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1986 Buick Riviera “Graphic Control Center”
7代目リヴィエラに搭載された「GCC」

GMは100年以上にわたって、多種多様な乗用車、トラック、SUV、バン、ステーションワゴン、そしてバスまでも生産してきた。『レトロ・ライド』では、GMの過去の偉大なデザイン、エンジニアリング、テクノロジーのアイデアにスポットライトを当てる。
ビュイック・ディビジョンから、7代目モデルとしてデビューした1986年型リヴィエラは、コンソール中央にタッチスクリーン式「グラフィックコントロールセンター(Graphic Control Center:GCC)」という、時代を先取りした機能を備えていた。9インチモニターを備えたGCCは、ブラックの画面に緑色のテキストと小さなバーチャルボタンとスライダーを表示。その画面はSF映画か、NASAのワークステーションからインスパイアされたかのようだった。
GCCはラジオ(グラフィックイコライザーを含む)と空調システムコントロール、トリップコンピューター、タコメーター、ブレーキ、パワートレイン診断、カレンダー、メンテナンスのリマインダーなどが備えられていた。また、メカニックが車両のトラブルを診断できる「セミシークレットサービスモード」も備えられている。
1980年代には早すぎた「GCC」

残念なことに、GCCは人気装備とはならず、短命に終わる。1988年型「ビュイック レアッタ」の「エレクトロニック・コントロール・センター(Electronic Control Center)」、1989年型「オールズモビル トロネード トロフェオ」には、カラースクリーン化された「ビジュアル・インフォメーション・センター(Visual Information Center)」が導入されたものの、GMのタッチスクリーンへのトライはデビューから数年で幕を閉じてしまう。
その煩雑さと画面内のボタンの小ささにより、初期のタッチスクリーンは一般ユーザーを混乱させ、運転中の操作を困難にした。当時の雑誌のレビュアーは、リヴィエラのGCCを 「セブンイレブンへの買い物を、宇宙旅行に変えるもの 」だと指摘している。
しかし、これは1986年のこと。初代ニンテンドー(NES:ファミリーコンピュータ)が、米国で発売されたのは1985年。当時、アメリカの家庭でパソコンを持っていたのは10%にも満たなかった。GCCは時代を何十年も先取りしていたのだ。タッチスクリーンがデバイスに広く採用されたのは、アップルが2007年にiPhoneを発売してから。アップルは2010年にiPadを発表、最新のLCDタッチスクリーンが自動車に広く採用されたのは2010年代初頭のことである。GCCは25年も早かった。
1986年型リヴィエラは、高名なネームプレートの物語における、ちょっとした脚注に過ぎなかった。地中海沿岸の伝説的なリゾート地、フレンチリヴィエラにちなんで名付けられたパーソナルカーがデビューしたのは1949年。ビュイック ロードマスターのハードトップバージョンとしてだった。
1999年、リヴィエラはその長い歴史に幕を下ろす。1986年型リヴィエラはタッチスクリーンとコンピュータ化された現代の自動車の未来を、誰よりも早く指し示したのである。