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V12 SPEEDSTER(2020)
ボーイング社とのコラボレーション
2008年の「One-77」の成功を受け、フューオフのスペシャライズド・モデルを定期的にプロデュースするようになったアストンマーティンが、2020年に発表したのが「V12 スピードスター」だ。
当初はジュネーブ・ショーでアストンマーティンの新たなオーナーとなったローレンス・ストロールとともにお披露目される予定だったが、COVID-19の流行によりジュネーブ・ショーの中止が急遽決まったことを受け、ローレンスと当時のCEOであったアンディ・パーマーとともにオンラインで「V12 スピードスター・コンセプト」として発表された。
その最大の特徴は、航空機メーカーのボーイング社とのコラボレーションによって開発されたことで、2003年の「DBAR1ロードスター」と2013年の「CC-100コンセプト」をモチーフとしつつも、フロントのディフレクターなど最新のエアロダイナミクスを駆使することで、フロントウインドウ、ルーフのないバルケッタボディながら、乗員の上部に気流が流れ直接当たらないようデザイン。あわせて専用のヘルメットも2つ用意されており、シート後部のフェアリング内部に収納できるようになっていた。
ヴァンテージの基本骨格を使用
またボディ各部のディテールや、コンセプトに施されたスカイフォールシルバーのエクステリア・カラー、サテンブラック仕上げされたエキゾースト先端、ベーングリルの塗装などは、ボーイング社の戦闘機F/A-18ホーネットを意識したものとアナウンスされている。
その後2021年にアストン・グリーンに塗られたプロトタイプを製作。市販型は76万5000ポンドというプライスタグをつけて、2022年からのアストンマーティンのパーソナライズサービスである“Q by Aston Martin”によって88台限定で製造された。
その基本的にヴァンテージの基本骨格を使用しているが、前後ダブルウイッシュボーンのサスペンション、ベンチレーテッド・ディスクブレーキ、そして最高出力710PS、最大トルク753Nmと若干ながらデチューンされた5.2リッターV12DOHCツインターボは、「DBSスーパーレッジェーラ」から流用したものだ。
一方、カーボンファイバー製のバルケッタボディ、センターロック式の21インチ鍛造アルミホイール、そして左右独立式となったインテリアデザインなどはV12スピードスター専用となっている。
あくまでストリートユースが前提
それ以外の詳細な情報については明らかになっていないが、その見た目とは裏腹にシャシーセッティング、パフォーマンスに関してはヴァルカンのようなサーキット専用車といったスパルタンなものではなく、あくまでストリートユースを前提としたものに仕上げられていた。
あえてDBSスーパーレッジェーラよりも出力が低く抑えられていたエンジンも、安全性を考慮してのことと言われ、その最高速度も300km/h、0-100km/h加速は3.5秒と、DBSよりも低いものとなっていた。
また2022年のモントレー・カーウィークでは、V12スピードスターをベースとして、「DBR1」を彷彿とさせるモダン・クラシカルなボディを架装。さらに5.2リッターV12ツインターボを715PSへとチューンしたことで最高速度319km/h、0-100km/h加速3.4秒を誇る「DBR22」を発表し、10台限定で販売している。
そしてこのV12スピードスター、DBR22で培われたヴァンテージ・ベースのシャシーにV12ツインターボを組み合わせるという経験は、2022年に市販されたV12ヴァンテージ・クーペ、V12ヴァンテージ・ロードスターに生かされることとなったのである。