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Grimsel Pass
グレッチ駅でフルカ山岳蒸気鉄道に遭遇
前日の大雨がウソのように、澄んだ青空と白い雲が近く感じられるフルカ峠を、屋根を空けたカブリオレで走り出しました。峠を走る時はいつもあえてオーディオをオフにします。BGMは、山肌から風にのってやさしく耳に入るカウベルの音と、直6のエキゾーストノートだけで十分です。
フルカ峠を降りると、実はもうそこがグリムゼル峠の入り口です。いつも私はここで少しクルマを停めて、たったいま降りてきたばかりのフルカ峠を見上げる事にしています。ほんの少し前までそこにいたというのに、遥か遠い時間にその場所にいたかのような感覚になるからフシギです。
降りて来たばかりの九十九折を下から眺め、そして、これから上るグリムゼル峠の九十九折を眺めながら周辺を少しだけお散歩していると、犬の散歩をしていた男性が「もうすぐ汽車がきますよ」と教えてくださいました。そこで、グリムゼル峠へ出発するのを少し待ってみます。
やがてフルカ山岳蒸気鉄道がやってきました。この場所を何度も訪れていますが、グリムゼル峠の入り口の目の前にあるこのグレッチ駅でフルカ山岳蒸気鉄道に遭遇したのは本当に初めての事で大感激しました。大きな煙を吐くフルカ山岳蒸気鉄道は迫力満点! ゆったりと鉄道で上るフルカ峠の旅を、いつか叶えてみたいと思いました。
今回のルート
小さなマーモット園
さて、フルカ峠を降りてきたらそこはもう次の峠の入り口。なんとも便利です。最初こそ九十九折が続きますが、それを過ぎればなだからな道が続き、とても走りやすい道が続きます。そのせいか、何台も自動車を積んだ大型の車両積載車が対向して降りて来た時は驚きでしたが、さすがに九十九折の箇所では非常にゆっくりと走っていました。観光バスや路線バスも走っていますので、決して煽らないようにしなければなりません。フルカ峠にあるローヌ氷河の水源に近いという事もあり、夏場でも非常に涼しく風も結構強いので、上着を持って行った方が良いでしょう。
なだらかな道を進むとグリムゼル峠の頂上2164mを示す看板に到達します。道路を両サイドに挟んでレストランやお土産屋さんがありますが、私がいつもここで目当てにしているのは小さなマーモット園です。入場料は無料で、運が良ければ可愛らしいマーモットに会えるのが嬉しいのです。私と同じようにマーモットを目当てに来ただろうイタリア人夫婦が人参を持参しており、それを餌に夢中で写真撮影しておられたので私も便乗して撮らせて頂きました。スイスの山には野生のマーモットが多く生息しているそうですが、警戒心が強く、そう簡単には遭遇出来ません。ここで飼育されているのを見学できるだけで十分に嬉しいものです。マーモットのお家(小屋)もスイスの山小屋風に作られていて、とても手が込んだかわいらしさですが、ここに隠れてなかなか出てこない事も多いので、人参持参のイタリア人夫妻には感謝です!
フシギな色のグリムゼル湖
グリムゼル峠頂上にある美しく静かな湖は「トーテン湖(ゼー)」といいます。直訳すると「死者の湖」というこの美しい景色に似つかわしくない名が付けられています。約800年前にツェーリンゲン公ベルヒトルト五世の軍兵がヴァリス人によって湖に追い込まれた事に由来し、約200年前にもナポレオン軍がこの湖で命を落としたという悲しい歴史が刻まれているようです。
グリムゼル峠を下り始めると目下にはグリムゼル湖が広がり、フシギな色の湖水に吸い込まれそうになってしまいます。道路脇にはいくつかの広めの停車スペースがあり、ゆっくりと景色を堪能しながら写真を撮る事が出来ます。お天気が良い日は素晴らしい絶景ですので、是非停まって休憩される事をおススメします。
私もこの非常によいお天気の中で何枚も写真を撮ってしまった事は言うまでもありません。また、数多くの方がこの駐車スペースへクルマを停めてピクニックやハイキングをされていました。トーテン湖から流れ出る河川を経てグリムゼル湖で水力発電として地域の電力が賄われているそうなのですが、ダムの橋のたもとに停めて歩いて渡れるのですが、私は今回うっかりして通り過ぎてしまいまったのが残念です。
いよいよサステンパス方面へ
グリムゼル峠を降りてくると、牛たちののどかな風景を見ながらグッタンネンという可愛らしい小さな集落を通ってサステンパス方面へ向かいますが、車窓から見えるその風景はあまりにもステキでしたので、少しクルマを停めてお散歩をしてみました。伝統的なスイスの田舎の木造の家が並び、穏やかな時が流れています。
峠ごとに見える景色が全く違うのもアルプスを越える峠ドライブの楽しみのひとつでしょう。さて、次回はサステンパス。フルカ→グリムゼルから続く、3つ目の峠の中では一番の私のお気に入りのルートです。