「乗ればすぐに違いがわかる?」V6と直4のロータス エミーラを比較試乗

ロータス最後の内燃エンジンモデル「エミーラ」のV6モデルと直4モデルの違いを比較試乗で解明

ロータス・エミーラV6(左)と直4(右)。
ロータス・エミーラV6(左)と直4(右)。
V6デビューの半年後に発表された「ロータス エミーラ」の2.0リッター4気筒バージョンがついに日本に上陸した。この2台、スペックだけを比較するならば最高出力で40PS、最大トルクは同じ、車重は53kg、価格は88万円違うだけである。さらに内外装はごく細かな部分以外まったく共通ときた。ロータスはなぜエミーラに2種類のモデルを用意したのか? 早速確認へ連れ出した。(GENROQ 2024年10月号より転載・再構成)

Lotus Emira V6 × Lotus Emira inline 4

見分けがつかない2台のエミーラ

まったく見分けがつかない2台の「ロータス エミーラ」だが、ジンクグレーというマットなグレーのほうが2.0リッター直4ターボを搭載するエミーラ。ブロンズがかったニンバスグレーなるボディカラーの方は3.5リッターV6+スーパーチャージャーを積むエミーラV6で、どちらも発売記念のファーストエディション仕様である。新着の4気筒モデルは8速DCT、V6のほうも6速AT仕様で、外観だけでなく内装も基本的に同じ、一年ほど前に初めて乗ったエミーラV6は6速MT車だったので、両車ともに初試乗である。

タイヤサイズやホイールにも違いはないが、近くによってリヤウインドウ越しに覗けば、アルミ製ヘッドカバーに「ロータスV6」と刻まれたV6モデルに対して、素っ気ない樹脂製カバーだけが見える4気筒モデルを判別できる。ご存知のように既にエレトレやエメヤといった高性能EVを発表しEVのプレミアムブランドに生まれ変わることを明らかにしているロータスにとって、このエミーラは最後の内燃エンジンモデルになるといわれている。

メルセデスAMG製エンジンとトヨタ製エンジン

もともとトヨタ由来のV6エンジンに加えて、ICEロータスの掉尾を飾るエミーラのパワーユニットに選ばれたのがメルセデスAMG製のM139型2.0リッター4気筒ターボである。AMG A45S 4マティック+に搭載されているクラス最強の4気筒エンジンを8速DCTの変速機もろともミッドシップしている。AMG A45Sの直4ターボは421PSと500Nmという2.0リッターとしてはとんでもないパワーを誇るが、エミーラの場合はそこまでのハイチューンではなく、最高出力365PS/7200rpm、最大トルク430Nm/3000-5500rpmという数値に留まる。といってもリッター当たりでは180PS以上のロータス史上最強の4気筒であり、0-100km/h加速は4.4秒、最高速275km/hと発表されているから、絶対的なパワーよりも運動性能を重視するロータスにとって不足はないはずだ。なお、4気筒モデルにはMTは用意されない。

一方、元はといえばトヨタ製2GR-FE型をベースとするお馴染みのスーパーチャージャー付き3.5リッターV6は、今や405PS/6800rpmと430Nm(MT車は420Nm)/2700-6700rpmを発生する。こちらは0-100km/h加速4.2秒(6速MT車は4.3秒)、最高速288km/hとさらに強力だ。

1500万円級スポーツカーに相応しい洗練度

無駄を排除した簡潔軽量なスポーツカーこそロータスの真髄、というストイックなオールドファンには信じられないかもしれないが、新世代のエミーラは室内にアルミフレームが剥き出しになっている部分など皆無。ダッシュボードもシートもドアもレザーとアルカンターラのトリムできれいに覆われており、ドアポケットもカップホルダーも、さらにはコンソール中央の始動ボタンには赤いカバーも付いている。発売記念のファーストエディションにはKEFのプレミアムサウンドシステムさえ装備されている。1500万円級スポーツカーに相応しい洗練度である。

上下に押しつぶした変形6角形のステアリングホイールの向こうには12.3インチのフルデジタルディスプレイ、ダッシュ中央には10.25インチのタッチスクリーンが備わり、スイッチ類も機能的にまとめられている。スリムなスポーツシートは12ウェイの電動調整式でランバーサポートもシートヒーターも備わる。

左足ブレーキが似合うペダル配置

直4のシャシーはツアーだったが、明らかにV6より締め上げられた設定。スポーツシャシーはさらにハードコアなセッティングになる!?
直4のシャシーはツアーだったが、明らかにV6より締め上げられた設定。スポーツシャシーはさらにハードコアなセッティングになる!?

一方でアルミのABペダルは小さく、大きなブーツを履いていては隣のペダルに引っかかってしまうほどフットウェルが狭いことは従来通り(なんだかちょっとホッとする)。ブレーキペダルは左足で踏む方が自然な姿勢を取れる。シフトレバーは電子式でシフトパドルだけでなく、レバーを左右に動かすことでもマニュアルシフトできる。パドルでマニュアルモードに入れた場合は一定時間が過ぎるとオートに復帰するが、シフトレバーを左右に動かしてマニュアルを選択すると自動では戻らないという細かい芸も備わる。ガチャコンというちょっと渋い手ごたえのアルミのシフトノブを持つMT車とは対照的だ。これらの装備機能は4気筒モデルもV6も違いはない。

スペックを見比べて想像すると、よりパワフルでGT的なV6モデルに対して4気筒エミーラはトップエンドまで回してアグレッシブに走るスパルタンな仕様かと思いきや、ツアー・モード(他にスポーツ/トラック)で普通に走る限り、ごく扱いやすくしかも予想以上に静かである。深く踏み込めばもちろん一気呵成に吹け上がり、パワーも炸裂するが、刺激的で手に余るというほどではない。それよりもツイスティな山道では鋭い吹け上がりに対して低いギヤがクロスした8速DCTが忙しなく(2速上限は80km/hほど、V6の2速は120km/h)、十分に試すまでにはいかなかった。また加減速を繰り返す渋滞の中では若干シフトショックが大きめであり、低速走行時の滑らかな変速よりもオープンロードでの切れ味を重視したセッティングに感じられた。これはV6モデルも同傾向である。

足まわりが締め上げられて4気筒モデル

一方でスーパーチャージャー付きV6エンジンは、はっきりと分厚く直線的に盛り上がるパワーの出方が何となく懐かしく野性味もある上に扱いやすい。とりわけ低中速域のトルクの逞しさが6速ATのギヤ比にマッチしており、車重(車検証値で1510kg)に対しても十分以上でスムーズに操ることができる。やはり快適なGTとしての性格はV6のほうが明確かもしれない。

2台の車重については実はそれほど大きな違いはない。諸元表ではエミーラが1405kg、エミーラV6が1458kgと表記されているが、車検証値では1470kgと1510kg、ただし前後軸重はそれぞれ570/900kg(4気筒)、560/950kg(V6)とV6の前軸重量がわずかに軽い代わりにリヤが重い。またエミーラにはツーリング・シャシーとスポーツ・シャシーという2種類のシャシーセッティングが用意され、ツーリングの場合はグッドイヤー・イーグルF1が組み合わされるという(スポーツの場合はミシュラン・パイロットスポーツ・カップ2も選べる)。今回は両車ともグッドイヤーを履くツーリング仕様とのことだったが、明らかに4気筒エミーラの方が足まわりが締め上げられており、不整路を越える際のダイレクトなショックが大きいばかりでなく、路面によっては接地性もV6モデルが上回っていた。その分クイックなレスポンスを持つとはいえ、よりしなやかでリニアな挙動のV6との二者択一は悩みどころだ。

ロータス最後のエンジン車だからこそ

V6の半年後に発表されたエミーラの2.0リッター4気筒バージョンがようやく日本に上陸した。この2台、スペックだけを比較するならば最高出力で40PS、最大トルクは同じ、車重は53kg、価格は88万円違うだけである。さらに内外装はごく細かな部分以外まったく共通ときた。ロータスはなぜエミーラに2種類のモデルを用意したのか? 早速確認へ連れ出してみた。

もともとロータスはガチガチのスパルタンな足まわりではなかったけれど、以前に乗ったエミーラV6のMT車もさらに文化的というか、しなやかといってもいい乗り心地を備えていた。電子制御ダンパーの類を持たないが、速度を問わずスムーズにストロークしているようで、突き上げはほとんど感じられないし、うねりがある路面でのスタビリティも問題ない。ピリピリと神経を尖らせず、リラックスしてクルーズできるクルマと考えていたが、新しい4気筒ターボ・エミーラはちょっとだけ昔に戻ったような攻撃的なキャラクターもある。どちらも敏捷であることはいうまでもないが、直接比較すればV6はスパッと手が切れるような反応が返ってくるほどの鋭さではなく、ミッドシップとしては穏当といえるかもしれない。

無論スロットル操作やブレーキングによって微妙にステアリングの手応えが変化するのはこれまでのロータス・ミッドシップと同様、常にビシッと路面を捉えているような、いわば重厚な接地感を伝えるケイマンなどとは目指すところが異なるハンドリングである。荷重移動をしっかり意識して走る人には、操る実感にあふれているロータスのこの繊細なコントロール感がたまらないのだ。

PHOTO/佐藤亮太(Ryota SATO)
MAGAZINE/GENROQ 2024年10月号

SPECIFICATIONS

ボディサイズ:全長4413 全幅1895 全高1226mm
ホイールベース:2575mm
車両重量:1458kg
エンジンタイプ:V型6気筒DOHCスーパーチャージャー
総排気量:3456cc
最高出力:298kW(405PS)/6800rpm
最大トルク:430Nm(43.8kgm)/2700-6700rpm
トランスミッション:6速AT
駆動方式:RWD
サスペンション:前後ダブルウィッシュボーン
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前245/35R20 後295/30R20
最高速度:288km/h
0-100km/h加速:4.2秒
車両本体価格:1573万円

【問い合わせ】
ロータスコール
TEL 0120-371-222
https://www.lotus-cars.jp

エリーゼやエキシージの生産終了から2年近く。待望の最新ロータスがエミーラである。対するはポルシェの誇るエントリーミッドシップモデル718ケイマンの上位グレードGTS4.0だ。

「ロータス エミーラV6」対「ポルシェ718ケイマンGTS4.0」ミッドシップ2シータースポーツカーをガチ比較

ロータス自身、最後の内燃機モデルと宣言している新型エミーラが上陸した。ライトウエイトスポーツの老舗であるロータスの最新モデルの仕上がりはどれほどか? 自然吸気6気筒を搭載する官能的MRモデル、ケイマンGTS4.0と乗り比べた。(GENROQ 2023年8月号より転載・再構成)

キーワードで検索する

著者プロフィール

高平高輝 近影

高平高輝

大学卒業後、二玄社カーグラフィック編集部とナビ編集部に通算4半世紀在籍、自動車業界を広く勉強させてい…