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携行性も向上、まさにプロのためのiPad Pro
5月7日に発表された新型iPad Proはクリエイターの感性を強く揺さぶる製品に仕上がっている。イラストに興味がある人はもちろんだが、3Dのモデリングから動画の編集、そして音楽制作など、あらゆるクリエイティブのエッセンスがこの薄い1枚の板に収まっている。
これほどコンパクトでパワフルなクリエイター向けツールは他にない。新しいiPad Proには最新のM4チップが搭載。このチップにはAIの推論処理を行うNeural Engineに従来の2倍となる毎秒38兆回の演算を行える最新版を内蔵。これにより、クリエイティブツールでの作業は驚くほどスムーズになる。例えば、Final Cut Proでの動画編集では、AIが自動で背景と前景を分析し、不要な要素を取り除いたり、主要な被写体を自動的にフレーミングしてくれる。
操作性がアップしたApple Pencil Pro
Apple Pencil Proは従来のApple Pencilに比べ、握り込むことでツールパレットを呼び出す“スクイーズ”という機能が追加。この操作がツールを切り替える際の手間を大きく下げる。さらに画期的なのがペンを回転させる“バレルロール”という新しい操作だ。筆を回転させながら多様な筆致を描くカリグラフィーの技術をデジタルで再現できるほか、筆使いや変形操作、あるいは複数の画材を混ぜるといったアナログ的な操作を回転で表現できる。3Dモデリングの編集でも大活躍で、立体物に対してツールを回転させながら形を整えることができ、2D画面上でのスケッチをしているかのように滑らかなモデルを作れる。
このようにクリエイターツールとして、新たな領域に踏み込んだ新型iPad Proだが、アップルは今回、iPad用Final Cut Proと音楽制作ツールのiPad版Logic Proの新バージョンを公開している。中でもLogic Proに組み込まれたAI駆動のバーチャルプレイヤーは楽しい。コード進行を決めて簡単な指示を行えば、自動伴奏をつけてくれるのだ。コードなどの基本的な知識さえあれば、音楽制作を楽しくこなすことができる。デモ演奏を演奏パートごとに分割するステムスプリッターも素晴らしい。
新しいMagic Keyboardは必須アイテム
Ultra Retina XDRディスプレイも見逃せない。OLEDパネルを2枚重ねた構造を採用することで、HDRコンテンツの表示にも対応できる高輝度を確保しながらも、OLEDで心配な焼きつきがしにくい。画質面でも初期調整が追い込まれているため、暗部から明部まで一貫性のある諧調表現と、驚くほどの鮮明な色彩を再現できる。写真現像時に信頼できるディスプレイとしても利用できるが、本格的な映像制作の現場でもポータブルなリファレンス用映像モニターとして使いたいと思うはずだ。
一方で一般的なテキスト入力や文書編集も改善している。新しいMagic Keyboardは従来より薄く軽量になりながらも、ファンクションキーとより大きなトラックパッドを備える。トラックパッドは圧力センサーとハプティックエンジンによるクリック感で、まるでMacBookを使っているかのような感覚。実に妥協のない仕上がりだ。
REPORT/本田雅一(Masakazu HONDA)
PHOTO/小林邦寿(Kunihisa KOBAYASHI)
MAGAZINE/GENROQ 2024年 8月号
PRICE
21万8800円〜
評価
iPad Proの真骨頂は徹底して追求された品質にある。高機能かつ高性能なだけではなく、画質、音質、描き心地など感性に根ざした要素にまでこだわった製品だ。
性能:5
操作性:5
コストパフォーマンス:3
ディスプレイ:5
ペン入力:5
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