ロールス・ロイスのセールスが対前年比49%アップした立役者はゴーストとカリナン

ロールス・ロイスが史上最高の売り上げを達成! 5586台を販売し117年の歴史を塗り替え

ロールス・ロイス スペクターのプロトタイプ。フロントビュー
ロールス・ロイスは2021年に同社史上最高のセールスを記録。販売面の好成績に加え、初のBEV「スペクター」(写真)の投入も告知するなど、意欲的な姿勢を打ち出している。
ロールス・ロイスは2021年に史上最高のセールスを記録した。世界累計5586台の販売を達成し、対前年比で49%増という好成長ぶりを発揮。堅調な成績を牽引したのは新型ゴーストとカリナンだという。

新型ゴーストにもブラック・バッジシリーズが登場

ロールス・ロイス 新型ゴーストのブラックバッジ仕様。フロントビュー
ロールス・ロイスが2021年10月に投入した新型ゴーストのブラック・バッジ仕様。パンテオングリルやスピリット・オブ・エクスタシーまでがブラック仕上げとなるダークな雰囲気は若い世代を中心に高い注目を集め、いまやロールス・ロイス全体で受注の27%を占める人気のシリーズとなっている。

ロールス・ロイスは、2021年の年間販売台数が同社史上最高を記録したと発表。全世界に向けて売り上げた累計台数は5586台にのぼり、対前年比で49%増となった。117年の歴史上、最高の成績を達成したロールス・ロイス。その快進撃をとくに牽引したのが、新型ゴーストとカリナンだ。

2020年9月にフルモデルチェンジした2代目「ゴースト」は、2021年10月に注目の“ブラック・バッジ”仕様を追加。ロールス・ロイス全体の受注で27%を占める人気シリーズを加えることで、好調なセールスを一層加速した恰好となった。

ロールス・ロイス ブラック・バッジ ゴーストの国内発表会イメージ

非公開: 新型ゴーストのブラック・バッジ国内デビュー! ロールス・ロイス販売好調の鍵を握る「ダークな仕様」とは

ロールス・ロイス・モーター・カーズは、2021年11月17日に「ブラック・バッジ ゴースト」を日本国内で発表した。同社最新のサルーンに、ダークな意匠と強化したパワートレインを採用。同日より受注をスタートし、2022年第1四半期よりデリバリーを開始する。価格は4349万円から。

ロールス・ロイスを“特注”できるコーチビルド部門を新設

ロールス・ロイス ボート・テイルのリヤビュー
ロールス・ロイス モーター カーズは2021年5月27日、伝統の「コーチビルド」制度を現代に蘇らせ、新たなビジネスの柱に据えると発表。その一例として、4年を費やして製作したボート・テイル(写真)の姿を公開した。

顧客の細やかな要望に応えるビスポークプログラムの充実ぶりも、成功の要因となっている。例えば衣料品通販サイト運営会社ZOZOの創業者、前澤友作氏がオーダーしたファントムはエルメスとコラボレーションして織部焼きをイメージした1台とするなど、自由な発想に応える体制を整えているのが特徴だ。そこに加えて、ロールス・ロイスは2021年5月27日に伝統の「コーチビルド」制度を現代に蘇らせ、新たなビジネスの柱に据えると発表。グッドウッド本社にコーチビルド部門を設置し、時間やコストを度外視した、究極の工業製品としてのロールス・ロイスを送り出していくことを明言した。

ロールス・ロイスを買う顧客のほとんどはビスポークを望むといい、2021年第1四半期にグッドウッドで生産されたロールス・ロイスにいたっては、すべての車両がビスポーク仕様であったという。今回導入したコーチビルド制度はそのビスポークの世界をさらにもう一歩押し進めたプログラムで、ロールス・ロイスそのものをほとんどイチから作り上げてしまうほどの内容。まさしく、デザイナーが顧客のために完全オリジナルの衣装をデザインする“オートクチュール”に近い。

原寸大のクレイモデルを元にボディを手仕上げ

ロールス・ロイス ボート・テイルの制作風景
ロールス・ロイス ボート・テイルは現行ファントムから導入したオールアルミニウム製スペースフレーム構造がベース。とはいえ、原寸大のクレイモデルから手仕上げのアルミボディまで、ほぼワンオフモデルとしてイチから再構築されている。

「コーチビルドには、一般の制約を超えた自由があります。通常、ロールス・ロイスのビスポークには、キャンバスとしての当然の限界点(自然の天井)があります。しかし、ロールス・ロイス コーチビルドではその限界を打ち破り、コーチビルドならではの自由な表現力を活かし、パトロンであるお客様と一緒になってコンセプトを直接形にします」とコーチビルドデザイン責任者、アレックス・イネスが語る通り、“コーチビルド”は“ビスポーク”以上に幅広いクリエーションを可能にする。

例えば現行ファントムから導入したオールアルミニウム製スペースフレーム構造をベースにしつつも、原寸大のクレイモデルから手仕上げのアルミボディまでを作り上げるなど、ほぼワンオフモデルとしてイチから再構築するという代物だ。ロールス・ロイスは新たな事業の柱としてこのコーチビルド制度を打ち立てている。

同社初のBEV「スペクター」の投入を予告

ロールス・ロイス スペクターのプロトタイプ。フロントセクション
ロールス・ロイスが2023年の投入を予定しているBEVのスペクター(写真)。同社は2011年に公開したEV版ファントムの実験車「102EX」や、2016年のEVコンセプト「103EX」など、これまでにも電動パワートレインの可能性を積極的に模索してきた。

加えて、自動車業界全体が電気自動車へ舵を切る潮流を見据えてBEVのプロトタイプ「スペクター」を公開。2023年第4四半期の発売を予定しているロールス・ロイス初の量産電気自動車である。電気自動車であったとしても世界中で待つ目利きの顧客層を満足させるものでなくてはならないとして、確実なクオリティを確保するべく史上最も厳しいテストプログラムを構築すると明言。世界各地で行うテストで想定している総走行距離は250万km。ロールス・ロイスの平均使用距離に鑑みると、じつに400年以上分の走行距離に相当するテストを実施して、世界に冠たる品質の高級EVを送り出す、と謳っている。

好調な販売を受けてグッドウッドの本社工場は2直体制を敷き、生産能力をほぼフルに活用している状態だという。また、電動化を見据えてさらなる工場の拡張を図っており、2022年9月にはこれまでで最多となる37名のアプレンティス(見習い制度で任用されたスタッフ)を登用する予定となっている。

コーチビルディングの可能性とフル電動化の未来へ向けて前進

ロールス・ロイスのトルステン・ミュラー-エトヴェシュCEO
ロールス・ロイスのトルステン・ミュラー-エトヴェシュCEOは、2021年は「ロールス・ロイスにとって歴史的な1年だった」と振り返る。

2021年の成果を受けて、トルステン・ミュラー-エトヴェシュCEOは次のように語っている。

「(2021年は)ロールス・ロイス モーター カーズにとって歴史的な1年となりました。この12ヵ月で、我々はこれまでで最高の年間セールスを記録し、ブラック・バッジファミリーの最新モデルを投入したうえ、コーチビルディングの可能性も披露し、さらにフル電動化の未来に向けて大きな一歩を踏み出しました」

「それはいつものごとく、ロールス・ロイスのホームにいる非凡なる人々、国境を越えたチームの面々、そして世界中のディーラーネットワークの皆さまの献身的な取り組みがあってこそ実現したものです。私の心からの感謝とお祝いの気持ちを、ひとりひとりの方へお伝えできたらと思います。彼らとこうして日々一緒に仕事ができることは、私の特権であり、喜びなのです」

ロールス・ロイス初の市販EV、スペクターの擬装車両。正面ビュー

非公開: ロールス・ロイス初の市販フルEV発表! その名は幽霊を意味する「スペクター」

ロールス・ロイスがついにピュアEVの導入に踏み切った。2023年に発売を予定している新型車の名前は「Spectre(スペクター)」。しかも、2030年までにブランドすべてのモデルを100%電気自動車にすると宣言した。各自動車メーカーが電動化戦略へと舵を切るなか、満を持しての名門の参戦。高級車を象徴するロールス・ロイスが作るEVはどんなものになるのだろうか。

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著者プロフィール

三代やよい 近影

三代やよい

東京生まれ。青山学院女子短期大学英米文学科卒業後、自動車メーカー広報部勤務。編集プロダクション…