連載

GENROQ アストンマーティンアーカイブ

DB11(2016-2023)

DB9に代わる新世代GT

マレク・ライヒマン率いるデザインチームによって、よりモダンに全面刷新されたエクステリア。
マレク・ライヒマン率いるデザインチームによって、よりモダンに全面刷新されたエクステリア。

2013年に創業100周年を迎えたアストンマーティンは、2014年にCEOに就任したアンディ・パーマーCEOの元で、次なる100年を見据えた中期計画「セカンドセンチュリープラン」を2015年に発表した。これは2021年までの7年間、毎年1台ずつのニューモデルを発表し、販売台数を5倍の1万2000台へと増やすという意欲的なものだった。そのプランに則った最初のモデルとして2016年に「DB9」に代わる新世代GTとして登場したのが「DB11」である。

シャシーはお馴染みのアルミニウム製VHプラットフォームだが、設計が見直された結果、さらなる軽量化と剛性のアップを実現。DB9に比べホイールベースが65mm延長され、前後重量配分が51対49に最適化されたほか、フロントダブルウイッシュボーン、リヤマルチリンクのサスペンションには、アダプティブダンピングシステムを搭載。またパワーステアリングも電動式に変更された。

エンジンは排気量が5.2リッターへとダウンサイジングされたV12DOHCツインターボながら、DB9GTを上回る最高出力608PS、最大トルク700Nmを発生。リヤアクスルにマウントされたZF製の8速ATを介して0-100km加速3.9秒、最高速度322km/hという第一線級のパフォーマンスを誇る。

メルセデスAMGとの技術提携

アストンマーティンの伝統を守りつつ、マレク・ライヒマン率いるデザインチームによって、よりモダンに全面刷新されたボディは、アルミパネルを押出成形した後で加工を施し、プレス成形工程を経てアルマイト処理をするという複雑な作業工程で組み立てられたもので、メルセデスAMGとの技術提携によってもたらされた12インチのTFT LCDディスプレイを備えたコクピットも高級GTに相応しいエレガントなデザインとなった。

そして2017年には4.0リッターV8DOHCツインターボを搭載する「DB11 V8」を追加。これは技術提携を結んでいるメルセデスAMGから供給されたM178型ユニットをベースとしているのだが、オイル潤滑をウエットサンプ式に変更しコンパクト化するとともに、エンジン単体で115kgもの軽量化を達成。さらにECUのマッピングを変更するなど、独自のチューニングが施されており、最高出力510PS、最大トルク675Nmを発生した。

また、ロータスから移籍したマット・ベッカーが開発チームに加わり、リヤサブフレームにブッシュを挟むなど改良を施したことで、ハンドリング、乗り心地が向上したことも特筆に値する。

ヴォランテとAMRの追加

加えてV8には50km/h以下であれば14秒でオープンできる8層構造の電動ソフトトップを備えた「DB11 ヴォランテ」を2018年に追加。車重こそシャシーの補強などでクーペに比べて120kgほど重くなっているが、最高速度、0-100km/h加速ともにクーペと遜色のないパフォーマンスを叩き出すよう、セットアップされているのも特徴である。

さらにこの年から、V12搭載モデルがAMRによって639PSへとチューンされた5.2リッターV12ツインターボを積む「DB11 AMR」が登場。8速ATやサスペンションに専用チューニングが施され、0-100km/h加速が3.7秒とスタンダードのV12に比べて0.2秒向上したほか、グリルなどがブラックアウトされ精悍な姿となったうえ、インテリアもダークトーンのスポーティな装いとなった。

しかしながらAMRは2021年で生産を終了し、V12モデルは再びスタンダードなクーペのみに一本化。2022年モデルでV8の最高出力が7PSアップするなど、小改良が加えられたDB11は2023年の夏頃まで生産が続けられ、後継のDB12にバトンタッチした。

シャシーにはOne-77をベースとした前後にアルミ製サブフレームを装着するカーボンファイバー製モノコックを使用する「ヴァルカン」。

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