市部や農村地域での利用を想定しています。
このプラットフォームは、ヤマハ発動機の技術力を結集した開発により、車体のモジュール化やバッテリーの着脱など、幅広い応用が可能となっています。
共創パートナーとともに、普通自動車免許を必要としない小型低速EVモビリティを生み出し、車両開発の仕組みや多様化するニーズに対応することを目指しています。
そもそも生成AIとは?デザインに与えるインパクト
新しいプラットフォームをもとにした取り組みとして、これまでにないアプローチやテクノロジーを中長期を見据えて試すまたとない機会と捉え、生成AIによるデザインをプロジェクト初期段階から最重要ゴールに設定しました。
生成AI(Generative AI)とは、大量のデータを基に、新しいコンテンツやデザインを自動的に生成する技術です。従来のAIが、特定のタスクを効率的に実行したり大量のデータを識別したりする、プログラムされたルールベースのものであったのに対し、生成AIは、クリエイティブなアウトプットを生み出すという点が大きな違いです。
この違いにより、生成AIは、単なる分析や予測を超えて、テキスト、画像、動画、音声などのデータを作り出し、全く新しいアイデアやデザインを提案することが可能になりました。
操作方法も、自然言語によるプロンプト(指令文)だけでゼロベースからイメージを生み出したり、簡単なポンチ絵からアイデア展開も交えた高精度なレンダリングを、短期間で大量に生成することができます。専門的なプログラミング言語を駆使する必要がなくなり、直感的なUIによる操作でAIをコントロールできるようになり、ここ数年で利活用が爆発的に進みました。
一方で、課題も指摘されており、特に知的財産権に関する新たなハードルをもたらしています。生成AIによるデザインの著作権/意匠権/商標権の取り扱いについて、デザイン業界とデザイナーは新たな対応を求められています。生成AIはデザインの未来を切り拓く一方で、知財の管理や保護の在り方にも新たな視点がデザイナーに必要とされています。
ヤマハ発動機との本プロジェクトでは、この論点についても取り組み、安心・安全でオープンな生成AIによるデザインの利活用を実現しました。
生成AIがモビリティにもたらすデザインの可能性
改めて、デザインにおける生成AIのインパクトは非常に大きく、短期間で膨大な数のデザイン案を生み出すことで、従来のデザインプロセスを根本的に変革する可能性を秘めています。また、生成AIは人間の発想にとらわれない斬新なデザインを提案し、デザイナーの創造力を補完することで、これまでにない革新的なプロダクトの開発を後押しします。
そして、カーデザイナーのみならず、これまでモビリティに関わってこなかったプレイヤーやデザイナーも、クルマづくりに新たに参加するオープンな機会を創出できるのでは。
先ほどご説明したヤマハ発動機によるプラットフォーム「DIAPASON」と、全く新しいデザインの「道具」としての生成AIが掛け合わさることで、そのような未来の兆しも探りながらプロジェクトに取り組みました。
次回は、そのデザインプロセスの詳細をご紹介したいと思います。