「メルセデス AMG CLE 53 クーペ」に試乗

「メルセデスAMG CLE 53 クーペ」に試乗して分かった「いままでのゴーサンじゃない!」

迫力のブリスターフェンダーを纏うメルセデスAMG CLE 53 クーペ。
迫力のブリスターフェンダーを纏うメルセデスAMG CLE 53 クーペ。
EクラスとCクラスのクーペを統合する形で登場したのがCLE。ちなみに先代のAMG版はEクラスクーペが「53」のみ、Cクラスクーペには「63」と「43」があった。そしてCLEのAMG版はいまのところ「53」しかない。果たして今後「63」が登場するのか今のところは不明だが、まずはこの「53」のポテンシャルを確かめてみるとしよう。(GENROQ 2024年11月号より転載・再構成)

Mercedes-AMG CLE 53 4Matic+ Coupe

ターボにスーパーチャージャーさらにモーター

走行モードによる走りの振れ幅が大きいことも特徴。モードは「スリッパリー」「インディビデュアル」「コンフォート」「スポーツ」「スポーツ+」「レース」の6種類と多い。
走行モードによる走りの振れ幅が大きいことも特徴。モードは「スリッパリー」「インディビデュアル」「コンフォート」「スポーツ」「スポーツ+」「レース」の6種類と多い。

正直、ゴーサンだと思ってナメていたのだが、目の前に現れた「CLE 53クーペ」は、縦桟のAMGパナメリカーナグリルだけでは説明がつかないほど、異様な凄味を湛えていた。よく見たら前後フェンダーが強く張り出しているじゃないか。ご存じのようにAMGには「63」「53」「43」というヒエラルキーがあって、これまでトレッドを拡大してオーバーフェンダーまで奢られるのは頂点の63だけだった。それがCLEでは53にまで下りてきたのだ。これには何か深いわけがあるに違いない。

CクラスクーペとEクラスクーペが統合されてCLEクーペになったのはご存じの通り。今回はそのAMG版だ。エンジンは3.0リッター直列6気筒ターボで、低速用の電動スーパーチャージャーやISGのブースト用モーターまで搭載。つまり先代E 53 クーペと同じだが、吸排気系やピストン、ターボなどに改良が加えられた結果、449PS(+14‌PS)/560Nm(+40‌Nm)を発揮。ISGも第2世代へと進化している。

駆動方式はAWDで、走行状況に応じて前後トルク配分を50対50から0対100まで可変させる「AMG 4マティック+」を搭載。トランスミッションは変速スピードが速められたトルコン式の9速AT「AMGスピードシフトTCT」である。

これまでとは別格のスポーツ性

走行モードを「コンフォート」にして走り出すと、CLEらしい優雅なクーペそのものの乗り味だ。そもそもストレート6がスムーズであることに加え、アイドリングストップからの復帰でエンジンが目を覚ます際も、ISGがいい仕事をして振動とはほとんど無縁でいられる。メルセデスに期待する高級感にもしっかり応えてくれるのだ。このあたりは53系AMGの本懐といえるだろう。

ところがだ。「スポーツ」や「スポーツ+」にして走らせると、いままでの53とは別格のスポーツ性が露わになる。特にハンドリングだ。CLEのホイールベースは、実は先代Eクラスクーペとまったく同じ。だから決してコンパクトではないのだが、それがまるで先代C 63クーペのような機敏さでタイトコーナーをグイグイ曲がってゆく。気になってホイールベース/トレッド比を調べてみたら、先代E 53クーペが1.79、先代C 63クーペが1.76、このCLE 53クーペは1.74だった。やはりワイドトレッドが効いている。

重厚なのに俊敏

EクラスとCクラスのクーペを統合する形で登場したのがCLE。ちなみに先代のAMG版はEクラス・クーペが「53」のみ、Cクラス・クーペには「63」と「43」があった。そしてCLEのAMG版はいまのところ「53」しかない。果たして「63」が登場するのかどうかいまのところは不明だが、まずはこの「53」のポテンシャルを確かめてみるとしよう。
ボディサイズは全長4855mm×全幅1935mm×全高1435mm。ホイールベースは2875mmだ。

さらにショートホイールベース効果のあるリヤアクスルステアリングの存在。100km/h以下だとフロントと逆位相に最大2.5度も切れるから、直進時のドッシリした重厚な乗り味や安定感がウソのように鋭くシャープに曲がる。ステアリングを切った瞬間、まるで別のクルマにすり替わるかのようなのだ。車重2tもあるこのクルマが……まったく信じられない。その上で4マティック+は積極的に前輪にトルク配分を行うキャラだから、コーナー脱出時のアクセルオンでさらに旋回力が高まる。そしてこのあたりの所作を、ターンインから一貫して涼し気にやってしまうのがニクいところ。しっとりとした反力を伝えてくる、いまどきウエットなハンドリングも、「スポーティだが上質」というそんなキャラクターに輪をかけている。

エンジンは文句なしにパワフル。モーター、スーパーチャージャー、そしてターボと、ごく低速域から3段階のブーストがかかるから、トルク感は大排気量自然吸気エンジンのフィールそのもの。エキゾーストサウンドも走行モード次第で迫力の重低音やバブリングをかますなど、かなりスポーティだが、遮音がしっかりしているのでどこか遠くに聞こえるような感覚がある。いまどきちょっとアンダーステートメントなのだ。

考えながら書いていてようやく気づいた。このCLE 53クーペは、新技術を用いて先代のE 53クーペとC 63クーペ、それぞれの美点を突き詰める形で開発されたのではないか。53にしてはスポーティだし、63にしては上質。そしてその方針は、意外なケミストリーを生んだようだ。

REPORT/市原直英(Naohide ICHIHARA)
PHOTO/郡 大二郎(Daijiro KORI)
MAGAZINE/GENROQ 2024年11月号

SPECIFICATIONS

メルセデスAMG CLE 53 4マティック・プラス クーペ

ボディサイズ:全長4855 全幅1935 全高1435mm
ホイールベース:2875mm
車両重量:1970kg
エンジン:直列6気筒DOHCターボ+スーパーチャージャー
総排気量: 2996cc
最高出力:330kW(449PS)/5800-6100rpm
最大トルク:560Nm(57.1kgm)/2200-5000rpm
トランスミッション:9速AT
駆動方式:AWD
サスペンション形式:前4リンク 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前265/40R19 後295/35R19
最高速度:250km/h
0-100km/h加速:4.2秒
車両本体価格:1290万円

【問い合わせ】
メルセデス・コール
TEL 0120-190-610
https://www.mercedes-benz.co.jp/

拡幅化された専用ボディを採用した「メルセデス AMG CLE 53 4MATIC+ クーペ」の日本販売がスタートした。

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