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Audi charging hub
欧州以外で初のアウディ充電スポット
アウディ・チャージング・ハブは、2021年にドイツ・ニュルンベルクに開設されて以来、2022年にスイスのチューリッヒ、2023年にベルリン、オーストリア・ザルツブルク、ミュンヘン、2024年にフランクフルトとドイツ国内を中心に、ヨーロッパに設けられた充電スポット。このほど開設された東京・紀尾井町は、7拠点目で、欧州以外では初となる。なお、ニュルンベルグにある、アウディ初のアウディ・チャージング・ハブで充電するユーザーの約70%はリピーターだという。
もちろん、単なる充電スポットではなく、再生可能エネルギー(再エネ由来の電力)を使い、充電拠点の強化、充電速度の向上も盛り込んだ充電ステーションとなっている。
アウディは、フォルクスワーゲン、ポルシェとともに、CHAdeMO(チャデモ)規格の急速充電ネットワークサービス「プレミアムチャージングアライアンス(PCA)」を正規ディーラーで展開している。2024年4月時点で、急速充電拠点(150kW、90kW)は356拠点、そのうち150kWは97拠点に達している。
アウディ・チャージング・ハブは、PCA会員が利用できるのはもちろん、チャデモ規格に対応するすべての他ブランド(他メーカー)のBEVにも開放しているのが特徴だ。公共性の高い充電ステーションとなっている。
「Audi City 紀尾井町」の目の前という立地
アウディ ジャパン ブランドディレクターのマティアス・シェーパース氏は、2024年度の主な戦略として「チャージング・ネットワークの拡充とアップデート」「都市部ユーザーの課題にフォーカスを当てる」「ユーザーとともに実感できる進化とサスティナビリティ」を挙げた。
タワーマンションなどが林立する都市部では、自宅での充電などのいわゆる基礎充電が難しいという事情がある。東京都では、2025年度から新築マンションへの充電設備の義務化を決めたが、既存のマンションなどでは、BEVへの興味はあっても基礎充電設備の不備から購入を見送るケースもありそうだ。
東京都心部の一等地にある紀尾井町は、高級ホテルだけでなく、タワーマンションも増えていて、こうした潜在ユーザーにアピールする狙いもあるという。新たにオープンしたアウディ・チャージング・ハブは、「Audi City 紀尾井町」の目の前にあり、24時間365日稼働するアウディ・チャージング・ハブの存在により、都市部ユーザーの新規獲得とBEVユーザーの課題解決(充電設備の少なさと充電スピードの遅さなど)が狙えることになる。
さらに、ホテルや虎ノ門ヒルズなどの新スポットが続々と誕生している同地域では、ショッピングなどの空き時間(逆に、充電の空き時間に買い物をするも含む)に充電をする目的地充電、移動中に充電する経路充電のニーズも満たすことができそうだ。なお、アウディ・チャージング・ハブの隣には、コンビニもあるため便利そうだ。目の前の「Audi City 紀尾井町」でアウディの新型車をチェックしたり、コーヒーを飲んだりしながら充電完了を待つこともできる。
10%から80%への急速充電時間は31分
アウディ・チャージング・ハブの特徴は、最大で150kWの急速充電を含め、2基4口を設置をしたことにある。都心部の好立地で、大型EVも余裕を持って4台が同時に充電できる設備はなかなかないはず。同設備の天井にソーラーパネルを備え、隣に蓄電池を2つ設置。2つのシステムを並行して運用することになる。なお、太陽光パネルでは、アウディ・チャージング・ハブの運営に必要な電気を補っている。
充電器は、2023年1月20日に発表されたパワーエックスとの事業提携に基づき、パワーエックス社製の蓄電池型超急速EV充電器「Hypercharger(ハイパーチャージャー)」が採用されている。1基につき2つのポートを備え、BEV2台同時の急速充電が可能で、1台充電時の最大出力は150kW、2台同時の場合は1台当たり最大120kWの高出力で充電を行う。
日本では徐々に増えているとはいえ、充電拠点の不足だけでなく、充電時間が長いという課題も残っている。EV(車両)側の充電受入能力の問題はもちろんあるが、最大で150kWの急速充電に対応することで、例えばQ8 e-tronの場合、10%から80%への急速充電時間は31分(欧州仕様)を実現している。車種によるものの、30分充電できれば実用的な航続距離を確保できるはずだ。なお、150kWで充電した場合、航続距離100km分は、Q8 e-tronなら約8.5分間、e-tron GTなら約6.5分間で完了する。
急速充電30分無料体験キャンペーンも
また、アウディは車両のライフサイクルアセスメント(LCA)において、カーボンニュートラル化や再生可能エネルギーの利用を推進している。一例として、日本ではパワーエックス社製の蓄電池型充電器の導入、「Audi 浜松」におけるソーラーパネルの設置など、再生可能エネルギーへの切替などを進めている。
アウディ・チャージング・ハブは、ソーラーパネルと蓄電池の設置により、カーボンニュートラル化(再生エネルギーによる施設の運用)を進め、先述した都市部ユーザーの掘り起こし、kW課金への移行、予約機能の運用も視野に入れている。kW課金は、充電料金が「時間あたり〇〇円」ではなく、ガソリン1リッターあたり〇〇円のように「kWあたり〇〇円」としたり、予約機能も「〇〇日〇〇時から1時間予約」という時間指定だけでなく、「次(時間帯)の1時間を予約」するなど、多様な予約方法も検証するという。なお、「プレミアムチャージングアライアンス(PCA)」向けの予約だけでなく、他メーカーEVの予約方法も検討(テスト)していくそうだ。
先述したように、アウディ・チャージング・ハブは、アウディ、フォルクスワーゲン、ポルシェのBEVオーナー対象に提供されている「プレミアム チャージング アライアンス(PCA)」のメンバー以外も利用できるようになる。
新規オープンを記念し、2024年4月26日から6月30日まで、すべてのBEVユーザーを対象に、急速充電30分無料体験キャンペーンが提供される。充電器にある二次元コードを読み取り、必要情報を入力することで、1ユーザーにつき期間中最大2回まで、アウディ・チャージング・ハブでの急速充電が30分無料で利用できる。
なお、日本におけるアウディ・チャージング・ハブは、2025年に芝公園に開設予定となっていて、日本だけではない都市部での充電ニーズに、その国や地域での最速の急速充電で応えることになる。