新型「メルセデス・ベンツ CLEクーペ」に試乗

850万円のミドルサイズクーペ「メルセデス・ベンツ CLEクーペ」がお買い得といえる理由

従来のCクラスクーペとEクラスクーペの間を埋めるべく登場した「CLEクーペ」。
従来のCクラスクーペとEクラスクーペの間を埋めるべく登場した「CLEクーペ」。
クーペがニッチな存在になりつつある現代に登場したミドルサイズクーペ「メルセデス・ベンツ CLEクーペ」。従来のCクラスクーペとEクラスクーペのエリアをカバーする最新クーペに試乗した。

Mercedes-Benz CLE 200 Coupe Sports

難しい時代のミドルサイズクーペ

試乗車はスペクトラルブルーメタリックのボディカラーが美しい。リヤフェンダーの盛り上がりが“走る”感を演出していて気分が上がる。
試乗車はスペクトラルブルーメタリックのボディカラーが美しい。リヤフェンダーの盛り上がりが“走る”感を演出していて気分が上がる。

SUV全盛の自動車市場にあって、セダンはもはやクーペのようなニッチな存在になりつつある。ではクーペは? もはや2ドアという外観だけで、さらにニッチなスポーツカーの領域に落とし込まれるのではなかろうか? そんな難しい時代にミドルサイズクーペ「メルセデス・ベンツ CLEクーペ」はデビューした。

メルセデスはSクラス、Eクラス、Cクラスと展開していた4シータークーペラインナップをいったん整理して、従来のCクラスクーペとEクラスクーペの間を埋めるべくCLEクーペを登場させた。ただし、ボディサイズはEクラスクーペとほぼ同じで、全長4850mm(Eクラスクーペ比+5mm)、全幅1860mm(同値)、全高1420mm(-10mm)、ホイールベース2865mm(-10mm)となっており、実質的にメルセデスの4シータークーペは、Eクラスクーペに集約されたと考えるべきだろう。

CLEクーペのお得感とは?

なお本稿執筆時点の7月現在、Eクラスクーペはまだ公式ウェブサイトのラインナップに存在している。E200クーペスポーツ(935万円)とAMGのE 53 4マティック+クーペ(1468万円)の2グレードで、これはCLEクーペのラインナップ、CLE 200クーペスポーツ(850万円)とAMG CLE 53 4マティック+クーペ(1290万円)と同じだ。ほぼ同じボディサイズとそれなりの価格差を考えるとCLEクーペのお得感が際立つ。

しかも同じM256型3.0リッターを積むAMG 53はまだしも、E200クーペは1.5リッター直3ターボエンジン(184PS、280Nm)である。何よりも恥を忍んで申し上げると、EクラスクーペとCLEクーペのエクステリアは非常に似ている。だから、最新のCLEクーペかEクラスクーペで悩んでいるなら、新しくて(後期型Eクラスクーペは2020年デビューだ)、エンジンの性能も高くて、中身も新しいのに安いCLEクーペを選ぶしかない、というのが結論だ。

ちなみに850万円のCLE200は、セダンのE200アヴァンギャルド(894万円)や718万円のC200アヴァンギャルド※MP202402(1.5リッター直3ターボだが)と比較しても、目移りしそうな価格設定である。

東京〜名古屋間も難なくこなせそうな室内

今回は6月に発表された3.0リッター直6ツインターボを搭載するAMG仕様のCLE 53ではなく「CLE 200」に試乗した。スーパーカーメディアのゲンロクWebという媒体の特性上、AMGなど尖ったクルマにばかり乗ってきたが、CLE 200はいたって普通のパワートレインである。

試乗車はスペクトラルブルーメタリックのボディカラーが美しい。リヤフェンダーの盛り上がりが“走る”感を演出していて気分が上がる。オプションのレザーエクスクルーシブパッケージ(90万円)を備えており、ヒーターとベンチレーター機能付き本革シートはもちろんヘッドアップディスプレイやブルメスター3Dサラウンドサウンドシステムまでついてくる。なおシートにはリラクゼーション機能(マッサージ機能と言ってはいけないらしい)も備えており、東京〜名古屋間も難なくこなせそうだ。後席は思いのほか広く、東京〜名古屋間は厳しいが、近所の買い物などなら十分使用に耐えると感じた。なおトランク容量も420Lと十分なサイズがあり、その辺りの実用性は意外と高い。

乗り込んでまずはナビで目的地を設定する。CLEには1名乗車の場合、音声アシスタントに「Just Talk」機能が備わり、「ハイ、メルセデス」のキーワードを言わずともボイスコマンドが入力できる。第3世代MBUXの音声入力が秀逸なのは改めて言及するまでもない。今回も一発で目的地が設定できた。

完璧なISGの制御

試乗車はオプションのドライバーズパッケージ(40万円)を装備しており、ダイナミックボディコントロールサスペンションやギアレシオが早くなるダイレクトステアリング、20インチタイヤのほかリヤアクスルステアが備わる。

冒頭に書いたとおり、2ドアという時点でスポーツカーかスペシャルティカーという存在にならざるを得ない昨今だが、CLE200は2.0リッター直4ターボエンジンに第2世代ISG(インテグレーテッド・スターター・ジェネレーター)と9速ATを組み合わせた、いわゆるマイルドハイブリッドパワートレインを搭載する。毎度のことながらISGの信号待ちでのアイドルストップからの再始動に至るマナーは素晴らしいと感心する。

一方で2.0リッター直4ターボエンジンは最高出力204PS/5800rpm、最大トルク320Nm/1600〜4000rpmと至って普通のスペックだ。C 63などのスポーツモデルに搭載される2.0リッター直4ターボ(476PS/6750rpm、545Nm/5250〜5500rpm)がどれだけ研ぎ澄まされた性能を持っているか改めて考えさせられる。

ドライバーズパッケージとパノラミックスライディングルーフを装着した試乗車の車両車重は1800kg(車検証でフロント960kg、リヤ840kg)でややフロントヘビーとなる。ダイナミックセレクトと呼ばれるドライビングモードはエコ、コンフォート、スポーツ、インディビジュアルが選択でき、サスペンションのセッティングや変速制御が変更できるが、スポーツモードにして頑張って走るような気は起きにくい。ダイナミックセレクトは、センターの11.9インチメディアディスプレイの左下にひっそりとあるスイッチで変更できるのだが、この控えめな位置から言っても、あまり積極的にモードを切り替える類いのものではないと感じた。

通勤に使って夜の市街地をゆるっと流したい

後席やトランク容量は十分なサイズがあり、実用性は意外と高い。

リヤアクスルステアは最小回転半径が5.2mから5.0mになるので使い勝手を考えると、かっ飛ばすような走りをせずともドライバーズパッケージを選択したい。駐車場で便利な小回り以外にも、高速道路やワインディング走行のような60km/h超の場面で、気の利いた走りができるようになるだろう。なおダイレクトステアリングは、低速時のロック・トゥ・ロックが2回転とクイックだが、パワートレインの素朴さから考えて、俊敏な回頭性よりも前述の駐車場で小回りを効かせるのが目的と考えるのが自然だろう。

もしもクーペというスタイリングから期待されるスポーツ性能を希望するなら、AMG 53を検討した方がいいだろう。あるいはAMG SL(コンバーチブルだが)やAMG GT(2+2だが)といった選択肢もある。CLE 200は週末のワインディングをかっ飛ばすようなスポーツ走行よりも、通勤に使って夜の市街地をゆるっと流すような使い方があっている。

PHOTO/メルセデス・ベンツ日本

SPECIFICATIONS

メルセデス・ベンツCLE 200クーペ スポーツ

ボディサイズ:全長4850 全幅1860 全高1420mm
ホイールベース:2865mm
車両重量:1760kg
エンジン:直列4気筒DOHCターボ
総排気量:1997cc
最高出力:150kW(204PS)/5800rpm
最大トルク:320Nm(32.7kgm)/1600-4000rpm
モーター最高出力:17kW(23PS)/1500-3000rpm
モーター最大トルク:205Nm(20.9kgm)/0-750rpm
トランスミッション:9速AT
駆動方式:RWD
サスペンション形式:前4リンク 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前245/35R20 95Y 後275/30R20 97Y
車両本体価格:850万円

メルセデス・ベンツの現行ラインナップ唯一の4シーター・カブリオレ、「CLE 200 カブリオレ」の日本導入がスタートした。

現行ラインナップ唯一の4座オープン「メルセデス・ベンツ CLE 200 カブリオレ」が日本導入

メルセデス・ベンツ日本は、メルセデス・ベンツブランド唯一の4シーターカブリオレ「CLE 200 カブリオレ スポーツ(ISG搭載モデル)」を発表。全国のメルセデス・ベンツ正規販売店ネットワークを通じて販売を開始した。

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著者プロフィール

吉岡卓朗 近影

吉岡卓朗

ゲンロクWeb編集長。趣味はクルマを用いたラリーやレースなどモータースポーツ活動だったが、現在はもっぱ…